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「灯台へ」ヴァージニア・ウルフを読み始めて
「灯台へ」 (To THE LIGHTHOUSE) ヴァージニア・ウルフ
第一部「窓」、第二部「時はゆく」、第三部「灯台」から成る小説。六歳の息子ジェイムスが「灯台へ」ピクニックに行くことを楽しみにしている会話から始まる。この「灯台へ」というのが小説の題名でもあり、キーワードとなる。話の始まりは、母であるラムジー夫人が感じるジェイムスへの愛情や将来への期待が細かく書かれている一方で夫のラムジー氏が「明日は晴れないだろう」(灯台へは行けないだろう)と空気を切る。
このラムジー氏は気難しい態度を子供たち(八人)にとることもあるが、自分自身が「わしは負け犬だ」と言い続けて夫人に慰めてもらうという子供のような性格でもある。
ラムジー夫人の語りのような文章でつづられていく。彼女が50代の主婦で家族への様々な想いに共感できる部分が多くあり、かつヴァージニア・ウルフの文章と翻訳者の文章が綺麗で、先へなかなか進まない。英文と和文を行ったり来たりしながら、時にはあとがきをみて文学的な考察も確認しながら、これから色々なことがありそうなストーリーに夢中。
神経衰弱の面をもつヴァージニア・ウルフの研究を精神医学の視点から分析した本が出版されているが、文学研究のみ書かれた本を探していて「別の地図 英文学的小旅行のために」高橋和久著にたどり着いた。素晴らしい本で、多くのことが勉強できるが、自分がこの本に出てくる英文学をほとんど読んでいない事に驚き、一つ一つ作品を読もうと思った。英米文学の学士を取得したが、ほぼアメリカ文学の単位で卒業してしまった。反省しつつ、今後の楽しみが出来た。作品を読んでからまた高橋先生の本に戻ろう。
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