読書『アーモンド』:人間の本質は光だ!
自分では絶対に選ばないであろう一冊を読みました。
期待通り、とてもよかったです。
自分ではチョイスできないのに、期待していたのはこの記事の通りです。
ソン・ウォンピョン『アーモンド』
もともと外国小説はそれほど読まないのですが、韓国の作家さんは初めてです。
作者について
なんと、『アーモンド』がはじめての長編小説だったとは。
才能ですね。
作品について
ネタバレになるので内容にはふれませんが、失感情症(アレキサイミヤ)という病気についてはじめて知りました。
扁桃体が小さく、感情を感じにくい少年とそれを取り巻く人々の物語です。
母親や祖母の愛や同級生との友情をとおして、その少年がどのように成長するかという面と、反対に、その少年が周りの人々にどのような変化をもたらすかというダブルA面のような小説でした。
作者は映画監督やシナリオ作家もされているように、本を読んでいるのに映画を観ているかのような感覚になりました。
読むだけで、スピード感や、光と影、登場人物の表情が目の前に広がるようです。
巻末の作者あとがきが印象的です。
読み終えて、感動とも少し違うような心が揺れるのを感じました。
小説としての完成度が高く、さすが本屋大賞翻訳小説部門第一位でした。
ちょっと違う観点で
コーチングにどっぷりつかっている日々を過ごしているからか、わたしにはそれぞれの人物からはどう見えているのだろうかというところが気になりました。
学校の同級生から見える、主人公の少年。
少年から見える、母親や大人。
少年の友だちから見える、少年や同級生。
コーチングでは、コーチは感情と事実を切り離してクライアントの行動や思考の核となるものを知ろうとします。
感情はさまざまなバイアスを生みます。
それぞれの方向から見える景色は、まるで違います。
その中で、少年の景色は病気のために無味乾燥のように見えて、実はとてもカラフルに描かれていました。
わたしは、失感情症という個性は、コーチになれる天性の資質だと思えました。
少年には、バイアスがまったくありません。
なので、人の本質を見抜くことができたのだと思います。
そして、大好きなマンガ『キングダム』で嬴政が言った「人間の本質は光だ」を思い出しました。
性善説です。
どんな人間にも、奥底まで見ていくと必ず良いところが見つかります。
それがすぐに見つからないのは、さまざまなバイアスがかかっているからです。
そんなバイアスの存在に気づかされる濃密な一冊でした。
オススメです。