肉食の哲学 読書レビュー〜日刊弁慶2020.8.9
一昨日くらいに、すげー性格悪いやつ読んでて、読み終わったら感想文書く、ということを予告しました。これです。
早速訂正しなければなりませんが、全く性格の悪い書ではありませんでした。なぜこの本が性格悪いと思ったかというと、この本がベジタリアンを徹底的に批判してるからです。ベジタリアンってある種の慈善団体みたいな趣がありませんか?その理念が根本から間違っていると言うのは意地悪ですよね。第一、ベジタリアンが僕らにどんな悪いことをしたというのか。誰かが野菜しか口にしないところで、その他の人にはなんの実害もありません。わざわざ批判するまでもないんじゃないでしょうか?
しかし、著者の出身地であるフランスで、一部のビーガンが暴徒化した事件があったそうです。それが引き金となってこの書がしたためられたわけです。
筆者はベジタリアンを二種類に分類します。倫理的ベジタリアンと政治的ベジタリアン。前者は、人間が肉を食べるのは倫理的に間違っている、全ての人が肉食をやめるべきだ、という立場です。他方後者は、たとえば過剰な肉食によって地球温暖化が加速しているとか、肥満者が増えているといった、実際の問題を取り上げて肉食を拒否する立場です。
筆者が批判するのは倫理的ベジタリアンです。倫理的ベジタリアンは人間の動物性を否定します。人間は他の動物とは異なる崇高な生物なのだから、肉を代謝すべきでない。そのような思想が根底に流れていると筆者は主張します。
その一方で筆者は、政治的ベジタリアンを評価します。人間は動物の一種であり、肉に感謝して食すべきだというのが筆者の大まかな主張です。政治的ベジタリアンは肉に対するリスペクトを欠いておらず、むしろ動物の動物性を保護する可能性を持っています。その点で、「倫理的肉食者」の筆者と非常に近い価値観を持っていると言えるのです。
倫理的ベジタリアンが、その根底では動物を嫌悪・卑下しているという考察は興味深いです。
本書でも言っていたかもしれませんが、肉食無しに人間は今日まで存続できなかったでしょうから、肉食の否定は人間の存在の否定になりそうです。さらには、動物としての人間の否定であり、それは人間そのものの否定とほぼ同じではないでしょうか。
読書レビューってどの程度、内容に触れていいか分からないですね。難しい。