一 病 息 災
【読書】一病息災・内田百閒/中央公論新社
とても愉快に読書ができた。
さすが百閒先生と思う。
17編の作品が収録されている。
どれも健康や病気などについてご自身の経験を書かれたものだが、時に「あらあら...」「あらまぁ」と呆れもするが、なぜかそれが憎めずに最終的には「ふふふっ…」と笑ってしまうものばかりだった。
その中でも『養生訓』は、苦笑いしながらも楽しい作品だった。
持病の治療のために医者からお酒を禁じられているのにも関わらず、お酒がやめられず、何か言い訳を考えては飲んでいる。
「医者からもらった薬はずっと続けて飲んでいるのだから…」と自分を許していらっしゃる。
お正月に、三日にあげず松がとれるまで挨拶に来る客と共に酒宴を繰り広げてしまい、多少反省はするが「薬はちゃんと飲んでるし...」となる。
正月あけに息子に薬をもらいに病院に行かせると、なかなか診察に来ないから「往診に行く」と医師に言われてあたふたとなる。
それからどういう言い訳を言うか考えるのだが…それがまた開き直りかと思えるようなことを考えつく。まったく懲りない人なのである。
私もお酒を飲む。
普通の人よりよく飲むタイプだと思う。
そして私も逆流性食道炎という持病を持っているために、担当医からは「お酒だめですよ」と言われている。
しかしながら飲んでいる。
最近の薬はよく効くのだ。薬を飲んでいると、症状はまったく出ない。それをいいことに飲んでいる。
診察の時は、正直に「飲んでます」と白状するが量は実際の半分くらいしか申告していない。本当に困った患者である。
でも、何かあったときに担当医の責任にしようとは思わない。そこのところはちゃんと覚悟している。
百閒先生の味わい深い言い訳を読んでいると「酒好きって奴はまったく…」と思うのだが、規則正しい患者にはなかなかなれないのであると自覚する。
百閒先生は、喘息や心臓神経症を患いながらも82歳の時に老衰で亡くなられている。
大往生ではないか。お酒が原因で亡くなられたわけではない。
失礼ながらブラボーである。
百閒先生の考えが正しいかどうか、現代に通用するかどうかはわからないが、とても粋に生きてらした酒好き先生が大好きだわ。