勝利は戦う者にのみ与えられる!
以前、戦争もののゲームをしていることもあり、また、ウ○ライナ情勢も不透明な点が多くあり、ちょっと気になったので、戦争ものの本を物色して読んでみました。
【関連記事①】
【心に残ったゲーム】メタルギアオンライン(Metal Gear Online、MGO)
https://note.com/bax36410/n/n66051377044a
紹介するのは、ゴードン スティーヴンズ (著)「カーラのゲーム」〈上〉〈下〉 (創元ノヴェルズ)です。
1994年ボスニア。
夫の帰りを待ちわびていたカーラは、偶然、負傷した英国特殊部隊員を助けたことから、彼女の運命は一変します。
途方に暮れていたカーラと、フィンとの対話の数々は印象的です。
みなさんも小説を読んでいると、その中のある一節にページをめくる手が止まってしまうことがあったと思います。
例えば、以下のような文章がそうでした。
「問題とすべきは批評家ではない。
問題とすべきなのは、力ある者の挫折の原因をしたり顔で語るものでも、行動を起こした者の不手際をあげつらう輩でもない。
名誉は戦いに臨む者にのみ与えられる。
すなわち、困難な戦いを雄々しく戦う者、崇高な理想のために一身を擲つ者。
もし勝利を得たなら、彼らは大いなる達成の喜びを知るだろう。
かりに敗北を喫したとしても、それは敢然と戦ったすえの敗北だ。」
物語の前半で、カーラは最愛の息子と夫を失います。
そこまででも、この物語は戦争・内戦の悲惨さを伝える物語として十分に成立しています。
感動的であり、ここで物語が終わってしまっても良いと思うくらいです。
しかし、この物語は、そこから息をもつかせぬ展開を見せます。
戦地で出会ったSAS隊員のフィンの言葉"敢然と戦う者が勝つ"の言葉を実践に移すのです。
ルフトハンザ航空3216便のハイジャックというかたちで・・・・・・
後半のジェットコースターのようなストーリー展開、少々ご都合主義的に感じられるハッピー・エンドには正直ひいてしまう部分はありますが、そうしたことが逆に現実における問題解決の難しさを象徴しているように思いました。
本書は、主にカーラとフィンの視点から語られつつも、場面場面で視点が激しく切り替わるという独特の手法がとられています。
そうした手法によって、戸惑いを感じる部分もありあますが、端役のキャラクターに奥深さが与えられるとともに、物語全体が重層的に仕上がっていると思います。
『戦争』という深刻かつ重大なテーマだけでなくこうした『手法』や、高品質サスペンス物としてのストーリーの流れを楽しむのも一興だと思います。
確かに、戦争は悲惨・陰惨なものであり、人間が行う最も異常な集団行動だと思います。
しかし、その中にあって相手を出し抜き、駆け引きを行う役割がいます。
そうした人間にとっては、戦争はまぎれもなくゲームなのです。
あえてテロリストの汚名を着、カーラも世界を相手にゲームを挑んだわけです。
戦争にはこうしたゲームの側面があることは事実です。
実際、コンピュータ・ゲームのような最近のものを例に挙げるまでもなく、チェスや将棋、碁(これは領土の奪い合いです。)といった古くからのゲームも戦争のかたちをとっています。
そうしたゲーム性のみならず、戦争には魅力的に感じてしまう部分があるから、戦争に関するゲームも多いんでしょうね^^;
そうそう、映画『地獄の黙示録』のコッポラ監督が次のようなことを述べていました。
地獄の黙示録 ~ワルキューレの騎行~
https://www.youtube.com/watch?v=FM9k6n4DjIs
「戦争には、非常に感覚的で、魅惑的で美しいものがある。
そうした戦争の美しいシーン、快感をおぼえるものを観客にみせなければウソになってしまう。」(平凡パンチ誌でのコッポラ監督と五木寛之との対談より。)
それに、最近の戦争は『ボタン戦争』などといわれるように、戦争の方がゲームに近付いているようです。
そうした科学の進歩が、戦争のゲーム性を際立たせると同時に、その反面として現実の悲惨さ・残酷さをごまかすことにつながっているのかもしれませんね。
でも、その高揚感とか志等は、実際の戦争における最前線の凄惨な現実を前に打ち砕かれることになると思います。
やはり、ゲームはゲームなんだと、境界をはっきり区別できる感性が必要だと感じます。
それを感じるために、例えば、マルクの「西部戦線異状なし」を読んで、想像してみるのも良いかもしれません。
「西部戦線異状なし」(新潮文庫)レマルク(著)秦豊吉(訳)
兵士としての経験も無い人間を、たったの数カ月で訓練して、戦場に放り込むということの意味を考えてみてください。
その際、以下の本が参考になると思います。
「補給戦―何が勝敗を決定するのか」(中公文庫BIBLIO)マーチン・ファン クレフェルト(著)佐藤佐三郎(訳)
プロは兵站を語り、アマチュアは戦略を語るとはよく言われることですが、戦争を兵站という面から分析し、その上で補給戦の実態や戦史の中での補給の位置づけなどを論じている。
そう、兵士も、まるで補充される弾薬などの備品と同じ^^;
でも、これこそ戦争の不条理であり、戦争の本質なんですよね。
ただ消耗し、疲弊し、虐殺されていくだけであり、そんな戦争の残酷さを徹底的に突きつける凄まじい映画である『西部戦線異状なし』とか、
https://www.netflix.com/jp/title/81260280
ドキュメンタリー映画『彼らは生きていた』などが参考になるんじゃないかと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=gelre9axeJ4
【参考記事①】
兵站とは戦争のインフラである『補給戦』
https://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2013/05/post-8bf7.html
ドイツ映画『西部戦線異状なし』感想(ネタバレ)…Netflix;映画も戦争も何度も繰り返される
https://cinemandrake.com/im-westen-nichts-neues
『彼らは生きていた(ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド)』感想(ネタバレ)…第一次世界大戦は何色か?
https://cinemandrake.com/they-shall-not-grow-old
結局は、想像力の問題なんでしょうが、お堅い話は、このくらいにして、ゲームが脳にとって有効だって話もあるんですよ!
参考までに紹介しておくと、スティーブン・ジョンソン (著)「ダメなものは、タメになる―テレビやゲームは頭を良くしている」です。
「ダメなものは、タメになる―テレビやゲームは頭を良くしている」ジョンソン,スティーブン(著)山形浩生/守岡桜(訳)乙部一郎(監修)
【参考記事】
Steven Johnson, Everything Bad is Good for You
https://cruel.org/reading/badisgood.html
テレビゲームを多面的に捉えなおすきっかけとして
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jstage.jst.go.jp/article/digraj/1/1/1_86/_pdf
スタンフォード大教授の言う「現代の男性は以前と比較して”劣化”している」は本当か。データと統計の罠について。
https://blog.tinect.jp/?p=61980
テレビやゲームばかりやってると頭が悪くなる???
通俗的な見解を科学的に払拭したアンチ「ゲーム脳」なる本です。
昨今のテレビやゲームは、ストーリーや構造が複雑になり、実は、読書よりも高度な知的活動が要求されると思いませんか?
本書では、テレビやゲーム、さらにネットなど、どんどん複雑化している日常のエンターテインメントに触れていく中で、ポピュラー文化の深まりとともに、われわれが複雑な知的処理能力を高めつつあり、ゲームをしているとバカになるどころか、逆に、人々は「賢くなっている」いることをデータの裏づけで示し、そのことを鋭く指摘しています。
確かに、昔、MGOで遊んでいた時、ルールやMAPに応じた戦術や相手の行動の読みあいなどなど、戦略性に富んだ遊びが出来るので、IQスコアや認知力を上げることに役立っていたのかもしれませんね(^^)
【関連記事②】
【改訂版】勝負曲を教えて!
https://note.com/bax36410/n/n4f7cf30fdede
【改訂版】ゲームにおいて、武器と防具どちらを先に買いますか?
https://note.com/bax36410/n/n929538fbd938
【改訂版】わたし流暮らしのコツ(Vol.1)
https://note.com/bax36410/n/n1dd0cb1ead0c
【全力で推したいゲーム】ファイナルファンタジーXIVにおける個人的戦闘スタイルの考察とその結果について
https://note.com/bax36410/n/n5ececd5eb3a3
ファイナルファンタジーXIV(FF14)『暁月のフィナーレ』でもっとも印象深い楽曲「Flow」
https://note.com/bax36410/n/na92373ff57ab
【心に残ったゲーム】メタルギアオンライン(Metal Gear Online、MGO)
https://note.com/bax36410/n/n66051377044a
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?