紙の本を買って最初にすることは?
みなさんは、紙の本を買って最初にすることを意識したことがありますか?
私は、特に、決めている訳ではありませんが、紙の本を買って最初にすることは、本を開くことかな?
買った本を、まず開くというのは、当たり前のように聞こえますが、大切なのは、本の開き方だということを、以下の本を書かれた藤森さんから教わりました(^^;
【参考図書】
「本をつくる者の心―造本40年」藤森善貢(著)
岩波書店の初期から長く勤め、『広辞苑』や『日本古典文学大系』等の出版にも携わった藤森善貢さんの遺稿集です。
昭和61年の刊行の古書ですが、本をつくる者として大先輩の書であり、「本をつくる皆さんが、本を買ってくれる読者のことを、十分考えてつくっていますか」という問いかけは、今なお重いと感じます(^^;
戦前の思想統制の緊迫感、戦後の出版界の活況と造本の試行錯誤、そして岩波書店関係者を中心に本をつくることに関わってきた方々の来し方等々。
本の構造の研究に生涯をかけ、よりよい本を読者に届けることに腐心した藤森さんの熱い思いがページをめくるたびに伝わってくる非常に興味深い事が書かれています。
例えば、本には正しい開き方があって、最初に正しい開き方をすることで、物理的な本の耐久性に大きく違いが生じるそうです。
【参考資料】に、岩波書店で40年本作りに携わった藤森さんが説く本の正しい扱い方について記載しておきますので、良ければ参考にしてみてください。
【参考記事】
今からでも気をつけたい、本の取り扱いに関する5つの注意事項
https://www.lifehacker.jp/article/110308_books/
意外とやりがち!? やってはいけない間違った本の扱い方
http://pro.bookoffonline.co.jp/book-enjoy/use-book/20160210handling-books.html
様々な研究結果から紙の書籍の良さを検証する
https://www.gentosha-book.com/bookshelf/verification-paper/
脳は紙の本でこそ鍛えられる。言語脳科学で明らかになった読書の知られざる効能(酒井邦嘉)
https://www.chichi.co.jp/web/20180810chichi_contents2/
【参考資料】
岩波書店で40年本作りに携わった人が説く“本の正しい扱い方”
http://www.1book.co.jp/002670.html
1.本の開き方
新しい本を開く場合に、よくいきなり強く開く人があるがそれはダメです。
開かない本でも、開く本でも、このような本の開き方をしますと、本の背貼りが完全にやられてしまう。
かがり糸がゆるんで、折り丁がずり出てこわれてしまう。
そこで、最初に本を開く場合には、机の上かやわらかいものの上に静かにおき、まず双方の表紙をのど元まで開くようにする。
次に本文を前から十ページぐらいめくり、のど元まで開いてから指先で軽くおさえ、また、巻末の方から同じように十ページぐらいをめくって、のど元まで開いてから指先で軽くおさえるようにします。
このようなことを本の中央まで交互に二、三回ずつくり返しますと、本が開きやすくなります。
現在の本の中には、用紙の選択や背加工の工夫によって、開きやすいようにつくられているものもありますが、出版物全般からみますと、まだまだ開きの悪い本が大部分を占めています。
したがって、新しい本を開く場合には、以上のような注意を忘れないようにしてほしいと思います。
2.本の読み方
さいきん、本製本を二つ折りにして読んでいる乱暴な本の扱い方をよくみかけます。
普通、本を読むためには、一八〇度開けば十分であり、本はその読み得る状態を考えてつくられています。
本は金属などでできていませんから、常識をこえた本の読み方をしないように心掛けるべきであります。
また、週刊誌でも持つようなつもりで、書籍を丸めて持ち歩いているのをみかけることがありますが、これなども本の限度をこえた扱いであり、本をつくる立場からしますと、ぜひやめてほしいことの一つです。
3.ページのめくり方
本を読み進めるためにページをめくるには、天(上部)を軽くめくるというのが、正しいめくり方とされています。
しかし、大部分の人びとは、下部をつまんでめくるように習慣づけられています。
下部をつまんで乱暴にめくると、とじ糸がゆるみやすく、ページが折れ込んだりする場合もあって、本の保存力を著しく弱めることになります。
しかし、注意してめくれば、一般にはそれほど影響がないものです。
また、指先につばをつけてめくることや、読みさしのページの小口を折っておくようなことは、本のためにやめてもらいたいことであります。
そのほか、読書をする前後に、手を洗うという習慣をぜひつけておきたいものであります。
4.函の出し入れ
函から本を出す方法にはいろいろありますが、手づかみで函の中の本を出そうとすると、かえって本が出なくなるものです。
そこで、机の上か膝の上に本の背をのせ、静かに函を上に抜くようにしますと、楽に抜き出すことができます。
また、函に収める場合には、まず函の下部と本の下部とを合わせるようにしてから、函の頭の方から本を入れるようにすれば、スムースに本を収めることができます。
このようなことは、一寸した工夫でありますが、知っておきたい本の扱い方であります。
5.本の保存
書架に収めるというのが本の普通の保存の仕方でありますが、この場合、出し入れも容易にできないほどぎっしりつめることは、相互の本をいためることになります。
本は楽に出し入れできる程度にならべるのが、適切な収め方であります。
また、大きな本や重い本・厚い本につきましては、無理に書架に収めるよりは、机の上か手ごろの場所に平積みしておく方が、本の保存の上からいってもよいことであります。
また、本自体の保存の上で、とくに問題になりますのが、革製の本であります。
革の場合には、油気がなくなりますとボロボロになってしまいます。
革の防腐剤としては、卵白液やワセリンまたはパラフィンなどをベンジンにとかしたものが使われます。
これらを、五、六年ごとに塗るようにしますと、革の質をそこなうことなく、いつも生き生きとした感じを保つことができます。
なお、革類にかびが生じた場合には、まずきれいな布片でふき、かびのために生じた斑点は稀薄なアルコール液でふきとるようにします。
そして、アルコールが乾いたら脱脂綿か柔かい布で、革の細孔にワセリンを塗り込むようにすることです。