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【新書が好き】バブルとデフレ


1.前書き

「学び」とは、あくなき探究のプロセスです。

単なる知識の習得でなく、新しい知識を生み出す「発見と創造」こそ、本質なのだと考えられます。

そこで、2024年6月から100日間連続で、生きた知識の学びについて考えるために、古い知識観(知識のドネルケバブ・モデル)を脱却し、自ら学ぶ力を呼び起こすために、新書を学びの玄関ホールと位置づけて、活用してみたいと思います。

2.新書はこんな本です

新書とは、新書判の本のことであり、縦約17cm・横約11cmです。

大きさに、厳密な決まりはなくて、新書のレーベル毎に、サイズが少し違っています。

なお、広い意味でとらえると、

「新書判の本はすべて新書」

なのですが、一般的に、

「新書」

という場合は、教養書や実用書を含めたノンフィクションのものを指しており、 新書判の小説は、

「ノベルズ」

と呼んで区別されていますので、今回は、ノンフィクションの新書を対象にしています。

また、新書は、専門書に比べて、入門的な内容だということです。

そのため、ある分野について学びたいときに、

「ネット記事の次に読む」

くらいのポジションとして、うってつけな本です。

3.新書を活用するメリット

「何を使って学びを始めるか」という部分から自分で考え、学びを組み立てないといけない場面が出てきた場合、自分で学ぶ力を身につける上で、新書は、手がかりの1つになります。

現代であれば、多くの人は、取り合えず、SNSを含めたインターネットで、軽く検索してみることでしょう。

よほどマイナーな内容でない限り、ニュースやブログの記事など、何かしらの情報は手に入るはずです。

その情報が質・量共に、十分なのであれば、そこでストップしても、特に、問題はありません。

しかし、もしそれらの情報では、物足りない場合、次のステージとして、新書を手がかりにするのは、理にかなっています。

内容が難しすぎず、その上で、一定の纏まった知識を得られるからです。

ネット記事が、あるトピックや分野への

「扉」

だとすると、新書は、

「玄関ホール」

に当たります。

建物の中の雰囲気を、ざっとつかむことができるイメージです。

つまり、そのトピックや分野では、

どんな内容を扱っているのか?

どんなことが課題になっているのか?

という基本知識を、大まかに把握することができます。

新書で土台固めをしたら、更なるレベルアップを目指して、専門書や論文を読む等して、建物の奥や上の階に進んでみてください。

4.何かを学ぶときには新書から入らないとダメなのか

結論をいうと、新書じゃなくても問題ありません。

むしろ、新書だけに拘るのは、選択肢や視野を狭め、かえってマイナスになる可能性があります。

新書は、前述の通り、

「学びの玄関ホール」

として、心強い味方になってくれます、万能ではありません。

例えば、様々な出版社が新書のレーベルを持っており、毎月のように、バラエティ豊かなラインナップが出ていますが、それでも、

「自分が学びたい内容をちょうどよく扱った新書がない」

という場合が殆どだと思われます。

そのため、新書は、あくまでも、

「入門的な学習材料」

の1つであり、ほかのアイテムとの組み合わせが必要です。

他のアイテムの例としては、新書ではない本の中にも、初学者向けに、優しい説明で書かれたものがあります。

マンガでも構いません。

5.新書選びで大切なこと

読書というのは、本を選ぶところから始まっています。

新書についても同様です。

これは重要なので、強調しておきます。

もちろん、使える時間が限られている以上、全ての本をチェックするわけにはいきませんが、それでも、最低限、次の2つの点をクリアする本を選んでみて下さい。

①興味を持てること

②内容がわかること

6.温故知新の考え方が学びに深みを与えてくれる

「温故知新」の意味を、広辞苑で改めて調べてみると、次のように書かれています。

「昔の物事を研究し吟味して、そこから新しい知識や見解を得ること」

「温故知新」は、もともとは、孔子の言葉であり、

「過去の歴史をしっかりと勉強して、物事の本質を知ることができるようになれば、師としてやっていける人物になる」

という意味で、孔子は、この言葉を使ったようです。

但し、ここでの「温故知新」は、そんなに大袈裟なものではなくて、

「自分が昔読んだ本や書いた文章をもう一回読み直すと、新しい発見がありますよ。」

というぐらいの意味で、この言葉を使いたいと思います。

人間は、どんどん成長や変化をしていますから、時間が経つと、同じものに対してでも、以前とは、違う見方や、印象を抱くことがあるのです。

また、過去の本やnote(またはノート)を読み返すことを習慣化しておくことで、新しい「アイデア」や「気づき」が生まれることが、すごく多いんですね。

過去に考えていたこと(過去の情報)と、今考えていること(今の情報)が結びついて、化学反応を起こし、新たな発想が湧きあがってくる。

そんな感じになるのです。

昔読んだ本や書いた文章が、本棚や机の中で眠っているのは、とてももったいないことだと思います。

みなさんも、ぜひ「温故知新」を実践されてみてはいかがでしょうか。

7.小説を読むことと新書などの啓蒙書を読むことには違いはあるのか

以下に、示唆的な言葉を、2つ引用してみます。

◆「クールヘッドとウォームハート」

マクロ経済学の理論と実践、および各国政府の経済政策を根本的に変え、最も影響力のある経済学者の1人であったケインズを育てた英国ケンブリッジ大学の経済学者アルフレッド・マーシャルの言葉です。

彼は、こう言っていたそうです。

「ケンブリッジが、世界に送り出す人物は、冷静な頭脳(Cool Head)と温かい心(Warm Heart)をもって、自分の周りの社会的苦悩に立ち向かうために、その全力の少なくとも一部を喜んで捧げよう」

クールヘッドが「知性・知識」に、ウォームハートが「情緒」に相当すると考えられ、また、新書も小説も、どちらも大切なものですが、新書は、主に前者に、小説は、主に後者に作用するように推定できます。

◆「焦ってはならない。情が育まれれば、意は生まれ、知は集まる」

執行草舟氏著作の「生くる」という本にある言葉です。

「生くる」執行草舟(著)

まず、情緒を育てることが大切で、それを基礎として、意志や知性が育つ、ということを言っており、おそらく、その通りではないかと考えます。

以上のことから、例えば、読書が、新書に偏ってしまうと、情緒面の育成が不足するかもしれないと推定でき、クールヘッドは、磨かれるかもしれないけども、ウォームハートが、疎かになってしまうのではないかと考えられます。

もちろん、ウォームハート(情緒)の育成は、当然、読書だけの問題ではなく、各種の人間関係によって大きな影響を受けるのも事実だと思われます。

しかし、年齢に左右されずに、情緒を養うためにも、ぜひとも文芸作品(小説、詩歌や随筆等の名作)を、たっぷり味わって欲しいなって思います。

これらは、様々に心を揺さぶるという感情体験を通じて、豊かな情緒を、何時からでも育む糧になるのではないかと考えられると共に、文学の必要性を強調したロングセラーの新書である桑原武夫氏著作の「文学入門」には、

「文学入門」(岩波新書)桑原武夫(著)

「文学以上に人生に必要なものはない」

と主張し、何故そう言えるのか、第1章で、その根拠がいくつか述べられておりますので、興味が有れば確認してみて下さい。

また、巻末に「名作50選」のリストも有って、参考になるのではないかと考えます。

8.【乱読No.79】「バブルとデフレ」(講談社現代新書)森永卓郎(著)

[ 内容 ]
一億総バブルから恐慌型デフレへ、経済学だけでは理解できない異常事態はなぜ生じたか。
その病理と心理の徹底分析から「日米再逆転の日」が見えてきた。
誰も書かなかった日本経済十五年の決算書。

[ 目次 ]
1 バブル経済のメカニズム
2 うたかたの「日本神話」
3 終わらなかったバブル
4 デフレと恐慌の原理
5 ポスト・デフレの日本経済

[ 発見(気づき) ]
日本が経験したバブルとその後の恐慌性デフレに関する「心理分析」の本である。
161ページあたりから、日本がデフレ・スパイラルに入り込んだ3つの要因を上げている。
1つ目は、多くの商品について市場原理が不徹底であるために、企業が値崩れを防ぐために生産調整を行っていること。
2つ目は、日本経済が不調であることを説明するもっともらしい理論が、ミームの生存競争で勝つこと。
そして3つ目として、次のように述べる。
日本を恐慌性のデフレに陥れた第三の要因は、日本経済の悪化を日本人が内心楽しんでいるのではないかということである。
もともと日本人は演歌の世界が好きな国民である。
北の凍てつく大地にたたずみ、かなわぬ想いをそっと涙する。
そんな情景が日本人は大好きなのだ。
これは興味深い(ただし、2つ目の要因と重なっているような気もするのだが)。
これが本当に妥当かどうかはともかく、こういう要因を考慮にいれない経済分析には根本的に不信感を抱きつつあった当時。
ただし、日本人に固有の特性としてこういうことを述べるのが適切なのかどうかは微妙なところ。
景気循環という現象には、普遍的に、人々の感情的サイクルも織り込まれている、という可能性もないか?
前半の、80年代のバブルが高度成長期に共通する部分が多かったことを指摘する箇所で、地価、株価、東京への人口集中、離婚率、進学率などが同じような動きを見せているという話が興味深かった。

[ 問題提起 ]
過去バブルとデフレは幾度となく繰り返されたが、その防止に経済学が役に立ったという記憶はほとんどない。
後講釈としての話は聞くが、事前の対策が万全だった話は聞かないのだ。
その中で記憶に残るのは高橋是清とアラン.グリンスパンである。
両者は共にデフレ退治を担ったので、経済の専門家を自認する先生方の評価は高くない。
バブル崩壊後の日本が立ち直れなかった最大の原因が、
「先生方の教える経済学にあるのではないか」
と疑う理由である。
日本の歴代内閣は学者とその愛弟子の官僚に経済の全てを委ねて来た。
だが折角のバブルをホットポテトのように扱い、たちまちデフレに転換させてしまったのである。
過熱するほど経済が発展したのは第一次大戦以来だった。
こんないい話などめったに無いのに、それをもてあまして投げ捨てるなど、経済の専門家とはとても思えないのだ。
経済学者がなぜ経済を知らないのか。
それは学問の体質にある。

[ 教訓 ]
学問は過去の検証に他ならず、未来予測をその延長線上に求めるからである。
ちょうど車の後ろ窓を見ているようなもので、無数にある交差点での道の選択理由が皆目分からないのだ。
古来、経済は戦争と同様の生き物で、
「瞬時も目を離すことが出来ない」
といわれる。
人の心が大きく関わるので、型にはめた検証など不可能なのだ。
それをあえて学問にするには、写真のように瞬間を捉えて判じるしかないが、これでは死体を見るようなもので、生きた経済を論じることなどとうてい出来ない。
次元が一つ下なので無限大の未知数が入り込むのである。
映像として見るべき野球を写真で見ても、ゲームの経緯や勝敗が何も分からない、というのとのと同じである。
そのためノーベルの子孫は、経済学を受賞の対象から外すように求めたという。
経済学や戦争学は人の心を組み込まない限り、決して用いるべきではないのである。
端的な例は株価である。
株価は人の心を正直に映すので、実体経済と無関係に変動する。
そのため無数の株の本が出ているわけだが、本を見てたちまち長者になったと言う人など居ないだろう。
高くなれば買いたくなるし、安くなれば売りたくなる。
これが人の心というものなのだ。
株の儲け方を教える学校はない。
同様に生きた経済を正しく説いた経済学も無い。
こんな経済学が大手を振っていること自体が、有害としか言えないのではないか。
仮に今現在の生きた経済を教えられたとしても、次の段階には違う状況が展開する。
競馬の出目の法則と似たようなもので、後講釈の役にしか立たないのだ。
今回の日本のバブル崩壊に当てはめれば、崩壊に追い込んだ学者先生の頭の中には、
「現状が強度のインフレなので、このままでは地価の無限の上昇が国を破滅させる」に違いない」
の一事しか浮かばなかったのではないか。
地価を下げるには資金を断てばいいとする先例に倣って、総量規制の非常ブレーキを掛けたのだろう。
だがブレーキは少しずつ分けて踏むのが常識なのに、10年もそのまま踏み込み続けたのである。
ためにスリップの横滑りが止まらず、道路脇に転げ落ちてしまったと言うのが現状である。
しかも草食獣日本人は全員同じ方向に駆け出すのが特徴だ。
政府のおえら方もインフレ防止のためにと、土地をガンジガラメに縛ることを考えついた。
資金を断たれ土地を縛られた日本経済は、背伸びしていた反動で極度の資金不足に陥り、デフレに向かってを急坂をまっしぐらに転げ落ちたのである。
状況に合わせた対策を採る。
これが生きた経済の教えなのに、学者は死んだ学問しか教わってないので、その対策が思い浮かばず行き当たりばったりの、資金停止を続けたものに違いない。
おまけに日本人は「答えは一つしかない」とする、富国強兵教育を受け続けている。
勉学の鬼になってガリ勉を続けてきた高官達に、道を変えることなど思いつくはずもない。
もし総量規制か土地の縛り上げかのどちらかだけなら、或いは鎮静効果が緩やかに進んでいたかも知れない。
だがマネーサプライまでマイナスにされ、逃げ場のない状況に追い込まれた日本の経済は、公的の負債だけで1000兆円を越えてふくらませつつ、膨張する宇宙のように国家消滅への道を、今もまっしぐらに突き進んでいる。
政府が負債減少のためにと強行している弱者イジメも、負債より先に人口が減って、国の明け渡しを早めているに過ぎない、というのが早晩分かることになるだろう。
だがその時は逆の道(インフレの道)を行く中国に大きく水を開けられ、その覇権の下に安住の地を求めて居るのは疑いない。
その当時、過去10数年デフレを続けてきた与党の真意がどこにあるのか不明だが、それが外国からの暗示や謀略でないことを祈るのみである。
ここに最大の悲劇の元が潜んでいるような気がする。
日本の為政者はこんな死に学問の経済学を、後生大事に押し頂いて国の舵を動かすのである。
経済がめちゃめちゃになるのは当たり前だし、行き先が分からないのも当たり前だ。
アメリカの政府高官は大統領と一緒に何千人も交代するという。
だが日本の国を動かすキャリアは、ただ一回の公務員試験で選ばれ、その結果で一生の序列が決められるという。
以後、勉強の必要がない上に何をしても、何もしなくても一生安泰なのだという。
これでは天下り先の確保と、ノーパンしゃぶしゃぶにうつつを抜かす以外に、することが何かあるだろうか。
日露戦争の時旅順を攻めあぐねた乃木軍参謀長の伊地知幸介は、海軍の協力申し出を頑なに断ったため、日本は大損害を出してしまった、と司馬遼太郎は「坂の上の雲」に怒りを込めて書いている。
大砲の専門家を自負する伊地知は、素人は口を出すなと言った筈だが、どの分野でも専門家は過去の技術に固執するのが普通である。
新技術は自分の地位まで揺るがすからだ。
フランスのノーベル賞生理学者アレキシスカレルは、高著「人間この未知なるもの」のなかで、
「人間この未知なるもの」(知的生きかた文庫)アレキシス カレル(著)渡部昇一(訳)


「50歳まであらゆる分野を学んでのち、始めてリーダーになる資格がある」
と述べている。
聞く学ぶ研究するなどの勉学修得を、かたくなに拒否する日本の官に、その重席を担う資格はないと断言できる。
まして天下りまでして日本の頭脳を麻痺させ続けるのである。
罪の上塗りという以外に言葉がない。

[ 結論 ]
その当時、中国は安い労働力で外貨を呼び込み、10%に近い成長を続けていたという。
押し寄せる外貨が発展させたのだと。
では外貨の代わりになるものは他にないのか。
例えば中央銀行が買いオペで大量に無利子の資金を貸し出して、それを外資の代わりに使えないのか。
株価が8000円まで落ちた3年前の段階で、もし日銀が100兆円の資金を株に投じていたら、たちまち株価は20000円台を回復し、不良資産は消滅して銀行も預金者も、工場も失業者も全ての国民が笑顔になっていたに違いない。
円は下がって1ドル150円を超えるかも知れない。
だが、ほとんどの国民はバブル前の楽しい暮らしに戻って、やっと安堵の幸福感を得ていたはずだ。
日銀は株価の急騰で大儲けだし、年金基金は赤字を全て回復する。
銀行はまだ100兆円もあるという、巨額の不良資産を残らず片付けられる。
失業保険は余りに余って大金が積まれる。
予算は増え続ける分を全て負債の返済に回せる。
これは夢物語ではなく、手の届くところにあった話なのだ。
だがその時日銀は何をしたか。
1兆円を恐る恐る出して前代未聞だと大見得を切っていたのだ。
恐らくこれが前例に拘る官の想像力の限界なのに違いない。
当時はもしこれをやるとインフレが起こる、とする固定観念が国じゅうを支配していた
。だが、インフレなど決して起こらないのだ。
その目標を3%と定めてしまえば、外資がいくら入っても資産家がいくら過剰投資に走っても、日銀が売りオペの手を持つ限り結果は全く変らない。
預金も外貨も余り返っているからだ。
国民の預金と外貨の量でインフレの度合いが決まるのだが、日本はどちらも溢れているので、よほどの災害か特大規模の遷都でもしない限り、インフレになることはない。
先のバブルの時でさえインフレにならなかったのだ。
結局、通貨が増えると経済が栄えるという仕組みは、外資でも日銀融資でも同じなのだ。
日銀融資は円安を招くので資産家と輸入業者には嬉しくない。
その代わり雇用が急増するので働く者には大歓迎だ。
だが小泉内閣と福井日銀はマネーサプライを減らし続け、あえぐ弱者を睥睨しながらデフレを歓迎して憚らなかった。
それを迎合したマスコミ共々、鬼に喩えても足りない悪魔の使いと言うほか無い。
日本はいま長い不況の冬からようやく抜けようとしている。
と公表される。
だがまだ早春で山里は雪の中である。
失業率が下がったと言っても、実態は社員を日雇いに切り替えただけのことで、労働者の所得は大幅に下がっている。
一方では輸出が驚くべき勢いで伸びているので、会社の経営は絶好調だ。
過去最高の利益を上げているので、借入金はほとんど返済したという。
伸びた理由は労働者の所得を減らしたからだが、もう一つの理由は中国とインドが相変わらず高い成長率を続けていること。
アメリカが過剰消費を続けることで、世界中の輸出を丸抱えに引き受けていることである。
そこにイラク戦争と原油高が重なるという災害特需が加わったので、一層ハッキリと世界規模の好況の原因が見えて来たのだ。
かって日本は土地バブルを起こし、株をはじめあらゆる資産が暴騰、日本中ににわかな成金が溢れた。
その勢いでアメリカのシンボルとされるエンパイヤステートビルや、ペブルビーチのゴルフ場まで買いに走った。
日本を売るとアメリカが三つ買えると豪語し、メディアと銀行と政府が一体となって民衆を煽ったのもこの頃のことだ。
だが呆れを怒りに変えたアメリカとその資本は、あらゆる手段で日本に圧力を掛けはじめる。
ビス規制をはじめ世界ルールを全て満たすよう求めてきた。
おむつが取れたのなら一人歩きしてみろと。
戦後日本が焼け野原から立ち直れたのは、アメリカがズボンの下で守ってくれたお陰だった。
保護者のアメリカに頭を叩かれれば、当然のこと首をすくめて謝るほか無い。
以来、日本の政府は十数年にわたって謝り続け、トップ集団から下がり続けた。
最近やっと景気回復に向かって動いている。
様に見えるが、中国の大発展にぶら下がってのことに過ぎない。
バブルからデフレへの180度大転換で、受けた傷は至る所に残っている。
少子化。
産業の空洞化。
無責任の横行。
自殺、犯罪の激増。
モラルの退廃。
子育て拒否。
刹那主義など傷は余りにも深い。
中でも顕著に現れたのが政官財癒着の構造である。
最近吹き出した姉歯事件やライブドア事件 談合事件なども、国民を守るべき為政者自らが責任を放棄した現れに過ぎない。
いま日本政府は国民を富者と貧者に二分する政策に夢中である。
年収200万に満たない貧者の犠牲で、ようやくデフレから抜け出そうとしている所である。
だが、ライブドアや村上ファンドのようなオオアリクイが、貧者が営々と蓄えた涙の結晶を、会社ごと一なめに飲み込んでいく。
こんな虚業の輩が大手を振るのは、後責任主義(自由主義)の本質を知らない議員や官が、法体系の整備を他国に学ばなかったからだ。
古来好運者は人の意見を良く聞く者に限られた、という厳然たる事実を決して忘れてはならない。
日本で言えば聖徳太子や徳川家康が聞く方の代表で、菅原道真や石田三成は聞かない方の代表だった。
前者が肉食獣タイプであり後者が草食獣タイプなのは、その行動や名前を見れば一目瞭然だ。
小泉前首相はその両方が突出した、極端な生き残り型=小型肉食獣なので、化かしの名人となり手品師となって国民を自在に操ってきた。
また気が弱いので雌狐のように、アメリカ虎の威を借る以外の道を知らなかなった。
貧富による国民の大分断は、アメリカをまねたおもねりの産物なのだ。
だが、このままアメリカの顔色をうかがい続け、世界にバカにされ続けて、果たして国の独立が維持できるのか。
北鮮は原爆を手にして大いばりだし、中国は尖閣列島や沖縄に触手を伸ばして平然としている。
韓国も竹島を抱え込んで手放す気はない。
だが米国がそれを阻止してくれる気配は毛頭ない。
さて問題は日本がなぜ先頭集団から下がり続けたのかという点である。
アメリカは10数年も前から内需拡大を声高にアドバイスを続けていたが、日銀は内政干渉の一言ではねつけていた。
内需拡大とは要するに国民のお金を増やして(インフレ傾向にして)、デフレから脱却せよと言うことだったのだ。
だが日銀と政府はそれを無視してデフレ政策を押し通し、自ら世界のCグループまで後退する道を選んだのである。
もしブッシュが対テロ宣戦布告をしていなかったら、もし超過大な戦費を出していなかったら、もし中国が投資バブルを歓迎しなかったら、今も自由世界は日本のデフレ歓迎策に引きずられて、大恐慌に向かって突き進んでいたに違いない。
では、なぜ日本はデフレ歓迎を続けるのか?
理由の第一は、デフレ歓迎業種と言われる官が、国を支配しているからである。
給料と地位が据え置きで、物価だけ下がるデフレを嫌う者が居るだろうか。
第二の理由は首相と日銀総裁の性格である。
昼の性質(アの母音)の強い人はインフレを好み、夜の性質(オの母音)の強い人はデフレを好むのである。
小泉前首相の任期中に最大の下げを記録したのは、世界中が失望した表れに他ならない。
小泉氏は息絶え絶えの弱者に更に痛みを全て押しつけ、その分を高所得の強者に押しつけたので、以来日本社会は二分化が進み、ブランドショップと百円ショップの大繁盛が加速していく。
失望した国民は、タコが消化するはずのない自分手足を喰うがごとく、ハゲタカのサラ金にまで手を出して、更に地獄への道を転げていく。
株価が17,000円あたりにまで回復したが、これとてアメリカと世界経済の発展のお陰で、いつドルが崩落に見舞われるか知れた物ではない。
中国の躍進やオイルの暴騰や、更には戦争と度重なる大災害のお陰なのだ。
ではなぜ中国の躍進やオイルの高騰が経済を良くするのか。
その答えは通貨の水増しにある。
水増しとは要するにインフレ誘引のことだ。
物の価格は買いたい人の数と、売りたい人の数で決まる。
買いたい人が多ければ値段は上がるし、買う人が居なければ投げ売りになる。
少しでも売れ残ると値段は大きく下がるし、足りないとつり上げられる。
その分岐点を数値で表したのが「二割倍半の法則」である。
買いたい人が二割多かったら値段は倍になるし、売りたい人が二割多かったら値段は半分になると言う法則だ。
その当時、秋野菜が4倍に暴騰したが、品物が無かったわけではない。
4割ほどの不足だったのだ。
また秋キャベツを畠で潰していたが、これも二割捨てると値段が倍になるので潰す方が儲かるからだ。
通貨を二割水増しするか、物を二割減らせば価格が倍に上がるとするなら、物持ちは物を隠したくなるのが人情である。
オイルショックの時全国民がトイレットペーパー買いに走り回ったが、品物は倉庫に山積みされていた。
古来商人の蓄財はこの手を使って行われてきた。物価の変動を自ら作り出して儲けるのである。
さて昨今石油が上がっているのは品不足のためではない。
生産余力も備蓄も山のようにある。
作為的な値上げなのは言うまでもない。
石油の不足や戦争や災害の復旧は明日に延ばせない。
その出費には糸目を付けられない。
そのため世界経済全体で見ると、物が増えたわけではないのに、お金だけがどんどん増えていく。
通貨だけが水増しになっているのは明らかだ。
所がそれでお金が潤沢に回って、買いたかった物がどんどん買える。
生産者が潤う。
給料が上がり失業が減る。
可処分所得が増えるので益々売れる。
デフレの逆現象で好景気の循環である。
これがインフレの最大の長所なのだ。
もし仮にデフレのとき政府が発行する国債を、中央銀行が無利子の特別融資で全部引き受けたとしたらどうなるか。
通貨が増えるのでたちまち景気が良くなり、税収が増えて増刷したお札は間もなく取り戻せる。
不良資産がどんどん減るので、銀行も企業も息を吹き返す。
経済は好況に大転換するのである。
ちょうどバブルがデフレに転換した逆のコースである。
だが現実はインフレが恐いという意味不明の理由で、全ての国債を銀行に引き受けさせてきた。
いまその利子で国の予算も健康保険も国民の幸福感までがつぶれつつある。
こんな馬鹿げた政治はないと思うが、現実に日本に起こっていることなのだ。
また天下り先以外のあらゆる予算が大幅に削られ、地方と弱者は益々破産に追い込まれていく。
ただインフレが恐いの一言だけで国が疲弊し経済が破綻していく。
何とも子供じみたばかばかしい官僚の作り話だが、これが日本の現実である。
では石油が上がると誰が損をするのか。
トータルすれば誰も損をしない。
と言うのが答えである。
インフレの時はそれが加速するので預金と弱者にしわ寄せが来る。
だがデフレの時は少々過熱しても、周囲の氷にたちまち冷やされ、インフレに火がつくことなど決してない。
ガソリンや灯油が高くなって消費者は困るが、みんなが災難としてガマンしている。
だから自分もガマンしようと、戦時中のような平等の安心感でなんとなく笑顔にもなれる。
平等の不幸はガマンできるのである。
これは昔から言われる、「隣に蔵が建つ不幸」の逆現象だ。
疎外感による不幸の裏返しで、みんな一緒なので不幸感を感じないのだ。
文化の低い昔の民が全て不幸だったのか、高くなった今の民が幸せなのか。
昔の民が不幸に見えるのは文化のためではない。
貴族に搾取される不幸だったのである。
今不幸を感じる民が多くなったのは、貴族階級の贅沢三昧を放映して、貧富の差を見せつけるからなのだ。
超高額所得を禁止して累進率をバブル以前の水準に戻す一方、買いオペを大動員して国の負債を減らし、公務員の取り分も下げれば全ての国民は、平等感から大いに幸せを感じるに違いない。
これで国の負債も犯罪も自殺もたちまち半減するのは明白だ。
これこそが民のカマドの煙が立つ政治なのである。

[ コメント ]
今人間世界は科学の発達で途方もない文化水準を作り出した。
だが民の幸福感はそれに反比例して下がっていく。
幸福感が受けられるのは金持ちだけなのだ。
ここ10年の民の幸福感は下がり続けている。
これが民の不幸感を増幅させている元凶なのである。
民の平等の幸福感が政治の究極の目標とするなら、明らかに逆コースである。
小泉政権になって一層幸福感の急落が進んでしまった。
自殺や異常犯罪の激増がその証である。
幸せな人が自殺することなどあるだろうか。
いま平均寿命が下がっているという。
人は失望すると死が早まる。
「成功者は長生き」という統計もある。
「人は死にたいと思うときに死ぬ」というのは事実なのだ。
自殺でなくても不幸感が死期を早めているのは疑いもない。
銀行は預金に利子も払わず空前の利益を上げているという。
一方ではサラ金地獄で極貧生活を強いられる弱者が巷に溢れている。
貸出利息の最高限度は公定歩合に10%の上乗せ程度で十分のはずだ。
民が死を願う政治は一日も早く終わらせて欲しいと願うばかりである。

9.参考記事

<書評を書く5つのポイント>
1)その本を手にしたことのない人でもわかるように書く。

2)作者の他の作品との比較や、刊行された時代背景(災害や社会的な出来事など)について考えてみる。

3)その本の魅力的な点だけでなく、批判的な点も書いてよい。ただし、かならず客観的で論理的な理由を書く。好き嫌いという感情だけで書かない。

4)ポイントを絞って深く書く。

5)「本の概要→今回の書評で取り上げるポイント→そのポイントを取り上げ、評価する理由→まとめ」という流れがおすすめ。

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https://note.com/bax36410/n/n968de29b9590

【新書が好き】自由とは何か
https://note.com/bax36410/n/nda37804ca159

【新書が好き】いきなりはじめる浄土真宗
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【新書が好き】はじめたばかりの浄土真宗
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【新書が好き】ナショナリズムの練習問題
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【新書が好き】戦後和解
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【新書が好き】ブッダとそのダンマ
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【新書が好き】動物化する世界の中で
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【新書が好き】さまよう死生観
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【新書が好き】国際政治とは何か
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【新書が好き】エコノミストは信用できるか
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【新書が好き】正義を疑え!
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【新書が好き】劇場政治を超えて
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【新書が好き】テロ-現代暴力論
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【新書が好き】アメリカ外交とは何か
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【新書が好き】日露戦争
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【新書が好き】不幸論
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【新書が好き】夢の科学
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【新書が好き】戦争報道
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【新書が好き】少年犯罪実名報道
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【新書が好き】『葉隠』の武士道
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【新書が好き】現代ロシアを読み解く
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【新書が好き】キリスト教を問いなおす
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【新書が好き】かなり気がかりな日本語
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【新書が好き】悪の対話術
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【新書が好き(番外編1)】東アジアの終戦記念日
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【新書が好き(番外編2)】お化けや妖怪の日常を想像してみませんか?
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【新書が好き】景気と経済政策
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