ロジラテ思考の情報整理術「”他社から学ぶ”は、学び方を間違えると時間の浪費」#C04
1.「他社から学べ!」の落とし穴
会社にいると「他社から学べ」、「我彼比較しろ」とよく指示されます。
大半の理由は、戦略が行き詰まって打ち手がなくなり、業績が上がっているコンペティターと我彼比較して、欠けているところを真似ろということです。
もちろんこの考え方は悪くはありません。他社の成功事例から学んで真似ればいいのですから、コストと時間は大きく節約されます。
ただ日頃「他社との差別化をしろ」とか「強みを活かした製品で、他社が真似できないマーケットを作れ」と言っているのに、業績が悪化した途端に他社を真似ろとは、普段言っていることと矛盾します。
本来、戦略とはコンペティターとの違いを見出し、「強み」で戦術を実践していくことですが、他社を真似るということは他社と同じ戦略をなぞることになります。
これでは2番手になって、コンペティターには勝てません。
2.「他社を真似る」で成功するには、自社ならではの「さじ加減」が重要
『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社 の中に面白い例があったのでご紹介します。これは企業が誤った「他社を真似る」の失敗例を的確に書かれています。
この事例は、筆者が地方都市に行ったとき、バス停で見かけたコギャルを分析した話です。
この話を元コギャルで、今は渋谷でアパレルの仕事をしている女性に話したところ、こんな答えが返ってきました。
ここで注目すべき部分は「基礎ができていないから、さじ加減がめちゃめちゃになる」です。
企業に置き換えると、
基礎とは企業の風土習慣です。
さじ加減とは、仕事の中に埋め込まれている言葉にしたり文書化できないスキルや常識です。つまり暗黙知として常識的に行っている質の高い仕事でその会社の「強み」です。
他社の成功事例は、風土習慣、さじ加減がベースとなって成功したことで、他社がそのまま真似ても上手くいかない理由がここにあります。
3.強み(風土習慣、さじ加減)を活かして、他社を真似る
私の知る限り唯一、他社を真似る方法で上手くいっている例があります。
それはトヨタの「カンバン方式」、「Kaizen」です。
この二つは、トヨタ自動車がグループ企業に指導しながら浸透させてきました。そのお陰で日本の自動車産業は発展し、品質や生産管理、コスト管理が飛躍的に改善されました。
各社は「カンバン方式」、「Kaizen」の基礎を学び、自社の生産方式の中に組み込まれ、取り入れ方が「さじ加減」となって自社の風土習慣に落とし込まれていったのです。
4.強み(風土習慣、さじ加減)を活かして、イノベーションを起こす
自社の風土習慣、さじ加減が「強み」になったら、社会の変化やマーケットの変化に活かせるビジネスモデルを構築することができます。
これがイノベーションです。
そのためには常日頃からロジラテ思考で事象を分析し、観察することが最も効率良く自社の強みや、社員の強み、イノベーションを生み出すことができます。
次回は、具体的な変化のロジラテ思考の観察法について説明していきます。
※ロジラテ思考とは、ロジカル思考(垂直思考)+ラテラル思考(水平思考)を組み合わせた思考法。詳細は「ロジカル思考の罠。『ロジラテ』思考で成果をあげる行動論 #A05|飯田利男|note」をご参照ください。