【どうする家康】お葉の好みを聞き、瀬名がハッとした理由は?ギャグ回に混ぜ込まれた不穏の数々に震えよ。第10回「側室をどうする!」深掘り
NHK大河ドラマ『どうする家康』(以下、『どう康』)第10回の深掘り感想です。
(※本記事は一部有料です。ドラマレビュー箇所はすべて無料でご覧いただけます)
前回の感想はこちら↓
(※以下、ネタバレ注意)
(※本記事のセリフの引用箇所は一部ノベライズに準拠しており、ドラマのセリフとは異なる場合がございます)
ただの「緩」回じゃなかった?SNSに賞賛の声も多々。噛めば噛むほど見どころ満載!
前回の雑感……ディスではないけど、わりと「正直な感想」としてレビューいたしました。やっぱり見た直後の感想として、「面白かったけど……これ大丈夫か?」みたいな不安が残ったからです。
ただ、なぜ僕が「不安」を感じる必要があったのか。エンタメなんだから、自分が「面白かった」と思ったらそれでええやんというところですけど。なのにどうしても「これをレビューして、本気で面白かったと伝わるような文章にできるのか?」という思いの方が先行しちゃったんですね。
ただそれは、僕が1周目、2周目を見た時の感想。そこから「雑感」を書き上げつつ、ドラマを3周したり、SNSで皆さんの感想見たりしたら……これ、もっともっと鑑賞ポイントあるぞ?と。「こんな難しい回をよくやってくれた」という言葉や、「まるでスルメイカのように、噛めば噛むほど楽しめる」なんて感想もTwitterには上がってましたが、まさにそれなんですよ。
だから「今回の『どう康』、ビミョーだったなぁ。そこそこ面白かったけど」じゃないのヨ。「いや、でもこれ、噛むとまだ味が出るぞ……えっ、えぇっ……ナニコレ、おいしいじゃん!」となっちゃう感じ。そんな鑑賞ポイントを今回のレビューでお届けしていければと思います。
ちなみに今回、最後の方に、僕がかつてグルメライターだった時代の赤裸々な話も交えつつ『どう康』第10回を振り返る「投げ銭オマケ」を付けてみました。つっても、ただの「あとがき」みたいな感じです。純粋なドラマのレビュー箇所はすべて無料で読めますので、「面白かったな、お金払う価値あるな」と思ってくださった方々だけ、ぜひとも楽しんでいただけましたら幸いです。
運命に翻弄されし姫君「築山殿」爆誕。笑いの隙間に隠された不穏の数々……
さて今回の物語、序盤は瀬名ちゃんが岡崎城下の築山の庵を与えられた話が語られましたが。従来の大河などでは「仲が悪くなったから別居した」みたいに語られることが多かったところ、「一向宗の一揆で、民の声を聞くことがいかに大事かを思い知りました。私は里にいて、民の悩みや願いを聞き、それを殿にお届けしたい……里と城を私がつなぎたい。そう殿にお願いし、この築山をいただきました」と新たな解釈でした。そうきたか。
ただ、築山を訪ねる殿、相変わらず瀬名ちゃんにデレデレな感じでしたね。
瀬名「お聞きでござますか?」
殿「聞いておる、聞いておる」
瀬名「民はまことに様々な悩みを抱えております」
なんて。「しっかりしろよ!また謀反起こされるぞ!」みたいな心配も、無きにしも非ず。
でも、殿も冒頭シーンでは遠江(とうとうみ)の飯尾連龍(いのおつらたつ)と密約を交わしたり、調略で忙しそうにしてましたからね。何気にもうただのヘタレじゃないところは注目しておきたいところです。戦にならぬかならないかの命がけの交渉をしてきたわけですから、大好きな妻といるときはデレデレしててもいいんじゃない?ここは「ダメな殿」というわけではなく、きちんと成長も描かれた人物であり、キャラブレもしていません。
一方瀬名ちゃんは、ゴリゴリとなにやら薬草を煎じていましたね。いつの間にそんな技術を……「精がつくそうでございます。お飲みください」と渡してましたけど。伝聞調ってことは、誰かに教わったのか?そして、殿に飲ませるのも、アレですね。何やら『鎌倉殿の13人』の、のえ(伊賀の方)を思い出してしまう。さすがに「アサ……の毒」は入ってなさそうですけどw絵的にアレだったので不穏ポイント+1。
というか、年を取ってからの徳川家康の逸話として、薬を煎じるのが趣味だったそうで。これは過去の大河でもそういう姿が描かれてましたけど。まさか、瀬名から習ったものだったの⁉
爪をよく噛む癖と言い……今作の家康、瀬名から影響を受けている部分が大きく描かれていくようですね。ここは何やら尊い感じもしますが……瀬名の命運を思うと、不穏ポイント+2ですよ。
そして、急にやってきた客人。
瀬名「ここは誰もが気軽に立ち寄れる場所じゃ、通すがよい」
殿「不用心はいかん」
おっと……これはフラグですか?今回は於大でしたが、そのうち怪しい奴がやってくるんじゃないの??いや、すでに来てたりして。薬の調合を教えた誰かとか?不穏ポイント+3。
そして於大から「これからは築山殿とお呼びせねばならぬかのう」。はい、出た!歴代の大河でも出てきた「築山殿」の名称!あくまで瀬名ちゃんは「瀬名で結構でございます」なんて通そうとするんですけど……もう「築山殿」の名前が出てきた時点で不穏ポイント+4です。
そして、始まった。姑の不躾トーク!次の子ができないことを「産まなくなったら御用済み」とか言うし、「竹と亀が死んじゃったらどうなさる!」とか言うし……あぁっ、もう!不穏ポイント+5!、+6!加点が止まらねーよ!
それには瀬名ちゃんもブチ切れ、ついに姑に向かって手を振り上げちゃう始末でしたけど。いざ側室の話が出てくると、おや?瀬名ちゃんの様子が……?今にも泣き出しそうな顔ながらも、やがて於大の言葉にウン、ウンとうなずくようなしぐさを見せつつ……「側室選びは、この瀬名にもやらせてくださいませ」。
いったいどんな心境の変化だろうかとも思いましたけど、きっと於大の「殿はもはやただの国衆ではありません」や「松平家を盤石なものとしていかねばならぬでしょう」といった言葉で理解を示したのでしょうね。
ただ、理解を示したとは言っても、心の奥底で納得はしていないはず。側室オーディションを開くも「はあ~、なかなかよいおなごがおらぬものですね」とため息を吐いていました。逆に家康はノリノリで「そうかな、わしは何人か……」なんて言ってたんですけど。「殿は、おなごを見る目が全くございませぬ。私は別として」と瀬名。何気に自分をアゲてるの草。
でも、アレアレ?確か側室の条件って、「家柄はさほど問わんらしい。何より働き者で、子をよう産みそうなおなごじゃ」「あとは、殿からのご寵愛を受けそうであればな」(by登与)じゃなかったでしたっけ?いつの間にか「殿からのご寵愛を受けそう」のところがゴッソリ抜け落ちていましたね。不穏ポイント+7か?
ただ、ここが瀬名の心の複雑なところを表しているところなのでもありました。子を作るためには側室を選ばねばならないとは言え、妻としては正室である自分が一番でなければならないわけですから。殿が鼻の下伸ばしながら選んだおなごなんて……ましてや、色気ムンムンの清水あいりさんなんてね。完全に殿、骨抜きにされてしまいますわな。
ちなみに、清水あいりさんのインタビュー記事が出てましたけど、すごく感動的な内容でしたね。
清水あいりさん、めちゃめちゃいい子やんけ……僕、「茶の間で凍り付いた勢ですw」なんてツイートしちゃって、すみませんっした🙇
「一度引いて、引き受ける」2代目『鎌倉殿』就任時の一幕を思い起こさせる、不穏の側室就任式……!
さて。不穏ポイントがどんどん加算されていく中、オーディションとはまったく別枠の、イノシシを解体する姿から選ばれた鵜殿家の娘・お葉ですけど。「家柄はさほど問わん」じゃなかったのか?いや、目を付けた娘がたまたま鵜殿家だったという流れなんでしょうが……「うん!さすがは鵜殿家の娘。見事じゃ!」と於大。結局、名家の名が出てくるとそこにも惹かれちゃうのは、現代人の感覚にも近しいものを感じますね……。
でも疑問ポイントだったのが、「殊勝なことを言って、この城に潜り込み、まんまとわしの側室となって…あ…罠かもしれんぞ!」と警戒心MAXの殿に、「なるほど…さすがは鵜殿家の娘じゃなあ」「ほれぼれいたしますな」と感心する於大と瀬名。いや、殿の言う通り「感心してる場合か!」ですよ。
この場はギャグみたいな感じで流されちゃいましたけど、マジでお葉が殿の命を狙ってたとしたらどうするつもりだったんだろうね、この2人。子をつくるための側室選びのはずなのに、肝心の種馬……もとい、殿が殺されちゃったら元も子もないじゃないですか。
絶対に「それはありえない」という確信でもあったのでしょうか?そもそも、お葉を見込んだのは於大と瀬名。お葉自身は、むしろ乗り気ではありませんでした。「殿方が好む類のおなごではないと分かっておりまするゆえ、殿がお気にめされぬかと」と、一度は断ってるんですよね。
そこを「この通り!殿の側室になっておくれ。そなたじゃなきゃ、嫌なんじゃ!お願い!」と頭まで下げる瀬名のゴリ押しで、ようやく「そこまで言われてお受けせぬは、武家の女の恥というもの…謹んでお受けいたしまする」とお葉も引き受けたのですが。うん、このときのお葉のセリフも、武家の女というよりまんま武士で草なんだけど。
てか、これさ……思い出すのは、やっぱり『鎌倉殿の13人』第26回の、2代目鎌倉殿・頼家就任のときのやりとりなんですよね。頼家も政子に「私に(鎌倉殿が)務まるかどうか」と一度引き、そこで政子から諭されて、鎌倉殿を受け継ぐ決意をするんですけど。実は本人、最初から引き受けるつもりで、一度引いたのは梶原景時からの入れ知恵だったっていう……。
「一度引いておいて、諭されて引き受ける」というやりとりが相手に与える信頼は絶大なんですね。これ、お葉が誰かに入れ知恵されてたわけじゃなくて、本当に良かったよね。一歩判断を誤ってたら、ガチで殿、死んでた可能性も……?
いよいよ夜伽……徐々に雲行きが怪しくなっていく瀬名の表情に注目
で、いよいよお葉と殿の初夜なんですけど。このあとはずーっと瀬名ちゃんの表情に注目です。殿の喜ばせ方を指南し、「しっかりね」なんて言ってお葉を送り出す瀬名ちゃんなんですけど。登与が「力み過ぎだで」なんてお葉に言ってる間、カメラは瀬名ちゃんの顔をクローズアップ。口角を上げながらも、どことなく、落ち着かないような表情でしたね。
さて……一夜明けて、殿が再び築山へ向かうと、先客が。なんと木下藤吉郎の話に瀬名が大笑いしているではありませんか。「おう!松平様、お邪魔しとりますに!」「木下殿って、本当に面白いお方で」なんて、二人仲良さげなんですけど。これ、殿にとってはショックだぜぇ~……自分が嫌いな男と、自分の妻が楽しそうに話してるなんてさぁ……。
自分も側室と一夜を共にした後で、勤めとはいえ恐らく後ろめたさもあるので、「我が妻と、なにやっとるんじゃ!」と堂々と責められないのがまた余計にツライところ。と言ってもまぁ……あんなムツゴロウさんプレイで、まともな夜伽なんて出来てはいないと思いますけどね……本当、何だったんだよあの初夜はw
しかも、殿は殿でまた、お市の嫁入りの話まで聞かされる。信長の命で、一度は夫婦となる予定だった相手ですよ。正室と、側室と、そしてかつての婚約者……殿の複雑な表情にもまたギューッと感情が苦しくなるところですけど。
そこからまた10か月後。ついに……というか、映像的にはあっという間?にお葉との子も産まれてしまって。「お犬さんじゃぞ!」と、人形を持って赤子をあやす殿の姿を見て、そっと瀬名は顔をそらしていました。いかん……ここは瀬名ちゃんの気持ちにまたギューッとなっちゃうところです。
本当なら、自分が3人目を産むはずだったのに……なんて考えたと思うんですよ。自分じゃない女を気遣い、その女が産んだ子をあやす夫を目の前で見るなんて、現代ではそれだけで修羅場ですけど。戦国時代だってそう。頭では「勤め」だと分かっていても、そう簡単に受け入れられませんて。
そして、その後の夫のノロケ話もね……「まことにできるおなごとは、ああいうものじゃなあ。うん」なんて言う殿に、さすがの瀬名ちゃんも「すみませんでしたね」なんて小言を言ってしまいましたね。
そんな妻にも気づかず、「こよいもお葉を呼んで構わんか?」なんて殿。「役目じゃからな」と言い訳しつつ、「いや、そなたが嫌なら……」。これ、男としては、精一杯妻を気遣っているつもりなんですよ。それが女性にとっては逆に腹立たしい気もするんですけどね。
「嫌じゃありませんよ。私がお葉を選んだんですから」なんて瀬名ちゃんは返しますが……絶対、嫌に決まってるじゃないの!ここはまるで自分に言い聞かせるようにも聞こえましたね。それを額面通りに受け取って「そうか」なんて笑って、受け取った煎じ薬をゴクゴク飲み干す殿。
瀬名「苦手では?」
殿「精がつくんじゃろ?もう一杯!」
瀬名ちゃんはニコリと笑いながらも、殿が外を見た隙に、どことなく悲しげな表情を浮かべるのでした……。
この一連の瀬名ちゃんの描き方、某コミュニティでは「イマイチでした。有村架純さん、演技に迷いがあるように感じました」なんていう意見も目にしたんですけど。むしろここは、瀬名自身がすごく迷っている様子を演技しているわけですから「迷いがある」と感じたのならば、それこそ有村さんの演技が素晴らしく、リアリティが出ている証拠なんです。
2周目、3周目する余裕ない方。マジでこの初夜直前から10か月後のシーンだけでも、もう一度見返していただき、改めて有村さんの演技に注目してほしいところだと思いますね。
お葉の本当の好みの相手を聞いてハッとする瀬名。その真意とは?
そしてラスト。これは難問でした……。何がって、お葉の本当の好みを聞いた瀬名ちゃんの反応が、ですよ。
実は殿方が苦手だったということが判明して、側室の任を解かれたお葉。本当に恋をしてしまった相手である美代について、殿が「小柄で控えめで、かよわそうに見えて、実はしんの強いところが好きらしい」と伝えた後です。瀬名ちゃん、なぜかハッとして、ニコ~ッと笑ってましたね。
この瀬名ちゃんの反応の意味って、何なの……?実はSNSでも意見が分かれているところでした。それぞれ解説していきます。
1.「お葉のタイプ=殿」説
これは、お葉には「殿方が苦手」という事情はあれど、それさえなければまんま殿のようなタイプを好いていた、とする説ですね。瀬名からしてみれば、性別の事情さえなければ自分の側室選びに狂いはなかったという思いと、殿が自分で自分の特徴を口にしていながらそれに気づいていないことが可笑しくて笑ったと結論付けているようでした。
実際、殿は小柄なのか?演じている松本潤さんの身長は173cmとのことで、男性の平均身長よりやや高いくらいなんですけど。その周りにいつもいる、左衛門尉を演じる大森南朋さんが178cm、石川数正を演じる松重豊さんが188cmなので、比較的小柄に見えてしまうところはあると思います。
そして、やはり瀬名自身も殿のそんなところが好きなのには変わりないので、お葉に自分の気持ちを重ねたり、また自分自身の初恋の頃の気持ちを思い出したりして笑った、ということのようです。
2.「お葉のタイプ=瀬名」説
そしてもう一つが、瀬名自身を表しているという説。お葉が美代だけでなく、瀬名をも慕ってくれていたことに気づいたということですね。確かに劇中、瀬名が耳を触り、お葉がビクン!と反応した瞬間もありました。それも一つの証拠と言える気はします。
また、瀬名はお葉を自分が選んだ側室として見込みながらも、徐々に嫉妬の対象にしてしまっていました。そんな中で、お葉に対する嫌悪感すら芽生えてしまっていたかもしれません。
それなのに、そんなお葉が好いてくれていたのは殿ではなく、自分だったのなら。それに気づくと、瀬名自身の自尊心も回復します。また、お葉がそんな自分への忠義心から殿の側室を勤めてくれていたことに、改めて感謝の気持ちも湧き起こったことでしょう。
3.「お葉のタイプ=殿でも瀬名でもある」説
1と2はすでにTwitterや、他のライター・ブロガーさんも提唱している説だったんですけど。せっかくなので、僕の方でももう一つの説を唱えておきたいと思います。
1と2も内包するなんて欲張りな説だなぁと思われるかもしれませんが……より踏み込んで言うなら、殿や瀬名、そして美代のような侍女が「小柄で控えめで、かよわそうに見えて、実はしんの強い」という性質を持ちながら、この三河という国を守っていることに気づいたということです。
まだまだ弱小の国であり、織田とも対等なんだかよくわからない。少なくとも今川と戦うのにも劣勢で、ましてや武田なんて未知の領域。これから戦国の世をどう勝ち残っていけばいいのかもわからないながら、第9回では瀬名、殿に向かって言っていましたね。「厭離穢土、欣求浄土……汚れたこの世を、浄土に」「できるような気がします、なんとなく」と。
当時はまだ確信は持てていませんでしたが、そんな自分たちをお葉が好いてくれているなら。そして美代だけじゃない、たくさんの「かよわそうに見えて、実はしんの強い」者たちが三河を支えてくれているなら、きっと「厭離穢土欣求浄土」も達成できるのではないかと、瀬名の中での希望が少しだけ、確信に近づいた瞬間だったようにも思います。
そう言ってしまえば、「小柄で控えめで、かよわそうに見えて、実はしんの強い」……それはまるで、三河という国そのものの性質を指しているようにも思えてくるのではないでしょうか?
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