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2025年までに児童労働の根絶を目指す~子どもたちとチョコレートの未来を守るために~

チョコレートの原料となるカカオは、その約3分の2がガーナとコートジボワールで生産されています。

ガーナやコートジボワールをはじめとしたカカオ生産者の大半は、貧困層にあたる小規模な農園であると言われています。そんな中で、貧しさゆえに児童労働(※1)を余儀なくされている子どもは決して少なくありません。

バリーカレボーが行っているサステナブルな取り組み「フォーエバーチョコレート(Forever Chocolate)」は、「生産者の繁栄」「児童労働ゼロ」「自然を豊かに」「サステナブルなチョコレート」の4つの柱から成り立っています。

今回は4つの取り組みの中から、児童労働の根絶を目指す「児童労働ゼロ」について考えていきます。こちらの取り組みは国連の掲げる持続可能な開発目標(SDGs)「08.働きがいも経済成長も」のゴールに貢献します。

※1:本記事における「児童労働」とは、国際労働機関(ILO)が定めた基準に基づいた「児童労働」を指す

カカオ生産者における児童労働の実状

世界的なカカオの主要生産国であるガーナやコートジボワールなどでは、児童労働問題が発生しています。実際に、ガーナやコートジボワールにおいて、約156万人もの子どもがカカオ栽培のために児童労働をしている(※2)と推測されています。

2021 年 6 月に欧州委員会が発行した、コートジボワールとガーナにおける児童労働の終結に関する報告書では、地域レベルでの実施者間のさらなる協力が必要であり、全体的な制度構造の改善が必要だと言及されています。さらに、児童労働ゼロに向けた現在の取り組みは、現状の制度的支援システムに十分かつ構造的に組み込まれていないことに留意し、さらなるシステムベースでのアプローチを求めました(※3)。

バリーカレボーでは、主に家族経営で児童労働が発生している地域を含むカカオ生産者から、カカオやその他の商品を調達しています。あらゆる問題が絡む児童労働の解決策は、これらの地域からカカオの調達をやめることではなく、子どもが児童労働に関与するリスクを現場で評価、監視、是正することにあると考えています。

直面している問題のためにそれらの地域から調達をやめることは、経済と人権の状況を悪化させるだけです。バリーカレボーはどのコミュニティが危険にさらされているかを的確に把握し、貧困の緩和、質の高い教育の提供、適切な社会インフラと意識向上などを通じて、さらなる支援を強化しています。

※2:コートジボワールとガーナのカカオ産地における児童労働削減の進捗状況の評価
※3:ビジネスと人権に関する指導原則 国連の「保護、尊重、救済」枠組みの実施

2025年までに児童労働ゼロを目指すための取り組み

バリーカレボーでは、2025年までにサプライチェーンから児童労働を根絶することを目標にしています。

ここでは、具体的にバリーカレボーが行っている児童労働ゼロを目指すための取り組みについて紹介していきます。

システムの強化とリスク分析

バリーカレボーでは、児童労働の根絶を目指し「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」に基づき、データ主導のリスク分析やシステム強化などを実施しています。

また2020年にはNGO、政府間組織、業界と協力してコンサルタント会社Embodeと提携し、これまでの進捗について詳細な評価が行われました。その結果をもとに作成されたのが「児童労働ロードマップ」です。

児童労働ロードマップには、実際に行う計画内容やリソース、ステークホルダーとのエンゲージメントを導くため、2020年から2025年までの明確な社内マイルストーンが定義されています。

その一環として、2021年2月にはNGOやお客様と協議し、児童労働に取り組むための新たなアプローチを共有しました。さらには、業界全体にわたる人権に関する方針、手順、行動の協調的統合を監督する正式な権限を持つ人権委員会を設立しています。

コミュニティの設立

子どもを第一に考えた取り組みは地域レベルから始まり、そして子ども、親、家族、コミュニティのメンバーと協力しあうことで、自らの成長を助け永続的な変化をもたらす強固なコミュニティづくりにつながります。

私たちの取り組みには、すべての関係者が協力し合うためのしくみが必要です。例えば、コミュニティの行動計画の策定、家庭を支援するための地方自治体の能力強化、生産者のエンパワーメントを強化するための地方・地域の擁護活動強化などが挙げられます。

実際に行っているプログラムでは、児童労働の防止と子どもの権利保護を目的に、地区・地域の政府機関、社会福祉の専門家、コミュニティプランナー、教師、地元の宗教指導者などが協力し合っています。

例えば、モニタリング時点では特に問題がなかった家庭の収入源の変化や、新型コロナウイルスによる学校閉鎖といった問題が、児童労働のきっかけとなることも考えられます。こうした児童労働のリスクが潜む可能性を考慮し、包括的に児童労働撲滅に取り組むためには、コミュニティを中心としたアプローチが不可欠なのです。

個別のモニタリングとフォローアップ

バリーカレボーでは、児童労働問題の解決に効果的に取り組むにはまず児童労働の場所を特定することが必要だと考え、児童労働の事例を監視し、特定することを行っています。

2020-21年度には、21,258件(7%減)の児童労働の事例を発見しました。

発見した児童労働に対しては、家族との関係構築をしたうえで子どもや家族に対して個別の改善策を実施しています。

国際カカオ イニシアチブ (ICI) (※4) の勧告によると、改善策の実施後、児童労働の改善を確認する際には2回連続で訪問し、児童労働が行われていないことが確認された場合のみ「改善された」とみなすことになっています。

もし、いずれかの訪問時に児童労働が発見された場合には、その家族や子どもの状況に合った新たな改善計画を立て、完全に改善されるまで3カ月から1年半継続してフォローアップを実施します。

※4:サハラ以南のアフリカの小規模農業部門における児童労働監視システムの有効性レビュー

ココアホライズンとの取り組み

2015年にバリーカレボーが立ち上げたココアホライズン財団は、コートジボワールやガーナをはじめ、カメルーン、ブラジル、インドネシア、エクアドルのカカオ生産者の生計を向上させるとともに、子どもたちと自然を守る活動を目的としています(※5)。

現在ではバリーカレボーから独立した機関となり、バリーカレボーに加えて第三者機関とも提携し、生産者の卒業システムの導入や個々のニーズに合わせた指導も行っています。

またカカオ生産だけにとどまらず、家畜の世話や石鹸の製造、野菜の栽培などで収入を得られる支援を2,000人以上もの方々へ行いました。他にも児童労働を撲滅するコミュニティの取り組みや、女性のエンパワーメント、子ども達の保護など、幅広く活動しています。

※5:ココアホライズン 2020/21年度中間レポート

子どもの教育に関する支援

教育を受けられず、児童労働の現場に連れられていく子どもたちもいます。バリーカレボーでは、児童の教育を支援するために以下のような改善策にも取り組んでいます。

・子どもへの学用品支援(ガーナ)
ガーナのアシャンティ地方のベクワイ市にある小学校では、効果的な教育と学習を促進するための学習用品がほとんどありませんでした。そこで、学校に必要な新品の靴、本、ブックバッグ、鉛筆、ペン、新しい制服などが含まれたキットを提供しています。

これらの学習キットは、両親が学用品を準備することが難しく通学が楽しくなかった子どもたちが、学びに対し前向きになり、より良い教育を受けるために役立っています。

・学校への復帰を奨励(エクアドル)
新型コロナウイルスによるパンデミックのため、エクアドルでは2年間も学校が閉鎖されたままでした。オンライン学習は部分的に適用されていましたが、インターネット接続が不十分でコンピューターが不足している農村地域の子どもたちも数多く存在していたのです。

ユニセフでは、パンデミックの際に少なくとも90,000人の学生がエクアドルの教育システムから離れざるを得なくなったと推定しています。

その後いくつかの学校が再開されましたが、学校には机、椅子、建物などが不足していました。私たちは、学校が再び生徒たちを受け入れられる状態になるのをサポートするためにイベントを開催しました。また学校で必要な学習キット、机、本、遊び場用の木、校舎の塗装などを寄付することで支援しています。

児童労働に関するモニタリング結果

2021年度は、前年度に発見した児童労働のうち、25,486件(+412%)の児童労働が改善中にあります。大幅に改善数が増加しているのは、2020年度に比べてより気軽にコミュニティや家族のもとへ足を運び、より迅速に改善活動を行えるようになった結果です。

また、連続2回のモニタリング訪問によって、児童労働を行っている子どもが発見されなかった、児童労働が改善されたとみなされた数は362件(+8%)となっています。

教育に関する支援の甲斐もあり、現地では子どもを学校に通わせる生産者の数も増加しつつあります。

さらに、モニタリングが可能となった農民グループの数も前年度に比べて増えています。実際に、ガーナ・コートジボワール・カメルーンの農民220,878人を含む237人(+116%)の農民グループを対象にモニタリングが実施されました。

そのうちの61%はバリーカレボーが直接、児童労働に関するモニタリングと改善活動を行っています。

まとめ

児童労働ゼロに向けた取り組みはカカオだけに限らず、乳製品、パーム油、ナッツ類、サトウキビ糖など、他の原材料にもおよんでいます。それぞれの原料のサプライチェーンは地域によって異なることから、独自のサステナビリティの課題があります。

バリーカレボーは2020/21年度も引き続き、サプライヤーに対して基準となる児童労働デューデリジェンス(※6)の要素を改善し、原材料調達時に児童労働リスクを特定し、対処するためのロードマップと目標を作成するよう課題を提示しました。

2022年には児童労働リスクに関する手法などの改良により、第三者サプライヤーから調達したカカオとカカオ以外の原料の生産量の25%が、児童労働のリスクに適切に対処しているものと考えます。バリーカレボーは、今後も児童労働問題の改善につながる活動を継続していきます。

※6:リスクを特定し、それに対処するために取る行動

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