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ペアリングイベント2024 / 3rdのはなし ①

では一皿目のカクテル。
いつも通り、メニュー構成はリンクを参照ください。

このイベントの個人的ハイライト。
グラス先のメニューです。とりあえずレシピ行きましょうか。

ミント香るブランデーとラベンダーのカクテル
<stir / cocktail glass>
ブランデー(サントリーブランデーX.O.)30ml
ラベンダーティー 30ml
自家製ラベンダービターズ 3dash
自家製ハニーシロップ 2tsp
シュガーシロップ 1tsp
ミントリキュール 1tsp(グラスリンス)

このレシピのどこに苦労するのか?と訝しむでしょう。
僕だってレシピ見ただけならそうなる。
まあしかし苦労ってのは表から見えないもんですよ。それを開陳しようってんだから野暮この上ないと言えなくもないこの解説シリーズ。
だけど自分の備忘録も兼ねているのでそこら辺はご容赦頂きたいところです。はい。

さて最大のポイントは「グラスから提案する」というところ。
つまり、決めてしまったら絶対に手を入れてはならないのだ。
レシピを1ml、1dashも変えずに作ること。作らねばならないこと。書くまでもなく、これに合わせて皿を作ってもらうのだから。
決定することの重さ、決断することのストレスはこれなのかと思い知りました。
全て自分次第。自分がYESと言えばYES。NOと言えばNO。

まずは「グラスからどういう提案をするか?」となるわけだけど、これは素直に「飲んでもらいたい!」という偶然の産物から始まった。
それはシンプルな、コニャックに自家製ラベンダービターズを落としたもの。
なぜそうしたか覚えていないのだけど、なんでかコニャックに落として飲んだ。それが実に香り高く美味しかったのだ。
もちろんこのままでも良かった。ビターズ落としただけでも定義上カクテルにはなるし、事実、そういうものもカクテルブックに載っている。しかしそれではあまりに芸がなさすぎる。
こういうレシピ、個人的にはキュレーションではないか、と考えてしまう。だからもう少し手を加える事にした。
とは言えここに手を入れるというだけでは余白があり過ぎる。なにか枠を作らないとどうしようもない、ということで全く好みでない手法、曖昧なイメージ…つまり「~をイメージして作りました」というアレをすることにした。
この文言で作られたものでイメージ喚起に繋がる何かを感じ取れたことは一度としてない…と、この話をし出すとこれで1本以上書けるだけ言いたいことがあるので置いておこう。

ラベンダーの印象は秋。この香りは秋を想起する。
でも調べてみると夏がピーク。しかし適温であれば春と秋に咲く花らしい。知っていたわけではないけどずっと秋の印象。
9月下旬の開催なので残暑~初秋みたいなイメージ(しかも気温だって落ち着いているはずがないという予測)から、そこをイメージにしようと。
では残暑のイメージは?
去りゆく夏。晩夏なら葡萄や梨だけど梨は二皿目で出てくるし、葡萄は使用ブランデーの原料で使われているから他のものを使いたい。ならまだ暑さを払う、清涼感をもたらすミントが良い。

最初はモヒート的なサーブスタイルを考えたけど、どうしてもミントが強くなる。そこを補正しようとするとなんだか曖昧になる。
そこで夏と秋、どちらに重きを置くか?で秋をチョイス。
ミントが香りつつもメインはラベンダーとしたかった。
まずはミントをマドル(潰す)してみたりシェイクしてみたりした結果、フレッシュではなくリキュール(not 自家製)にしてグラスをリンスする程度が綺麗な着地点になった。

次はラベンダーとコニャックのバランス。
改めて飲んでみるとコニャック(ヘネシーVS)がいまいち噛み合わない。
同じくブランデーなら、とグラッパを合わせてみるもやはり違う。たまたま目についたサントリーブランデーX.O.を試してみたらハマった。意外過ぎる発見である。
正直、菓子のアンビベとかフランベ用程度にしか考えていなかった、小馬鹿にしていたものがカクテルにハマるなんて想像もしなかった。
色眼鏡で見ることは視野を狭めることと反省しました(同じようなことを今後も繰り返すとは思う。ヒトは学ばないから)。
ともあれこれでまずは土台が固まった。

次はミキサーである。
このままでは全てアルコールというストロングスタイルなので、和らげつつバランスを崩さないアイテム…と考えて素直にラベンダーティーを作る事にした。
試作を繰り返した結果、淹れたまま長く浸漬させるとローズヒップのような酸味が取れるまでになるのを発見してそれを使用。
そしてこのままだとドライ過ぎるので甘味。
シンプルシロップだけだとのっぺりした甘味になるので、ラベンダーと相性のいいハチミツを使う。しかしそのままだと主張が強く、粘性も強く舌へのプレッシャーが大きいので加水して伸ばした。
甘味に関しては経験から作ることができるので悩むこともなく分量は決められた。
これにて完成。

とにかく苦労させられた1杯。
最初に手掛けて出来上がったのは最後。

ちなみに製作途中でこれはBee’s KneesとStingerのミックスツイストだと気付いた。そこからアプローチが柔軟になれたんじゃないかと思う。

いちおうBee’s KneesとStingerのレシピ置いておきます。

Bee’s Knees <shake / cocktail glass>
ジン 30ml
レモン 15ml
ハチミツシロップ 15ml

Stinger <shake / cocktail glass>
ブランデー 45ml
ミントリキュール 15ml

初回から長くなってしまった。
次はモクテル1杯目。


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