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『木曜日にはココアを』

『木曜日にはココアを』を読みました。

『木曜日にはココアを』は青山美智子さんによる温かな人間ドラマを描いた作品です。

あらすじ

舞台はとあるカフェ「マーブル・カフェ」。ここでは毎週木曜日にココアを注文する女性がいます。
彼女の存在をきっかけに、日常の中で繋がりを見つける登場人物たちのエピソードが交錯していきます。 本書は、主人公たちが抱える悩みや問題をそれぞれの視点から描き、彼らが少しずつ心を開き合い、新しい一歩を踏み出していく様子が描かれています。読み進めるうちに、登場人物たちの絆が広がり、読者も温かさと希望を感じられる構成です。

この本は、12の短編で構成された物語が描かれており、それぞれに赤や青など色のテーマがついています。また、それぞれの物語は一人一人の人生に焦点を当てています。

登場人物同士が互いに影響し合い、気づかぬうちに支え合っている様子が感動的に描かれていて、とても魅力的でした。

以下、特に印象的だった物語の感想を述べていきたいと思います。

感想

3 のびゆくわれら(ピンク)

この物語の主人公は、とある幼稚園の先生である女性です。薄給の割に激務な業務、厳しいお局さんのいる職場にストレスを抱える毎日を過ごしていました。そんな中、とあるオーストラリアの情報誌に載っていた「ワーキングホリデー」の情報が目に止まり、仕事をやめることが頭をよぎります。

その考えから今の仕事に踏みとどまらせてくれたのは、お局さんと感じていた先輩先生の存在でした。お局さんがいつも厳しくする理由は、自分が経験した昔の嫌な経験を、誰にもしてほしくないためだったのです。

その理由に気がついたとき、主人公は自分の今の仕事の重要さと向き合い、やりがいを見つけることができたのです。 

今の自分の仕事の状況や心境と重なるところがあり、思わず涙が溢れてきました。

4 聖者の直進(青)

この物語の主人公は、3つ目の短編小説の主人公の先輩先生です。

彼女には長年仲良しの同級生がいて、その同級生の結婚報告を受けるところから物語がスタートします。

同級生の結婚する予定の相手は、離婚調停中であることを知り、彼女は強く反対します。しかし、どうしても結婚したいと言う同級生に対して冷たい態度をとってしまい、しばらく疎遠になってしまうのです。

その後彼の離婚が成立したことを受け、再び会うことになったのですが、そこでもなかなか素直になることはできません。

その様子を見ていたマーブルカフェの店員さんが、相手の身になって考えることの大切さを教えてくれました。

「まっすぐな道を選ぼう」としてきた主人公にたいして、「道がまっすぐかと言うよりも、曲がりくねった道をまっすぐ歩こうとしているならいい」
というアドバイスをしたのです。 

その言葉を受け、素直に同級生の結婚をお祝いすることができたのです。

自分が正しいと思っていることを押し付けてはいけないけれど、その正しさに誰かが救われるときもあって、それが二人の関係を長く続かせてきた理由なんだと思いました。

素敵な友情の続きをもっと読みたいと思わせてくれました。

12 恋文(白)

この物語の主人公(彼女)は、1つ目の短編小説の主人公(彼)の想い人です。そして、彼女もまた、彼のことを想っています。

お互いに想い合っているのにもかかわらず、お互いにその想いに気がついていません。

彼はマーブルカフェの店員で、彼女はそのカフェのお客さんです。彼女は木曜日に決まってココアを注文します。

その理由は、ある日彼がお客さんの子どもに対して、
「お熱いのでお気をつけください。」
と言ったことがきっかけでした。

子どもにも丁寧に接する彼の姿と、彼の発する声に、完全に惹かれてしまったのです。

お互いにひっそりと想い合っていましたが、ついに彼女はラブレターを書くことにしました。

そのラブレターを渡す際に、
「お熱いのでお気をつけください。」
と言う妄想をするところで話が終わりました。

いいーーーーーーー!

1つ目の短編小説の話が12話で完結するという、なんとも美しい物語でした。


終わりに

この本は、シドニーが舞台とされているストーリーが多く登場します。

実はこの本は、シドニーの情報誌『月刊ジャパラリア(Japaralia)』公式サイトで連載された小説『12 coloured Pastels〜十二色のパステル〜』を改題、加筆修正し単行本として刊行された、同名作品を文庫化したものになります。



異国に想いを馳せながらも、どこか懐かしく、心をほっとさせる優しい物語が楽しめる一冊です。

読後は、まるで温かいココアを飲んだときのような心地よさが残ります☕


読んでくださりありがとうございました𓅓

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