『長篠合戦の世界史:ヨーロッパ軍事革命の衝撃1500~1800年』ジェフリー・パーカー著、同文舘出版、1995

「いまは兵士の世紀だ」。イタリアの詩人フルヴィオ・テスティは、1641 年にこう記した。だがヨーロッパ史上、そうでなかった世紀など、はたしてあっただろうか。{ 一八一五年以前で、一〇年間戦争がなかったことは一度もなかった。紀元後七〇〇年から一〇〇〇年までのあいだでは、現存するヨーロッパの年代記をみると、どこかで紛争がおこったと記録されていない年を捜すのがむずかしいほどである。実際に、この時代の戦時と平時の比率は五対一であった。一八世紀にヨーロッパ大陸が完璧な平和を保てたのは、わずか一六年にすぎない。こうしてみると、ヨーロッパは古来戦争に明け暮れていたようにみえる。だがなかでも近世は、目立って好戦的な時代であったといえる。一六世紀に完璧な平和が訪れたのは一〇年に満たない。一七世紀ではたった四年である。ヨーロッパの戦争の頻度を調査した最近の研究によれば、一五〇〇年から一七〇〇年までの期間は「戦期が占める割合(九五パーセント)、戦争勃発の頻度(およそ三年にひとつ)、戦争の平均持続時間、戦争の地理的範囲、規模、いずれをとってももっとも好戦的な時代」であったという。一六世紀には、フランスとスペインはほぼ絶えることなく交戦状態に
あった。一七世紀では、オスマン帝国、オーストリア・ハブスブルク家、スウェーデンが三年のうち二年、スペインは四年のうち三年、ポーランドとロ
シアは五年のうち四年、どこかと戦争していた。

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