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個展までの毎日、のこと。

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2024年12月28~30日に行う岐阜市での言葉の個展、「痛い、心臓、」までの毎日のことを綴ったエッセイ集です。
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2024年11月の記事一覧

#28  詩「たからもの」

#28 詩「たからもの」

たからもの、たからもの、やらんよりマシでしょう、言っても言わなくても、そうだよね。言葉の断片だけを切り取って、それをたからものみたいにしまっておきたくて、大事に大事にしまっておきたくて、自分のなかの異常性みたいなものを、わたしだけのものにしておきたくて。だってそうでしょう、だれかに渡したら、その人が異常になってしまうでしょう。だから放っておいてよ、わたしのことなんか。笑顔の後ろに隠れた感情も、たか

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#27  詩「明日」

#27 詩「明日」

明日になれば、明日になれば、嫌だったものも好きになって、満腹だったお腹も空いてしまって、眠かった目も冴えてしまって、そうやって変化していくのだもの、きっと明日こそは、明日こそは。

この手綱をわたしは持ち続けるのだろうか、それともまたすぐに手放すのだろうか、1ヶ月後のことなんてわからないけれど、なにか変わる予感がした。予感。

明日、また明日が繋がっていくとき、あの歌をまた聴き直すのだろうか。そん

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#26  冬を好きになる方法

#26 冬を好きになる方法

冬になった。きっとこの寒さは、もう冬だ。冬になると決まって「あなたの手はあったかいね」と言われる。理学療法士だから人の肌に触れることが多くて、余計に言われる。冬が来たんだなあ。

冬になると決まって切ない曲が聴きたくなる。最近ハマっているのは、TikTokで話題になっていたLeinaという19歳のシンガーソングライターのアルバム「愛の産声、哀の鳴き声」。特に、喧嘩別れ、Dounuts、口元のえくぼ

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#25  孤独

#25 孤独

この曲を共有したいとか、この映画を観てほしいとか、一緒に好きなスポーツを観戦したいだとか。自分が気に入ったことをあの人にも共有したくなったとき、わたしにも愛おしい存在がちゃんとできたのだと嬉しくなる。言葉を交換するよりも、共有するということのほうが気持ちが乗っているような気がして。

わざわざ予定を空けて会いにいくのもそうで、言葉で伝えることよりも、想っていることが伝わる。個展はすでに10人以上の

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#24  感傷人間 / ZINE掲載の詩「強がり」

#24 感傷人間 / ZINE掲載の詩「強がり」

一度死にたいという感情を味わって以来、「消えたくならないように、自分を表現したい」という気持ちが強い。個展で展示する詩「感傷人間」の通りの人間だ。傷つきやすくて、陰が多くて、自信がない自己肯定感の低い人間。誰かががいることでやっとわたしという形を纏うことができる。

個展開催の一番の目的もきっとそれで、表現を通して生きる意味を見出しているのだと思う。わたしが生きた証を残すことで、生きている実感を得

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#23 どうでもよくなる

#23 どうでもよくなる

ひとつのことを考えて、考えすぎて、急にどうでもよくなることがある。あれだけ熱心だったのに、ぷつっと糸が切れたみたいに。熱しやすくて冷めやすいとはこのことだ。典型的なそんな人間。ひとつへのこだわりが永遠に持てない。常に感情は揺らぐし、不確定なものばかりで、そんな自分だからなにかにすがりたくなるのだろうと思う。

毎日仕事をして、帰ってきてご飯を作って洗い物をして、あるときは夜のマックへ行って遅くまで

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#22  今日の日記 / ZINE エッセイ「朝7時のコメダ」

#22 今日の日記 / ZINE エッセイ「朝7時のコメダ」

月曜日、なんだか身体が軽くなってきて、力がうまく入らなくて、それでも制作をしたくて旦那と夜のマックにいく。苦手な数字と向き合って、売り上げ戦略を立てて、ZINEの単価を調べて、早々にPCを閉じる。夜に聴いていたプレイリストを流す。旦那はアドバイスをしてくれたあとは、制作をするわたしを前になにもいわずにそばにいてくれている。

毎日一緒にいること、会えること、それってすごく奇跡に近い。何も言わず、一

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#21  個展で販売するZINEについて

#21 個展で販売するZINEについて

やっと念願のZINEが完成しました。3年前から書き溜めてきた詩と、ZINEのために書き下ろしたエッセイを掲載しているのと、個展で展示する詩の解説エッセイを書きました。

初めてのZINE作りで、想像以上に細かい作業が多くて、何度も挫けそうになりました。ほとんど感覚で、つたない手つきで、なんとか完成させることができました。

このZINEでは、個展のテーマ同様「1人きりであること」を主題としています

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#20  詩「おとなになることを」

#20 詩「おとなになることを」

ひとりきり、自分の感情が大切で、大切すぎて、
この気持ちを言葉で伝えたくなったとき、
そこにはあなたがいるのでしょうか。
この感情は世界で初めてのものだから、
一緒に名前をつけてくれませんか。
行きたいところに行って、笑いあって泣きあって、
そうして一緒におとなになることを
やめちゃいませんか。

#19 個展で目指す、「一人きりであること」

#19 個展で目指す、「一人きりであること」

個展の製作を始めてから、「一人きりであること」について向き合い続けている。わたしたちは交わることができても、溶け合うことはできない。完全に孤立した「個」であって、一人と一人で二人である。そう思うと、感情も思考も言葉も、一人きりのときに生まれたものであって、わたしだけのものである。それはすこし悲しいことでもあって、寂しいことでもあって、だから言葉を使って目の前の人に伝える。

わたしはずっと一人きり

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#18 つたないわたしが企画する個展

#18 つたないわたしが企画する個展

人生で初めてZINEを作っている。知識がなさすぎてなにもわからない。見え方とか、読後感とか、なにも想像がつかない。かなりピンチ。いろんな本を引っ張り出して、本ってこうやってできていたのかなんて、散々本を読んできたくせに今更なことを思う。本を作る人はすごい。これが完成したとき、我が子のように大切に思うのだろうという想像だけはつく。

個展をやると宣言してから今まで準備をしてきたけれど、自分の想像力の

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#17 気分屋についての見解

#17 気分屋についての見解

わたしは気分屋で、とても気分屋で、それがゆえに世界を振り回しまくっている。

わたしも意図して気分屋をやっているわけではない。昨日行きたいと思っていたカフェに、今日朝目覚めると行きたくなくなっているし、元々入っていた遊ぶ予定が近づくと急に嫌になることだってあるし(ごめんなさい)、だから予定を立てるのがすこぶる大変なのである。

気分屋は約束を守ることが苦手である。約束をした瞬間は100%誠実な気持

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#16 リフレッシュ

#16 リフレッシュ

昨日の感情から一夜明けて、今日は朝からけろっとしている。喫煙可能の喫茶店で優雅に制作をしている。午後からも予定がある。外は大雨だ。やっと秋らしくなってきて、空気が美味しくて、雨が気持ちよくて、いつもだったら落ち込みそうな天気でも気分はうきうきしている。最近はなにかが変だ。自分の感覚がちょっとずつずれていて、でもどこか俯瞰して物事をみている。依存をしない、執着をしない、したいことだけをする。1年前の

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#15 わからないなにも

#15 わからないなにも

いつもみたいに仕事を終えて、1人制作をしていたら、急に自分だけの殻に閉じこもりたくなる衝動に駆られた。ぜんぶやめて、ぜんぶの関係性を絶って、わたしだけの世界に行ってみたくなった。もちろんそんなことをしたら心配かけるのでしないけど、なんだこれはなにが起きているのだ、みたいな気持ち。でも無気力なわけではない。制作はちゃんと進む。原稿用紙にエッセイ書けたし、当日のフライヤーのデザインだってやった。でもな

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