【富士山の見えない秀麗富嶽十二景(山エッセイ)】
涼しさを求めて滝子山へ登った。
標高1,620mの滝子山では、高山のような涼しさはないものの山頂への登山道がほぼ沢沿い・滝沿いを通っているおかげで涼しい山登りができる。
急峻な地形を這うように沢が連続していて、所々切れ落ちた岩場を這うように滝が続いている。沢も滝も小さなものがほとんどだけど流れも早く見応えもある。沢の水に手を浸してみると、山登りで火照った身体に心地よい冷たさだった。
ずっと並走する沢の流れを眺めながら歩くのは気持ちがいい。ただ、おかげで登山道をまともに見ず単純な道を何度も間違えて危うく遭難するところだった。
途中、地図上で難路とされているポイントがあり、ここでは滝のすぐそばにまで行ける。水しぶきを感じるくらいに近付くと空気がひんやりとしていた。夏の暑さを忘れるような涼しさがある。ただしそこから登る道はすっかり崩れていて何度も滑落しそうになった。
ところどころ苦労はしたものの、涼を求めて滝子山に登ったのは正解だった。天気もよく、最後には山頂からの景観も楽しめた。
唯一、心残りは山頂から富士山が見られなかったこと。滝子山は大月市の制定した秀麗富嶽十二景に選ばれており、冬のような空気の澄んだ時期であれば絶好の富士山展望スポットになる。冬の場合は沢沿いを歩くのは寒いばかりで心地よさは減るだろうけど。あちらを立てればこちらが立たない。魅力を全部味わうのは難しい。
また新しい山に登ります。