【今も見えないユーシンブルー(山エッセイ)】
神奈川県の山北町の奥深く、丹沢湖の上流にユーシン渓谷はある。
ユーシン渓谷は玄倉川の流れる谷で神奈川県北西部、丹沢の秘境。名前の由来は水が勢いよく湧くという意味で「湧津」と名付けられたとか。古い地図では「涌深」ともカタカナで「ユウシン」とも書かれているので判然としない、いわゆる「諸説あり」の地名。
ユーシン渓谷は落石の多い地帯で、大規模崩落があり道路の法面工事が完了するまで車も歩行者も通行止めになっていた。工事の開始はたしか2018年で、工事が完了したのが2022年4月。5年かけてようやく通行止めが解除された。
通行止めが解除されたらユーシン渓谷を歩いてみたいと何年も思っていた。丹沢湖の上流、ユーシン渓谷にある玄倉ダムは川の水が堰き止められて、不思議と真っ青な水が見られるらしい。水が何故青いのかは、水に含まれるマグネシウムが影響しているのではと言われるもののハッキリしない。これも諸説あり。
理由は、別にどうでもいい。見てみたいのはユーシンブルーと言われるほどの青い水の色。丹沢湖の水を大野山から眺めて見た時、不思議と水が緑色に見えた。玄倉ダムの水も緑に見える時があるらしいが写真で見たのは透き通るような青色。
これはぜひ見てみなきゃと、工事完了で通行止めが解除されるのを待っていた。今年の4月に通行止めが解除されたのを知り、早速ユーシン渓谷に行く計画を立てた。
丹沢湖までバスでアクセスし、ダムまで往復約20キロ。山道を歩き慣れているのだから20キロくらいのウォーキングならなんてことないはずだ。と、バスを調べてコースタイムを調べて順調に計画が立った。
通行止め情報を念の為あらためて確認した。現在も落石は多いものの、通行止め自体は解除されている。それなら歩いてアクセスはできる。
が、山北町のホームページを見たときに見落としていた一文を発見した。「ユーシンブルーは現在見られません」と。
どうやら玄倉ダムに水を貯めていないので、ユーシン渓谷まではアクセスできるものの青い水は見られないらしい。気付かずに行かなくてよかった。もしも期待したまま10キロ歩いてダムまで行っていたら、帰りの10キロが辛かったに違いない。
計画は白紙に戻すしかなかった。うまいこと計画通りにはいかない。今はまだ見られないけれど、噂に名高いユーシンブルーはいつか必ず観に行きたい。