随想好日 第三十二話『ひら鯵の混布〆』
ふん。なんだか鬱っ気が強く出ているのでなんにもやる気にもならず、二日ほど風呂に入る気にすらならぬのである。
どうしたものかと思案をするのは野暮デアルカラして、買い物にでも行って旨い魚でも食ってやるべしと相成った。
鯛にするか鱈にするか……、口の按配は鱈フライト云っていたのだが、なにやら鱈がえげつなく高いので、鱈はやめた。
すると、活きの良さそうなひら鯵があるではないか。値段も手ごろ、型も申し分ない。口の中はこの瞬間にひら鯵の昆布〆に変わった。
しばらく包丁仕事をしていなかったので、我が腕と同様に包丁にも錆が廻っていたのだが、どうにも研ぐという作業が面倒なのである。紙やすりでサラサラと錆だけ簡単に落とし、アルコール消毒して始末をつけた。
さて、頭と内臓を落とし、尻尾を落とす。姿作りであれば違う行程になるが、自分で食べるものにいちいち姿はいらないのである。
簡単に鱗を処理してから、頭と内臓、尻尾を掃除する。
アジ特有のせいごといわれる皮のウロコを削る。尻尾の方から頭に向けて包丁を入れるので、怪我をしないように、キッチンタオルなどで押さえながらさっくりと入れる。
ふん。こんなもんだろ。まぁ、言い按配に三枚にはおとせた。次に腹の掃除をするのだが、ここから包丁は中出刃から柳に替えるのである。
八寸の柳ぐらいが素人には丁度良い。
綺麗に腹を掃除したら、骨抜きで中骨をあたる。逆寝かせるように引くと中骨は切れることなく抜ける。この掃除をしておかないと、食べた時に小骨があたって具合が良くないのである。
魚の身を上に向けて、皮と身のところに切り込みを入れ、そこから皮を引き落とす。久しぶりにやったので、あまりきれいには出来なかったのがムカつく。美しくない。腹が立つ。
さて、予め酒に浸しておいた昆布をキッチンタオルで綺麗にふき上げ、鯵の冊に振り塩を軽く打つ。後にふきあげた昆布を載せる。そして挟む。
ここで、柚子やスダチなどがあれば一緒に挟んでも風味が立って美味しくなるのである。
本当は、キッチンタオルは無くても良いのだが、昆布のふき取りが足りなかったようなので、水分を吸収したいのでキッチンタオルを上から巻いて、ラップで締めあげた。
さて、これで完成。
このまま冷蔵庫で寝かせて概ね2~3時間たったころに昆布を外す。
昆布を外さないと、昆布からの雑味が魚に移り、本来の甘みや旨味の効いた昆布〆にはならないので気をつけたいところ。
必ず、三時間を限度に昆布からは外すことをお勧めする。
ふん。夜の飯が楽しみである♬
生姜をすっておこう。
晩飯前には風呂に入っておくことは書くまでも無いとは思うのである。
世一