白虎鯛雑炊
鯛茶漬けってありますよね。
鯛の刺身を乗せたお茶漬けですが、ふと考えた。後からお茶かけるのなら、最初から煮てはどうか。
ということで鯛雑炊を作りながら、故郷の福岡と元白虎隊士の意外な関わりや大学というものについて妄想した記録。
鯛の刺身 1柵
柚子胡椒 小匙1
卵 1個
海苔 お好みで
生姜 1欠け
胡麻油 大匙1
醤油 大匙2
味醂 大匙2
摺り胡麻 たっぷり
ご飯 1.5合
水 200cc
今回も玄米を美味しく食べるレシピ。
幕末、なくなってしまった幕府の代わりとばかりに一方的に悪者にされて官軍を自称した薩長に攻められた会津。
自分達の故郷を守るために武士達は年齢問わずに総動員。
朱雀、青龍、玄武、そして白虎という四神の名を冠した部隊が編制。
もっとも有名な白虎隊は数え齢十六から十七歳の子弟で編成。最初は予備兵力でしたが、戦況が悪化するにつれて彼等も前線へ。
一番隊は殿様、松平容保の護衛。
二番隊は戸ノ口原の戦いで敗走。負傷者と共に郊外の飯森山に落ち延びる。
そこから鶴ヶ城から煙が上がるのを見て落城したと思い、自刃を図った。と言われてきましたが実際はそうではなく、城へ入るべきかを議論した末、城へ入る前に捕まるようなことがあっては武士の恥として、虜囚の辱めを受けるよりは潔い最後を遂げることを選んだと言われる。
こうした最後の様子は喉を突いたものの、唯一命を取り留めた飯沼貞吉により伝わった。
明治、大正、昭和まで存命だった飯沼が重い口を開いたのは晩年のこと。
日清戦争に出征した時、ピストルの携帯を命じられたが、
「自分は白虎隊として死んだ身である」と応えて断ったとか。
飯沼以外の隊士が皆、玉砕したということではなく、自刃したのはあくまでも二番隊。他にも生き抜いた者がいた。
白虎隊に関わった者で特筆すべき人物が山川健次郎。
慶應四年(1868)会津が攻められた時、健次郎は数え齢十五でしたが白虎隊に加わる。
本来十六、十七歳が白虎隊士たる条件ですが、既に人手不足ということか。
しかし十四、五歳では鉄砲担いで戦わせるのは体力的に無理があるということで十六に満たない者は外される。
だからと言って安穏としていられる筈もなく、女子供も籠城戦に加わる。
健次郎の兄嫁は城に撃ち込まれた砲弾に濡れ蒲団を被せて不発にしようと図りますが、間に合わず炸裂して落命。
もはや降伏しかないという局面、会津の血や魂を後世に残そうと二人の若者を逃がすことに。健次郎はその一人に選ばれる。ただ、これには異説があり、降伏後、謹慎している時に脱走したとも言われる。
いずれにせよ、健次郎達の身柄を預かったのは長州の奥平謙輔。
奥平は会津藩士、秋月悌次郎と友人だった故。所属している会津と長州が敵対しても個人の義や友情は別ということか。
優秀だった健次郎は明治四年(1871)国費留学生に選ばれて渡米。
米国に渡る船中で初めてカレーライスを食べた日本人と言われるが、実際には米だけ食べてカレーは残したとか。スパイスに慣れていない当時の日本人では当然な反応?
エール大学で勉学。更に英語を身に付けるために日本人がいない田舎町に居住。
何しろ大学の講義は英語ですから、まずはそれが理解出来ないと話にならない。兄嫁を始め籠城戦で死んだ人達、白虎隊の戦死者達を思い浮かべて死に者狂いで勉強。
武では敗れたが文で会津の意地を見せるという意気込みだったのでしょう。
四年半で大学卒業、物理学の学位取得。
帰国後、東京開成学校(後の東大)教授補、二十六歳で日本人初の物理学教授に就任。
明治三十四年(1901)に東京帝国大学総長に就任。
明治三十七年(1904)には貴族院議員に。この年に日露戦争が起こると、
「一兵卒でいいから従軍させろ」と陸軍に掛け合ったとか。
国家の危機に血が騒いだか。
戦後、政府を批判した教授が処分された事件を受けて、東大総長を辞任。
明治四十年(1907)安川電機の創業者である安川敬一郎が明治専門学校を福岡に設立すると、それに協力。初代総裁に就任。
この明治専門学校が北九州市戸畑区にある九州工業大学の前身。
子供の頃、この大学の近くに居住。私は理系ではないので此処に入学など出来ませんでしたが先月、福岡に行った際に久し振りに行ってみた。
その後の健次郎は九大や京大総長も歴任。東大総長に再就任。
東大総長の在任期間は合計で11年11ヶ月。これは最長記録。
物理学者ということから現実主義者で、大正時代に起こった福来友吉が行った御船千鶴子による千里眼事件にも懐疑的。この事件が小説そして映画『リング』の元ネタ。
山川健次郎は決して個人の栄達だけを考えていた人物ではなく、会津側から見た明治維新を『会津戊辰戦史』として纏めていた。死後に出版されたその本では旧幕府側を『東軍』新政府軍を『西軍』と表記。一般的には賊軍、官軍と言われていた時代にです。決して会津は賊軍などではないとの矜持を持っていた。
海苔を適当に千切って乗せた。
煮込んだことで玄米が更に柔らかくなる。玄米は2、3日水に漬けて発芽玄米にしてから炊くと穀物の時にはなかった栄養が出てくる。
一説には発芽毒があるという妄説がありますが、抗酸化物質が豊富でストレス軽減効果があるGABA、EやB1等のビタミンも含まれる栄養価高い玄米を食べさせまいとする陰謀です。
昔から食べていた玄米から遠ざけることで、日本人から本来の力を発揮出来なくさせるためでしょう。
鯛は最後に加えたことで少し生っぽさを残している。鯛からはタンパク質だけではなく糖代謝機能があるビタミンB1も頂ける。玄米と共にダブルでB1ということ。
現在、山川健次郎程の気概を抱いて勉強している大学生はどれだけいる?
大学が単なるモラトリアム期間にしかなっていない氣がする。
就職したくないから行っているだけじゃないの?
以前、勤務した会社の人が言っていた。
「大卒はプライドばかり高くて仕事せん」
大学にも問題がある。
八割方の大学は必要ない。
医師とか弁護士とか専門的知識が必要な人、本当に勉強したい人がいけばいいので明らかに大学の数が多過ぎる。
林立する様子を駅弁大学と称した人がいたが、正に雨後の筍の如く乱立。
しかも少子化の現在、大学も学生、というより親をお客様のように勘違いしていないか?
最たる例がインチキ臭い推薦入試。
優秀な者が推薦されるなら兎も角、知り合いから聞いた話では試験では事前にスピーチのお題を教えられていて、それを行えばいいとか。
それなら事前に考えて丸暗記すればいいというだけだろ。
以前、英検の二次試験でスピーチテストを受験したが、その場でトピックを与えられて行った。大学の試験もそうすべきじゃないの?
山川健次郎や安川敬一郎が掲げた、国家に有為な人材を育成するという建学の精神も失われている。日本はこれからどうなるのか。
故郷や国家を思い、明治の世を学問で生き抜いた山川健次郎を妄想しながら、白虎鯛雑炊をご馳走様でした。