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ヴィーガンバターヘルアナトミア炒め

少し前、ヴィーガン料理の店、メウノータのレシピ本を購入。レシピで料理したことを書きました。

相互フォローしているyukiさんからコメントにて、ココナツオイルについてご教授頂きました。ありがとうございました。
栄養士の方のご教示により、ココナツオイルは決して悪い物ではないとわかったので、それを使用してヴィーガンバターを自作。炒め物に使用しながら、辞書もないのに翻訳を行うという手探りの偉業を成した人々を妄想した記録。


ヴィーガンバターの材料

ココナツオイル 200グラム
絹豆腐     60グラム
無調整豆乳   100㎖
リンゴ酢    小匙2
塩       小匙2/3

享保八年(1723)江戸に福岡藩士の子として誕生した良沢。両親が幼少時に死亡したために母方の大叔父の医師に養われる。
寛延元年(1748)養父の妻の実家、前野家の養子となり前野良沢になる。
前野家は豊前中津藩の藩医。良沢も家業を継ぐのですが、蘭学に興味を持ち、それにのめり込む。そのために藩医としての仕事を疎かにしていると他の藩士からは評判がよくなかったが主君、奥平昌鹿は
「あれは蘭学の化け物、蘭化だから仕方がない」と理解を示す。そればかりか長崎に留学。ますます蘭学に傾倒。


材料をしっかりと混ぜる。ココナツオイルは固まっているので湯せんで溶かした。

享保十八年(1733)同じく江戸の小浜藩邸で藩医の三男として誕生した翼(たすく)が後の杉田玄白。
家業である藩医を継いだが、江戸で町医者として開業することも許される。
宝暦四年(1754)に京都で山脇東洋が日本人で初めて腑分けを行った。つまり人体解剖。これによりオランダの医学書に記されている人体構造が正確だったことがわかった。この知らせが玄白に東洋医学の五臓六腑説に疑問を抱かせる契機になる。


微かにココナツの香がするヴィーガンバター完成。

後輩の中川惇庵がオランダ商館から借りてきた医学書『ターヘルアナトミア』を見た玄白は、オランダ語は読めないものの、解剖図の正確さに驚嘆。
藩に掛け合って、この高価な本を購入してもらう。
小塚原の刑場で処刑された罪人の腑分けが行われることになり、玄白はターヘルアナトミア持参で検分に。
そこには前野良沢の姿もありました。この時が初対面ではなく、以前から面識はあったようですが玄白、良沢両人の手には同じ本。
良沢は長崎でターヘルアナトミアを入手。
目の当たりにした人体内部が解剖図とまったく同じであることに感じ入った玄白、良沢、淳庵は一大決心。
ターヘルアナトミアを日本語に翻訳する。


ヴィーガンバターで料理する材料。

ヴィーガンバター 大匙3
大根       7センチ位
油揚げ      2枚
エノキ      1房
醤油       大匙2
黒胡椒      好きなだけ
鰹節       一つかみ

そもそも『ターヘルアナトミア』とはドイツ語で書かれた医学書をオランダ語に訳した本。それを更に日本語に訳そうと決心。したのはいいのですが、この頃にはまだ辞書が存在していない。三人の内、オランダ語が少しわかるのは前野良沢のみ。それも幾つかの単語がわかる程度で、文法等は?という状態。
一語を訳すのに何時間とか何日もかかることはザラ。


油揚げを短冊に、大根はいちょう切りと短冊に分けて切る。

正に暗中模索。それでも彼等は新たな医学の知識を世に広めたいという情熱で突き進む。
何となく知っている単語から推測して意味を見つけていくというやり方。
現代でも使われる医学用語の中には、この時に生まれた言葉も少なくない。
神経、軟骨、処女膜、動脈等々。
ただ、残念ながら誤訳も散見。


ヴィーガンバター大匙2で大根、次いで油揚げを炒め合わせる。

こうした手探り作業は三年半続き、一応、全文を翻訳。
ターヘルアナトミアだけではなく他の洋書も付し、単なる翻訳ではなく実用的な解剖学書として再構成したのが『解体新書』
しかし刊行する時、これに異を唱えたのが前野良沢。
一同の中でオランダ語がもっとも理解出来るだけに誤訳が多いことがわかっていたので、そんな物は恥ずかしくて世に出せないと主張。
一方、杉田玄白は一刻も早くこれを世に出して、医学の発展に寄与したい。
完全主義と見切り発車という意見の不一致。
結果、刊行された『解体新書』には前野良沢の名前は記されず。


ほぐしたエノキと醤油投入。炒めていく。

解体新書に名前を載せなかったからといって、玄白と良沢が決別したということではなく、交流は続いていたようです。
良沢は翻訳を経験したことにより、ますますオランダ語研究にのめり込んだ。
前野良沢が解体新書に関わっていたことが公表されたのは、良沢の死後、玄白が回想録『蘭学事始』で詳しく紹介したから。
玄白は病勝ちだったので、自分が元気な内に新たな知識が詰まっている『解体新書』を世に出して、医学の発展を促したいと思っていた。ただ、刊行の実績を独り占めする気はなかったので、良沢の死後にその功績も書き記したと思われる。(生きている間はきっと反対すると思ったのでしょう)


いい感じになってきたので、ヴィーガンバター大匙1投入して更に炒め、最後に鰹節と黒胡椒を混ぜ合わせる。

『解体新書』刊行は医学分野に限らず、日本における西洋研究でも大きな貢献を果たしたと、明治になってから顕彰したのは前野良沢同様、中津藩士だった福沢諭吉。
福沢の働きかけがあったのか、明治になってから良沢、玄白共に正四位という官位が追贈。


ヴィーガンバターヘルアナトミア炒め

ヴィーガンバターの原料には豆腐が入っている上に油揚げで良質なタンパク質、大根とエノキから各種ビタミンや食物繊維。
醤油とバターは黄金の組み合わせなので、ヴィーガンバターに置き換えてもいい筈と思ったが、やはり当たりだった。

その福沢諭吉も幕末や明治に新たに入ってきた概念や言葉を日本語に翻訳。演説、常識、方針等々。わかりやすい例では「中華人民共和国」の人民も共和国もこの時代に生まれた和製漢語。

新たな知識をわかりやすい日本語に訳した先賢達に比べて、現代人はどうか。やたらと横文字をそのまま使っている。
わからない人は置き去りか?
最近、耳を傾げたカタカナ語はリスキリング。リスクがあること?と思ってしまった。再教育でいいじゃねえか。
スマドリ?スマホで何か撮るのか?と思ったらスマートドリンキングだと。わかるか、そんなモン。
ネット関係は最たるもの。カタカナだらけ。よって提案。日本語にしてしまえ。
ブロックチェーンは塊鎖。ユーチューブは貴公管。フェイスブックは顔本。
noteも帳面。
日本語を大事にして、新たな知識を広めようとした先人達を妄想しながら、ヴィーガンバターヘルアナトミア炒めをご馳走様でした。

この料理を食べた家族
「バターが入っていて美味しい」
との感想。見事に騙されている。
ヴィーガン料理、もう少し勉強してみたくなってきた。

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