立花道雪見鍋
もう少し寒い日が続くようである。ということで鍋にするか。魚屋へ行き、良さそうな鱈のぶつ切りを購入。鱈ちりにすべし。
鱈のぶつ切り 1尾分
昆布 10センチ位
木綿豆腐 1丁
大根 1/4
白菜 1/4
水菜 2株
ポン酢 適量
柚子胡椒 お好みで
摺り下ろした大根を仕上げに乗せる。こういう形式の鍋、しぐれ鍋とか雪見鍋と言います。以前、しぐれ鍋を書いています。↓
大根下ろしを雪に見立てた鍋、更に鱈は漢字で魚へんに雪と書く。こうなると、妄想する人物はあの人しかいないでしょう。
立花道雪。
実は生前、この名前を用いたことはありません。本名は戸次鑑連、出家した後の名前は麟伯軒道雪。立花というのは主家、大友家の支族であり、それを憚ってか、自身は立花という姓を名乗ることはなかった。煩雑になるので、ここでは立花道雪で通します。
豊後の守護、大友家の加判衆つまり重臣である戸次家に生まれた道雪、義鑑、後に宗麟となる義鎮の二代に仕えました。大友宗麟についてはこちら↓
道雪は宗麟にというよりも大友家に仕えているという意識が強かったのだろうと思います。主君である宗麟に対しても、自分が正しいと思うことは直言し、行い、諫言も度々。
一例、宗麟はいたずら者の猿を飼っていて、家臣にけしかけて面白がっていました。出仕してきた道雪にもけしかける。道雪は持っていた鉄扇で猿を叩き殺す。その上で悪趣味なことは止めるように諫言。
35歳頃と言われていますが、道雪は雷に打たれました。その時に持っていた千鳥という刀で雷神を斬ったとか。以来、その刀は雷切りと呼ばれることに。道雪自身はそのために下半身不随或いは左足が麻痺と言われます。
それでも大友家のために軍事、政治の両面で活躍。勇名は全国に鳴り響く。
「西に立花道雪という人物がいる。遠く離れているが一度、会ってみたいものだ」と武田信玄も言ったとか。
戦場でも家臣に担がせた輿に乗り、陣頭指揮。
「この輿を敵陣に投げ入れろ」と叫んでいたとか。
もう一つ、名言。
「およそ武士には臆病な者などいない。そう言われる者がいるとすれば、仕えている武将が悪い。我が家中に来れば、どんな者でも勇者にしてみせる」
筑前や筑後の攻略を任された道雪は本国の豊後を離れる。大友家の支族、立花氏の名跡と立花山城を任されますが、妄想するならば、諫言を繰り返す道雪を疎ましくなった宗麟が敬して遠ざけた?それでも道雪は大友家のために働き続ける。道雪の名前の由来は、道に残る雪は溶けるまで位置を変えない。同じように心変わりせずにありたいという自負が込められていました。
そんな道雪の悩みは後継者。子供は女ばかり。主君の宗麟は甥を養子にして跡継ぎにせよと命じますが拒否。自分が納得しないことには従わないという姿勢。
ついに娘の誾千代に立花山城を譲る。女城主(大友家の家臣で城を預かっているので、正確には城督ですが)誕生。
やはり女城主では心許ないということでよい婿をと思っていた道雪が白羽の矢を立てたのが、同じく大友家臣の高橋紹運の長男、千熊丸。どうしても婿に欲しいと交渉。しかし紹運も大事な跡取りなのでおいそれとは応じられず。しかし、正しいと思い込んだら一歩も引かない道雪。
「立花家も高橋家も大友家のために働くということでは同じなので、どちらの家を継いでも同じであろう」
その言葉に根負けして、ついに長男を婿養子に。
待望の婿殿が来たからといって、甘やかすようなことはなく、厳しく指導。
たとえば、山道を歩いていた千熊丸が栗のイガを踏んづけてしまうと、家臣に命じて、そのイガを更に足にぐりぐりと押し付けさせる。
男がイガ位で痛がって騒ぐなというスパルタ教育。
また、これは婿に来る前の話ですが、共に食事している時、千熊丸が魚の骨を取りながら食べていると、
「何だ、その食べ方は。頭から骨まで丸ごと食え」
正に現代では絶滅危惧種となった雷親父。(伏線)
こうした薫陶を受けた千熊丸、後に秀吉から西の勇者と称賛される立花宗茂へと成長。
大友家衰退の原因となった耳川の戦いには、道雪は反対していました。筑前にいたので参戦もせず。結局、大敗したことから、宗麟や重臣達を厳しく批判。
それでも大友家のために筑前や筑後で、隠居することもなく龍造寺氏らと戦い続ける。
筑後の柳川城を攻めている時に久留米、高良山の陣中で道雪はついに病死。享年73歳。
死ぬまで最前線で大友家のために働き続けた生涯。
「我が遺骸には甲冑を着せて、柳川に向けてこの地に葬れ」というのが遺言。
流石にこの遺言は実行する訳にはいきません。撤退した後に掘り出されて首を取られてしまう恐れもありますから。
行動を共にしていた高橋紹運らに守られて、道雪の亡骸は立花山城へと引き上げ。麓の梅岳寺に葬られました。
撤退している間、対峙していた島津、秋月の連合軍は追撃しませんでした。敵も道雪の死を悼み、見送ったということ。武士の情けを知っていたんです。
鱈はタンパク質とビタミンB12、特に白子にはそれらが豊富。この鍋も白子入り。白菜や大根からはビタミンC。水菜にはベータカロチンと栄養豊富な鍋。大根下ろしでさっぱりしていますが、いい出汁にポン酢が合う。
よく煮たので身が離れた骨。
はっ!?この骨も食べないと、鬼道雪公の雷が落ちる?
たとえ主君が相手でも自分が正しいと信じることは断行し、決して言動がブレることがなかった名将、立花道雪の生涯を思いながら、立花道雪見鍋をご馳走様でした。