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流れる星すら掴み取っていた。



また、だ。
突然の強い眠気に襲われて倒れ込む、不思議な現象に悩まされている。
夢ばかり見て、記憶があるうちに走り書き、色を塗る作業は気分屋の彼に任せた。
幸いなことに今回は活かせる内容だった。
これが物語のどこかは自分でも分からない、気に食わなくて破り捨てた頁、その度、文字とともに〈何か〉が消える。

毎日、届けられる手紙をとても読めなかった。
誰にも知らせず、黙ったまま扉を閉ざし、切り取る程の愉快な生活を送ってもいない為に、少しずつ姿が透明になる。
ふと、創った部屋を飛び出してしまい、この世界に新しい色が一つ加わったが、扱いに困り果てた。

やがて目覚めると、闇に包まれたベッドに過去が明かりを灯す。
こちらが掻き集めた愛とぽつぽつ寄せられる優しさを、ありがたく口に運ぶ間、相棒は舌を伸ばして辺りに散らかる真っ白を飲み込んだ。

「進まなくて。何故かはご覧の有様。」
しばらく彼と見つめ合えば、音の欠片が沈黙を破る。下唇を噛んで、再び歩み始めるべく立ち上がった。
「楽しかった頃の感覚を取り戻せ。」
「ああ、好きにやるよ。」

煌めきを纏う、彼は僕で、僕は彼?