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幼目と源泉のバトン

「この時まで生きていて良かった」

部屋全体が明るくなり、座っていた椅子に思いっきり脱力して余韻を感じながら、心底そう思った。 

初めて宮崎駿監督の関わる作品に触れたのは、2歳の時。高畑勲監督と宮崎駿監督の手がけた、『アルプスの少女ハイジ』にどハマりした。親曰く、今は懐かしいビデオテープを1本ダメにするほど、来る日も来る日も繰り返して観ていたという。

それからしばらくして12歳の夏、金曜ロードショーで、宮崎駿監督が脚本などを手がけた『耳をすませば』が放映されたことをきっかけに、思いっきり私の青春時代は、スタジオジブリの世界観に影響を受けまくることになる。

宮崎駿監督が引退を告げた『風立ちぬ』から10年、15歳の子どもだった私は、25歳の大人になった。

物心つく前、子ども、思春期、大人、全ての私の時間に、スタジオジブリの作品、宮崎駿監督の作品は在る。それも一時的なものではなく、ずっと目の前に、その時のちょうど良い距離感で、心の中に在り続けている。

きっとこの『君たちはどう生きるか』も、私にとってそんな、そこに居てくれて何度も出会える作品になるのだろうと、自身とスタジオジブリの短い歴史に想いを馳せつつ、幕が上るのを待っていた。

「今回こそ最後の長編作品なのでは、、」と囁かれる声が世の中に溢れる。宮崎駿監督は最後に何を描くのか、何を最後にするのか、そんな期待や妄想を抱いていたが、2時間半で見事に裏切られた。

こちらの期待や妄想なんて、優に超え、観る側の想像力や思考を最大限まで引き出してきたのだ。

おかげさまで、映画を観終わった後は1日中、私の頭の中は、『君たちはどう生きるか』という文字と、脳裏に焼き付いた映像とが埋め尽くされていた。

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かみつれ

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