【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】動悸と東洋医学
千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。
心臓のあたりがふとしたタイミングに「とくとく・どきどき・ざわざわ・どっくん」というような感じがする。
病院では異常なしと診断されたが、症状は止まらないし、心配でどうしたらいいかわからないで困っている。。。
みなさんは普段の生活の中で、こんな経験をされたことはありませんか?
今回は、「動悸」について西洋医学・東洋医学の両面から取り上げ、東洋医学的な原因と鍼灸によるアプローチについてもみていきます。
では、どうぞ最後までお付き合いください。
1.動悸とは
動悸とは、心臓の拍動が普段よりも強く速く感じられたり、脈拍が不規則になる症状のことです。
心臓が平常時と違う動きをするために、脈が乱れることによりおこるもので、胸の不快感や息切れなどの症状を伴うこともあります。
脈が乱れがちなのは高齢者に多いと思われがちですが、年齢をとわず、男性よりは女性にみられることが多いようです。
心臓の拍動の乱れは、西洋医学的には不整脈といい、以下の3つの種類に大別されます。
①頻脈:心拍が速くなる
②徐脈:脈が遅くなる
③期外収縮:脈が一瞬飛んだり、リズムが乱れたり、不規則になる
このうち頻脈は、心臓が健全な人でも運動をした時や精神的な緊張によって起こりやすく、きっかけとなる出来事が過ぎ去れば、短時間のうちに自然と止まることが多く、脈が乱れているという自覚症状を伴います。
これは、多くの方が経験しており、生理現象としての動悸であるといえます。
このほかには、病気や加齢、ストレス、睡眠不足、水分不足など、不整脈のがおこる原因は実に様々です。
不整脈の種類によっては、脈の乱れを自覚症状として感じることがなく、気が付かないうちにおこっている場合もあります。
この場合、健康診断や人間ドックの心電図検査の結果で、再検査を指摘されることが多いようです。
動悸を常日頃から感じやすく、長期間に渡ってその症状が続いている場合、もしくは、動悸とともに冷や汗やめまいなどの症状があらわれる場合には、近くの医療機関を受診して、専門的な検査を一度受けておきましょう。
2.動悸と女性の病気
動悸や不整脈と聞くと、高齢者を思い浮かべる方も多いと思いますが、女性特有の病気や女性に多い病気に伴っておこることがあります。
●甲状腺機能亢進症(バセドウ病):
女性に多く、特に20~30歳代に発症することが多い病気です。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるために代謝が活発となり、脈が速くなったりや血圧が上がったり、動悸などの症状が現れます。階段や坂道をのぼるとすぐに息切れがしたり、じっとしていても動悸がしたりします。
●更年期障害:
加齢に伴う女性ホルモンの減少との関連はよく分かっていないようですが、動悸は更年期障害の症状のひとつにあげられます。自律神経の働きが不安定になるために動悸や息切れなどの症状が現れるとされています。
●貧血:
血液中のヘモグロビンが減少して酸素不足になると、全身に酸素を送るために心拍数が上がり、動悸を感じやすくなります。月経の異常に伴って貧血に陥りやすい方は経験があるかもしれませんね。
●妊娠中:
体を循環する血液量が増え、それにともなって心拍数も上がるため、心臓の負担が増えて動悸を動悸を感じやすくなります。また、貧血になりやすいことも動悸の一因となります。
その他、ストレスや疲労、睡眠不足、飲み過ぎ、喫煙などによって自律神経のバランスが崩れると、心拍数が増加して動悸を感じやすくなることがあります。
3.東洋医学的にみる動悸の原因
東洋医学においては、動悸のことを『心悸』・『怔忡』・『驚悸』という病名で呼びます。
この3つの違いは、次のとおりです。
『心悸』は心臓が早くそして激しく拍動する感覚のことで、『怔忡』・『驚悸』の2種類にわけられます。
『怔忡』は、明らかな外因がなく動悸を自覚し、器質的に問題があることが多く、病状としては重いものをさします。
『驚悸』は、驚きや焦り、苛立ち、悩みなどの精神的要素によって動悸が誘発されるものをさします。
心(❝しん❞と読みます)とは、東洋医学における臓腑の一つであり、精神を主り、血の生成に関与して全身に血を送り出す働きをします。
なんらかの原因により、この心の正常な働きが損なわれることで、『心悸』の症状がおこる、と考えます。
『心悸』がおこる具体的な原因としては、
①心気虚、心陽虚
老化や衰弱・虚弱体質・長患いなどが主な原因となり、心自体のエネルギーが不足した状態となることから、心の機能が低下して、心悸の症状を発症します。
②心血虚、心陰虚
体内の血、潤いの不足から、心自体の血や潤いが不足した状態になると、心の機能が低下して、心悸の症状を発症します。
また、東洋医学では、長期間にわたる考えすぎや悩み過ぎは、血を消耗するといわれており、その結果として心血不足や心血虚がおこって心悸を発症するケースもあります。
③心胆気虚
心と胆、この2つの臓腑の働きが弱ってしまい、突然の驚きや恐怖感を感じやすくなり、心の臓が不安定な状態となることから、心悸が起こりやすくなります。
④心血瘀阻
心気虚、心陽虚によって血の運行が正常に行われなくなると、時に、血が滞った状態を作り出します。
これを瘀血とよび、瘀血は血の正常な運行を邪魔することから、血がスムーズに流れにくくなり心悸が起こりやすくなります。
⑤痰火擾心
過剰な精神的負荷の継続、暑さ・寒さ・湿気など外気の影響、食べすぎ飲み過ぎなどの飲食の不摂生。
これらがきっかけとなり、身体の中で循環停滞がおこり、気血津液がうまく巡らなくなると、老廃物(この場合は痰火を指します)が作られやすくなります。
この老廃物が、心の働きを邪魔することから、心悸が起こりやすくなります。
⑥水気凌心
身体が冷えて体内の水分代謝が停滞すると、余った水分が体内循環を停滞させて、心の働きを邪魔することから、心悸が起こりやすくなります。
ここでいう冷えとは、陽虚という状態のことを指し、臓腑の身体を温める作用が低下した状態のことをいいます。
⑦心脾両虚
心と脾、この2つの臓腑が弱ってしまい、体内にエネルギーを十分に行き渡らせることができず、心自体のエネルギーが不足した状態となることで、心の機能が低下して、心悸の症状を発症します。
脾の役割とは、いわゆる胃腸の働きに似ており、食べたものから栄養を吸収して身体全体に運ぶ役割をします。
4.鍼灸におけるアプローチ
ここまで、東洋医学的に動悸についてみてきました。
次に、東洋医学の手法のひとつである、鍼灸によるアプローチについてみていきましょう。
「動悸も鍼灸で治療できるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、先にご紹介をしたような「動悸のトラブルを引き起こしている東洋医学的な根本原因」をみつけだし、それを鍼灸治療により正していくことによって、動悸の症状を改善に導くとともに再発しにくい身体づくりをしていくことが可能となっています。
ただし、動悸は生命にもかかわる症状ですので、まずは西洋医学的に心臓の器質的な異常がないことを、循環器科の病院等で検査してもらうことをおすすめします。
鍼灸で一度の施術に使うツボは1~3つで、施術時間は休憩含めて1時間程度です。
なお、鍼をする前には、予め、詳しく問診をする必要があり、その症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(愁訴、随伴症状といいます)、その人の体質や体格、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。
問診で詳しく話を聞いた後は、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼灸の施術をします。
そのため、症状や原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となってきます。
5.鍼灸治療のメリット
鍼灸治療により動悸を治していく際のメリットとしては、動悸以外の身体のさまざまな不調も同時に改善していく可能性がある、という点にあります。
少し詳しく、例をもちいて解説していきましょう。
患者Aさんは主婦です。
数か月前から、子どもの受験と両親の介護が重なって忙しくなり、進路や今後の介護などの悩みを複数抱えた状態で、毎日毎日をがんばっていた。
夫は仕事が忙しく帰宅も遅いことから、家族の問題はAさんに一任されているような状況だった。
ちょうど精神的な負荷が高まりはじめた頃から、入眠困難・睡眠の浅さ・睡眠不足という、不眠の症状が出るようになってきた。
また同時に、不安感をともなう胸のどきどき・ざわざわ感を感じるようになり、胸の症状が気になって、より一層不安感を感じる、という悪循環に陥るようになった。
その後、動悸、不安感、不眠の症状が深刻化してきて疲労感も感じるようになったことから、総合病院に行き、内科、循環器科、心療内科、睡眠外来の各科にかかったが、病的な異常はみられないという診断結果であり、処方された薬を服薬してもあまり改善はみられなかった。
困ったAさんは、インターネットで調べて、ついに鍼灸治療を受けてみることにした。
鍼灸院を訪れたAさん、そこでの診断は、思慮過度と睡眠不足からくる❝心血虚❞により、動悸・不安感・睡眠不足・疲労感という不調がおこっている、という結果でした。
その後、原因の❝心血虚❞を改善するように、鍼灸治療を重ねて受けていくうちに、Aさんをとりまく環境は変化していないものの、少しずつ、Aさんの身体には変化がみられるようになってきた。
治療後の変化)
・動悸を感じることが減ってきた
・睡眠不足が改善して、寝つきがよくなり、途中でおきることも減ってきた
・不安感が改善して、大丈夫なんとかなると思えるようになった
・疲労感が減り、身体が楽になってきた
さらにその後、Aさんは、鍼灸治療を定期的に継続することで、自分の抱える家族の問題と共存しながら、元気に毎日を過ごすことができるようになっった。
いかがでしたか?
これは、鍼灸治療のメリットを理解してもらうために、当院での症例を参考にした一例です。
実際には、原因は人それぞれで、複雑にからみあうことが多いことから、それに合わせて治療方針は変わります。
興味を持たれた方は、ぜひ、お近くの鍼灸院に相談をしてみてくださいね。
6.動悸の改善・予防と食養生
原因となる病気が見つからないのに動悸が続く時には、気分がすぐれず生活にも影響が出てしまいます。
さらに、ストレスが誘因となって動悸を悪化させてしまうかもしれません。そのため、症状が改善するように生活習慣や食生活を見直すことも大切です。
6-1.生活習慣の見直し
①適度な運動を取り入れる
長時間のデスクワークなどによってからだを動かさないでいると全身の血液の巡りが悪くなるため、心臓に負担がかかり動悸を感じやすくなります。
少しづつでもよいので、できるだけ毎日、歩いたりからだを動かすように心がけましょう。
②からだを冷やさない
からだの冷えも血行不良の一因です。
からだを動かすと共に、冷たい飲み物や食べ物を控えるようにしましょう。
あたたかい飲み物や食べ物であってもコーヒーやお茶、香辛料などはからだを冷やしてしまう場合がありますので摂りすぎには注意が必要です。
③ストレスをため込まない
ストレスは心の負担となります。仕事などのオン・オフはうまく切り替えて、趣味などで自分時間をつくってリラックスするようにしましょう。
パソコンやスマホを使って楽しむ方がいるかもしれませんが、使いすぎは禁物です。デジタルの情報から離れる工夫をしてみませんか。
生活習慣の改善については以下の記事の中でも取り上げています。
興味をお持ちになられたらぜひご一読ください。
【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】不眠症と東洋医学
【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】女性のめまいと東洋医学
6-2.食養生
食生活の乱れは心身の健康に悪影響を及ぼし、結果として貧血やメンタルの不調を招きます。バランスの良い食事を規則正しく取るようにしましょう。
動悸には心の働きを助ける食材や気血の巡りをよくする食材が向いており、身近な食材として以下のようなものがあります。
●豆苗
【性質と味】甘、平性
からだにこもった余分な熱を除く作用を持ち、気血の巡りをよくします。
●ねぎ
【性質と味】辛、温性(辛・甘、平性)
辛味成分には気を昇らせる作用があり、気の巡りを改善したり血行をよくしたりします。
●ゆり根
【性質と味】甘・微苦、微寒性(辛・甘、平性)
心の熱を鎮める作用があり、ストレスを解消して動悸を収め、精神を安定させます。
●牛乳
【性質と味】甘、微寒性(甘、平性)
血をバランスよく補い、心の機能を回復する作用があります。
牡蠣や鶏卵も動悸に効果のある食材といわれています。
これから寒くなる季節に向けては、ちょうどお鍋やあたたかいお料理に向く食材ばかりですよ。
7.まとめ
今回は「動悸」について、原因や対処法、東洋医学的な原因と鍼灸治療について解説をしました。
今年の秋は寒暖差が大きく、体調を崩しやすい日々が続いています。
些細な体調の変化も見逃さず、健康に暮らせるように日々心掛けたいものですね。
今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
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参考資料:MSDマニュアル家庭版WEBページ、厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト、東方栄養新書、食材効能大事典、東洋医学の教科書