![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/84869831/rectangle_large_type_2_38965d031f0195be49ba1a2e02386841.png?width=1200)
自由とは嫌われること【嫌われる勇気】
今回紹介するのは、
「嫌われる勇気」です!
世界累計発行部数600万部を超える大ベストセラー。
テレビドラマ化もしていることから、本の題名だけでも知っている人は多いのではないでしょうか。
内容としては「アドラー心理学」の入門書と言って間違いないのですが、心理学に詳しくない一般の方も理解できるように、哲学者と青年の二人の哲学対話形式で構成されており、文章も柔らかいです。
ただ、実践を重要視している「アドラー心理学」ですが、本書を意識のレベルでは理解しても、実践に落とし込むのは至難の業だと感じました。
そこで、本書を読んだことがある人も、そうでない人も、「アドラー心理学」についてもう一度理解を深め、実践につなげてほしいと思います。(私自身もためでもあります...!)
では、いきましょう!
アドラー心理学とは
「アドラー心理学」のスタンスを紹介します。
私たちの行動は、過去に「原因」があるわけではなく、現在の「目的」によって動機づけられるというものです。
具体的には、人見知りな人がいたとします。彼は、過去に仲がいいと思っていたグループからいじめを受け、人と話すことが怖くなったと言います。
アドラー心理学では、トラウマの存在自体認めません。彼がいじめを受けたという過去の経験によって人見知りになったことを否定します。
彼は、彼自身で人見知りであることを望み、選択しているから人見知りなのです。人と話すことが怖いことから、人見知りであることを言い訳にしているのです。
もちろん、いじめを受けたことが影響することは否定できませんが、人見知りの性格を決定するものは過去の経験ではないのです。
「原因」からのアプローチでは、人見知りであることは過去によって決定されてしまうため、変えることができません。
しかし「目的」からのアプローチでは、人見知りであることを変える可能性を持っています。人見知りであることを望んでいる「いま、ここ」の私の意識を変えればいいのです。
ソクラテスは「誰一人として悪を欲する人はいない」という言葉を残していますが、不幸であることも自分にとっては善だと判断しているのです。
では、幸せになることを望むためには何が必要か。
それは「勇気」です。
ただし、勇気を持つためには「人生のタスク」を乗り越える必要があります。
乗り越えるべき「人生のタスク」
アドラーは「人間の悩みはすべて人間関係である」としました。
私たちは一人で生きていくことは原理的に不可能で、社会的な文脈においてのみ個人になります。
人間関係から生まれる「人生のタスク」を以下の3つに分類し、「人生のタスク」を乗り越えたときに幸せになる勇気を持てるとしています。
・仕事のタスク:成果というわかりやすい共通の目標のもとで結ばれる関係
・交友のタスク:仕事を離れた広い意味での友人関係
・愛のタスク:恋愛関係、家族関係
しかし、人見知りの彼のように、私たちは「人生のタスク」をさまざまな口実を設けて回避しようとします。これを「人生の嘘」と呼びます。
では、「人生のタスク」を乗り越える過程を見ていきましょう。
「課題の分離」で自分本位に生きる
「人生のタスク」を乗り越えるための入り口です。
課題とは問題と同じニュアンスで捉えています。
他者の課題を切り捨て、自分本位に生きること、これが課題の分離です。
例えば、「信じる」のは私の課題ですが、期待や信頼に応えるのは他者の課題です。相手が自分の希望通りに動いてくれない時に、待つことができるかどうか。これは愛のタスクの問いかけでもあるでしょう。
カントは私たちが他者から嫌われたくないという欲求を「傾向性」と名付けましたが、他者が自分のことを嫌うかどうかは、他者の課題なのです。
注意なのが、相手が自分のことをどう思うかを気にしないことは、嫌われるようにふるまうことではないということです。
本書では「自分のことを見ているのは鏡の前の自分だけ」と表現されていますが、他人は思っている以上に自分のことを見ていません。
理屈ではわかっても、実際に行動するのは難しいですよね。だからこそ、題名に「嫌われる勇気」を選択したのだと思います。
人生のタスクを乗り越えた先にある「共同体感覚」
私たちは「優越性の追求」という本能があります。これは他者よりも優れていようとする欲求ではなく、自分の理想の状態を追求する欲求です。
同じ平らな地平に、前に進んでいる人も入れば、その後ろを進んでいる人もいるイメージだと説明しています。
理想ですから、もちろん至らない部分がありますが、そのギャップを劣等感として感じます。劣等感はそれ自体では悪いものではなく、理想を追いかけるモチベーションになるものです。
しかし、私たちは劣等感を理由にしたり(劣等コンプレックス)、あたかも自分が優れているかのように振る舞うことで偽りの優越感に浸る(優越コンプレックス)ことによって「人生の嘘」をついてしまうのです。
その理由は、他者(世界)と比較し、敵とみなしているからです。
始めにもお伝えしたように、アドラー心理学では、経験に意味を与えるのは自分です。本来、優越性の追求とそこから生まれる劣等感は理想の自分との比較によって生まれるべきものなのです。
人びとは私の仲間で、自分の居場所があるという感覚は「共同体感覚」と呼ばれ、「共同体感覚」を身につけることが人生のタスクを乗り越えるためのゴールです。
共同体感覚は、「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」の円環構造によって身につきます。
「自己受容」とは、できない自分を、劣等感をコンプレックスにせずに受け入れることです。肯定的なあきらめとも言えます(あきらめには「物事をあきらかにみる/判断する」という意味があるらしく、納得してしまいました…)。
「他者信頼」とは、他者をいっさいの条件をつけずに信じることです。
そして、特に重要となる「他者貢献」とは、仕事の本質とも言えます。「他者が私に何をしてくれるのか」ではなく、「私が他者に何ができるのか」で物事を考えるのです。
自らの主観によって私は他者に貢献できていると思えることで、自らの価値を実感し、「幸せになる勇気」につながります。これが共同体感覚です。
最後に、共同体感覚を身につけるためには、私たちは「横の関係」を意識して人生のタスクにコミットする必要があります。
私たちはみんな違いはありますが、対等です。上下関係があるからこそ、対人関係を競争の軸で捉え、タスクが生まれるのです。
そのためには、他者を評価してはいけないと言います。ほめてもいけませんし、叱ってもいけません。
あなたのおかげで私が存在できているということを行為ではなく、存在のレベルで感謝することを忘れてはいけません。
おわりに
実践できるできないに関わらず、この教えに20代の初めに出会えてよかったなと思います。今になってようやく題名の意味が分かりました。
今までの考え方とは全く逆のアプローチですが、非常に画期的で実用的です。
他者の人生ではなく、自分の人生を自由に生きる。そのための勇気を与えてくれる一冊でした。
ではまた!