好きなことは苦手さえも克服させる
走るのは大嫌いだ。なんなら運動が大嫌いだ。しかし今日、私は走りながらあることに感動した。
私はこのお正月、文字通りの寝正月を過ごしてしまった。
美味しい物を食べては、寝て。
酒を飲んでは、寝て。
退屈しのぎにギターを弾いて、そして寝て。
そんなことをしていれば、間違いなく摂取カロリーと消費カロリーの対決は摂取カロリーが圧勝するに決まっているのだ。
そして出来上がったのは、丸々と肥えた輪郭である。私の顔の中にはあんこは入っていない。しかし、出来ることならそんな顔をちぎって飢えた人や弱っている人に与えたいとさえ思うほどに丸くなってしまったのだ。
私はもともと輪郭は(かなり)丸いほうで、似たような悩みを持つ友達と”We are 顔丸い族”と呼び合うほどであった。
痩せようにも、なかなか痩せない顔。ちょっと食べればすぐに丸くなる種族の運命(さだめ)
しかしそんな種族でありながら、この丸さはさすがにやばいと焦りを感じる。「これでは、顔丸い族の族長になってしまう。なんなら伝説の顔丸い族として崇め祭られ、後世に語り継がれてしまう」
そんな危機感を持ち、どうにかこうにかお正月に蓄えてしまった、あんこならぬ脂肪を燃焼することにした。
冒頭に戻るが、私は走るのは嫌いである。運動が大嫌いなのである。
運動神経がないのだ。これは比喩ではない。おそらく壊死してるのだろうと推測する。
しかし、伝説の顔丸い族にならないために、しばらく休んでいた、ジーワイエムに行くことにした。そうGYM。
クロストレーナーというマシンを知っているだろうか。あの竹馬のようなマシンである。
これ。
これが運動不足解消、ダイエットに良いらしいという噂を聞きつけ使うことにした。
—今度は続くかな?—
今までも何度もルームランナーなどを使ってダイエットに挑戦してきたけれど。なかなか続かなかったのだ。
運動神経の壊死した顔のちぎれないアンパンマンにとっては、ルームランナーを使ったウォーキングでさえ苦痛であった。
確かにジムで、スポーツメーカーのウェアを着て、ルームランナーでジョギングをして、なんなら最新のBluetooth付きのイヤホンで音楽を聴いて汗を流すのは、とってもオシャレでカッコいいし、そんな自分に酔いしれて、自己肯定感を上げることさえできたのかも知れない。
きっと種類的には、スターバックスで、コーヒー片手にMacBook Proを開いて仕事してる、ちょっと激し目のツーブロック入れた髭面のお兄さんと同じ。イケてるじゃんって。
ただ、でも、そんな自分がカッコいい、イケてるじゃん、では続かなかった。
だってやっぱり、走ること自体が苦手なんだから。
走ることに楽しみを持てたら、身体を動かすことを楽しいと思えたらって何度も思った。
ルームランナーの画面に表示されている走った距離や、走った時間の数字を見ながら、あと何分あと何km、早く終わらないかな、まだかなまだかなって思いながら走っていた自分がいつもいた。
そりゃあ続かないわな。
だから今回はイケてる自分を想像するのを辞めることにした。それにだ、誰もアンパンマンがルームランナーで走っているのをかっこいいとは思わない。
彼は、マントで空を飛び、弱きものを助け、悪友のバイキンマンにバイバイキンと言わせるからかっこいいのである。
(もしかしたら、子どもたち的にはあの丸みのあるビジュアルが良いものかもしれないが。通りで私が初対面の子どもに人気のわけだ)
そして何より、走る時のお供をBluetoothのイヤホンではなくて、Kindleに変えてみた。
私は身体を動かすのは好きではないけれど、きっとその分、頭脳の神経は発達したようで、脳内ADHDである。ADHD=注意欠陥多動症。
常に物事を考えていないと落ち着かない。考えるの大好き。文字読むの大好き。勉強大好き。
さて、いざ過去のやり方と決別の時。さらばカッコつけたアンパンマン。君にBluetoothイヤホンは必要ない。
竹馬のようなマシンにスマホをセット。Kindleのアプリを開き、有酸素運動をしながら、ページをめくる。走りながら読書をするなんて、あの二宮金次郎にも匹敵する勤勉さ。歩きスマホならぬ走りスマホ。
そうしてあれよあれよと読み進め、気がつけば一冊本を読み切り、そして今日なんと、この運動神経壊死マンが5キロも走っていたのだ。
“あれ、あっという間だったな”
2キロを走るのさえ、まだかまだかと思いながら走っていた私が。そんなことを思いながら走ることがあるなんて。
感動である。これを感動と言わずしてなんと呼ぼうか。
そして悟ったのだ。そしてタイトルに戻る。
自分が好きなこと(本を読むこと)は、自分の苦手(運動すること)をも克服させてしまう力があるのだと。
下手にイケてる自分を想像をして、苦手なことを無理に続かせようとするよりも、自分の好きなことと関連させながら、苦手を克服する方がきっと何倍もイケている。