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日々是好日・心理学ノート

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2022年6月の記事一覧

2022年6月のまとめ

今年の6月の前半は肌寒く,とても6月とは思えないような日々が続いていました。その一方で,終盤になっていきなり「夏」になってしまった印象ですね。東京でも連日30度台後半の気温が続いています。いや,本当に命にもかかわるような暑さですので,体調には注意してください。 それにしても,振り返ってみると,今年はとても6月の気候とは言えないような天候でした。梅雨のイメージとは程遠い「梅雨」でしたし。気候変動の影響なのかと考えてしまいます。 さて,では今月投稿してよく読まれた記事を,第5

マダニに共感することはできるか

今回は『動物たちの内なる生活―森林管理官が聴いた野生の声』(早川書房)のなかから,一節を紹介してみたいと思います。 この本はドイツで森林管理官という職業についている,ペーター・ヴォールレーベンによって書かれたエッセイ集です。それぞれの章は短く,ある動物や生態に焦点を当てながら,自らの経験と研究成果を組み合わせながら,生き生きと動物たちの様子を描いています。 マダニ今回は,この本を読んでいて面白いと思った一節を引用してみます。それは「マダニ」について書かれた一節です。 最

子どもの気質に男女差はあるのか

心理学には「気質」という概念があります。現在では,パーソナリティ(性格)とは少し違う概念として扱われているのですが,歴史のなかでは,いまのパーソナリティとそんなに変わらないような概念も「気質」と書かれてきているような印象もあります。 昔の気質の定義を見ると,刺激への感受性や習慣的な反応の強さや速さ,気分の質や変動の大きさなどをあらわす,遺伝的な規定が強い心理的特性だとされています。現在では,気質は行動に表れるいくつかの側面として扱われていて,多くは乳幼児期から現れる行動・心

神経症傾向は将来の疲れやすさを予測する

パソコンの辞書で「疲労」という言葉を検索すると,「疲れること,くたびれること」「生体がある機能を発揮した結果,その機能が低下する現象」また金属疲労などの物質に関する意味,また貧しくなることという意味もあるようです。 皆さんは「疲れた」と感じることはどれくらいあるでしょうか。気力が失われて,意欲が減退して,とにかく「休みたい」「寝たい」と思う状態ですね。年齢を重ねると,どうしてもそう言った状態になりやすくなります。 適度に運動をして,身体を鍛えておきたいものです。 疲労と

幼稚園から小学校へと継続する人間関係

幼稚園や小学校の最初の頃の人間関係がどうだったか,覚えているでしょうか。小学校高学年くらいになると,他の子どもたちが何を考えているのかを互いに推測し合って,より高度で複雑な人間関係を営むようになるのですが,小さい子どもたちはそうではありません。幼稚園の途中くらいで,心の理論も最初の段階が発達したところです。お互いの気持ちを推測することもまだ十分にできていないかもしれません。 いじめにおける役割子どものいじめのエピソードには,いじめっ子,被害者,補佐(いじめの首謀者を支援する

イメージと現実とのギャップ

アメリカ合衆国というと,どのような国のイメージを抱くでしょうか。 「自由の国」「アメリカンドリーム」「フレンドリー」「銃社会」……日本人にとっては,比較的ポジティブなイメージを抱く人も多いように思います。 今回は,『11の国のアメリカ史―分断と相克の400年』(岩波書店)という本の中から一節を紹介したいと思います。 アメリカの歴史を考えるときに,いくつかの地域から考えていくと理解が進むようです。この本ではタイトルのように,11の地域からアメリカの歴史を説明していきます。

噓のパターンと男女のちがい

一口に「噓」といっても,その中身は多様です。また,噓はさまざまなシチュエーションで表出される行為で,非常に日常的なものです。 「自分は噓をつかない」と思っている人でも,たとえば言われたくないだろうなと推測したことを口にしないこととか,相手のためを思って違うことを口にするとか,そういうことは日常的に行っているのではないでしょうか。もちろん,自分の利益のためだけに噓をつくことはあるでしょうけれども。 噓の研究研究者たちは,どのようにして噓を研究しているのでしょうか。 たとえ

動物のグリット

心理学者ダックワースは,粘り強さや根気強さ,不屈の精神など,忍耐強さと目標に向かう強さのような心理特性を「グリット(Grit)」と呼んでいます。平たく言えば「根性」のようなものでしょうか。 なお,よく「グリッド」と間違えて書いてあるものを見かけますのでご注意を。それだと「格子」や「焼き網」になってしまいます(grid)。 ワイルドフッド今回は,動物の青年期について書かれたこの本,『WILDHOOD(ワイルドフッド) 野生の青年期——人間も動物も波乱を乗り越えおとなになる』

収入によって性格の変化の様子が違ってくる

お金持ちたちと,そうではない人々とでは,年齢とともに性格は変わってくるのでしょうか。それとも,最初からそういう性格だからお金持ちになったのでしょうか。あるいは,お金持ちになることと特有な性格の変化との間には,何か共通した背景要因があるのでしょうか。 性格が年齢とともに変化していくという,多くの研究知見が世界中で報告されています。そして,研究結果については,細かく見ていくと矛盾する点もあったりするものです。 遺伝と環境パーソナリティ特性そのものが遺伝と環境によって形成される

収入が増えると幸せになるのはどんな人なのか

収入が多くなると幸福になる……「そんなの当然でしょう」と思うかもしれません。 国全体で見ても,国内総生産(GDP)の高さは,国全体の幸福感や生活満足度の平均値との間にプラスの関連をもちます。一方で,GDP成長率と生活満足度との間には関連が亡いという報告する研究もあるようです。 幸福感の中身こういう研究がされるときに,あまり幸福感とは何なのかという定義に注意が払われずに,「あたりまえのこと」として進められることもよくあるようです。とはいえ,とはいっても,では幸福感とは何かを

行動を抑制する気質とその後の性格

乳幼児期に観察される,行動や感情面での安定した個人差のことを気質といいます。気質という言葉は,temperamentという単語の訳語です。ちなみにこのtemperamentは「体液の混合」という意味からきている単語なのだそうですが,それはもともと古代ギリシャ時代や古代ローマ時代から伝わる,人間の気質を大きく4種類に分類する四体液説・四気質説に由来しています。 行動抑制傾向乳幼児期の気質には数多くの側面があることがわかっていて,多くの研究が行われています。 そのなかで注目さ

新型コロナウイルス感染症が教育に及ぼしてきた影響

2019年12月に中国で発生が発見された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,あっという間に全世界に広がりました。世界中の国々が,COVID-19の対策のために,手洗い,マスクの着用,人との距離をおくこと,集まりを制限することなどの対応をとることになりました。 また,自宅待機とロックダウンも世界中の多くの国で見られた対応策です。 対応策特に学校では,通学が制限され,多くの授業がオンラインで行われることになりました。一方でこの経験は,学校のオンライン化やデジタル化

信仰と政府との補い合う関係

今回は,心理学で行われている宗教の研究についてまとめられている書籍『ビッグ・ゴッド:変容する宗教と協力・対立の心理学』について紹介するとともに,そのなかに書かれていた信仰と政府との関係についての一節を紹介してみようと思います。 信仰と社会の拡大この本の紹介については,amazonの紹介ページに書かれているとおりなので,それを引用しておきましょう。 たとえば,人は実験的に宗教心を高める(宗教的な言葉を見たり,礼拝が行われる日曜日になったり)だけで,向社会的な行動が増えたりす

ダークな性格は年齢とともにどう変わっていくのか

ダークなパーソナリティといえば,ダーク・トライアドが知られています。これは,ナルシシズム(自己愛。自分が好き),サイコパシー(冷淡で罪悪感を抱かない),マキャベリアニズム(他者を思い通りに利用する)という3つのパーソナリティ特性のまとまりのことを指します。また,これらにサディズム(他の人の苦痛を見て快感情を抱く)を加えて,ダーク・テトラッドと呼ばれることもあります。 D最近,社会的に避けるべきパーソナリティ特性の総合体として,「D」と呼ばれる統一因子が研究されるようになって