子どもの気質に男女差はあるのか

心理学には「気質」という概念があります。現在では,パーソナリティ(性格)とは少し違う概念として扱われているのですが,歴史のなかでは,いまのパーソナリティとそんなに変わらないような概念も「気質」と書かれてきているような印象もあります。

昔の気質の定義を見ると,刺激への感受性や習慣的な反応の強さや速さ,気分の質や変動の大きさなどをあらわす,遺伝的な規定が強い心理的特性だとされています。現在では,気質は行動に表れるいくつかの側面として扱われていて,多くは乳幼児期から現れる行動・心理学上の個人差として捉えられています。

気質の特性がいくつあるのかについては,研究者によってまちまちです。しかしおおよそ,活動性の大きさ,感情の強さ,物事への接近と回避の志向性などが含まれることが一般的となっています。


代表的な気質

気質の研究といえば,まずはトーマスとチェスのニューヨーク縦断研究です。1960年代からスタートしており,長期間にわたって追跡調査が行われています。この研究では,活動レベルや生活リズムの安定度など,9つの気質特性が見出されています。

次に,バスとプロミンによる気質の整理です。ニューヨーク縦断研究で見出された気質も含めて整理し,乳幼児期から成人にまで継続してみられる気質として,感情の強さを意味する情動性,運動量の多さを意味する活動性,他者との親密さを表す社会性,反応の早さと抑制を意味する衝動性の4つに整理しました。

もうひとつ重要な研究は,ロスバートによるものです。気質を反応性と自己制御という要素から整理しており,非常に多くの気質特性を測定する尺度の開発も行われています。

気質の性差

さて,気質の話をするときに欠かせない素朴な疑問に,「男女で気質に違いがあるのか」というものがあります。そこで,メタ分析でこの問題を扱った研究を見ていきましょう。こちらの論文です(Gender differences in temperament: a meta-analysis)。

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