山下 ちとせ

夜ふかしもできない https://mirror.asahi.com/author/11009712

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マガジン

  • 夜ふかしもできない

    夜11時には眠くなるOLのつれづれなる日々

  • 映画のメモ

    観た映画の記録(Filmarksでも公開中)

最近の記事

香水で森を作りたい

香水が好きだ。 服装でいろいろ取っ替え引っ換え着ていると、あいつ毎日気合入ってるよ〜みたいに、大して近くもない距離感の他人からも叩かれたりするけれど、香水ならあまりバレずにおしゃれができると思う。 毎朝どの匂いにするか選ぶのも自分だけが知っている楽しみのようで、出先でもたまに香るその匂いにうっとりできる。 いつかどこぞで読んだ「パリジェンヌは毎朝必ず香水をふる」というコラムに影響され、最近は夜寝る前にハンカチにふって、翌日着る服と一緒に置いている。 今回は私の大好きなシダ

    • 仕事服の制服化

      突然だが、私の冬の通勤服はほぼ三種類しかない。タートルネックのニットが三色に、少しずつ違うチェックのパンツの同じ型のものが三種類。 順列組み合わせで9通りの組み合わせができるものの、そんな凝ったことはせずほとんど同じ組み合わせで職場に行っている。 普段の生活で決断するエネルギーを使わぬよう、いつも同じ服を着ていたというスティーブ・ジョブズに憧れたのが数年前のこと。 それまでは、買い物が大好きで退勤後にショッピングセンターをはしごしては、安い服をなんの計画もなくあれこれ買っ

      • ふつうが一番難しい

        去年の冬の初めごろ、急に朝がしんどくなった。目は覚めているのだけれど布団から出られず、出勤前は酷い気分で朝食もとれない。顔を洗いながら死ぬことばかり考え、とにかく自分の無価値を嘆いていた。 出勤にタクシーを使い出したのはこの頃だ。 なぜかひどく疲れていて、始業に間に合うよう家を出ることができなかった。出勤ギリギリの時間の混んでいる電車に乗ると、息が苦しくなってきたりもする。 このままだと突然仕事に行けなくなるのも時間の問題だと思い、心療内科へ行くことにした。 心療内科の

        • 銀座とお正月

          クリスマスはひとり、新宿の虎屋でぜんざいを食べたあと結婚相談所へ行ったので、なかなか気が沈んでいた。年始こそ気が晴れるようなことをしたいと思い、銀座に行くことに決めていた。 子どもの頃は全くその良さがわからなかったが、この歳ともなれば、仕立てのいいコートやぴかぴかに磨いた革靴で、思いきり背伸びしてブラブラしたい街だ。 まず、前々から予約していた資生堂のエステサロンに行く。私は実は今まで一度もエステの施術を受けたことがなく、生まれて初めての体験だった。 エレベーターでサロン

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        記事

          眉毛は薄い方がいい

          婚活開始のため、紹介用の写真を撮影してもらうべく写真館に向かった。 建物はこぢんまりしており、コンクリート打ちっぱなしの至ってシンプルなスタジオだった。 人からヘアメイクをしてもらうのは成人式ぶりだと思う。 担当はチャキチャキとした若い女性だった。 彼女はトークに長けており、ひょっとすると自分より年下かと思われたが、私より一枚も二枚も上手な印象だ。 「いつもメイク道具をスーツケースに入れて運んでいるので、物件を探すときにはエレベーター付きのマンションというのが必須条件」と

          眉毛は薄い方がいい

          クリスマスに結婚相談所に行った話

          先日、某大手結婚相談所に入会してみた。 アラサーといわれる年齢、周りも結婚を前提に付き合う女性が増えてきた。 年末を目前に、計画性のない私らしく急に焦り始め、迷うくらいならととりあえず体験入会の予約をした。 ちょうどクリスマスが土曜日だったこともあり(婚活開始日の翌日に仕事というのは気が重い)、その日に入れた。 私はその年の4月に、お付き合いしていた相手とお別れをした。将来を考えるには互いに譲歩しなければならない点が多く、あえなくあきらめる形となった。 もちろん昔は恋愛

          クリスマスに結婚相談所に行った話

          毎月死にたくなる女

          PMSという言葉が出来てから、生理について格段に話しやすくなったと思う。 SNSでも「生理だ〜」というつぶやきこそなかったものの、「PMSだ〜」なら頻繁に見かけるようになった。 かくいうわたしも、学生時代、毎月やってくる激しい鬱と怒りに耐えかねて婦人科の門を叩いた一人だ。 PMSとわからなかったころ、わたしは自分が精神を病んでしまっているのだと毎月考えていた。 月末になるとなぜか、どうでもいいことで脇目も振らず泣いてしまう。キャンパスで人が行き交う中、歩きながらダラダ

          毎月死にたくなる女

          アズミ・ハルコは行方不明

          女性たちから鬱映画だと口をそろえて評されるのを耳にしていたためか、なんとなく観るのを渋っていた「アズミ・ハルコは行方不明」。 敬愛してやまない蒼井優が主演ということでもずっと気になっていた作品でもある。 蒼井優演じるハルコはアラサー彼氏なし低所得、地方都市の実家暮らしOL。 職場はセクハラの巣窟で、退屈で陰鬱な毎日に倦んでいる。 スーパーで元同級生と再会したのを機に、セフレのような関係になる。  とにかくこの映画に出てくる男はホンッットウにみんなそろってクズ博覧会状態。

          アズミ・ハルコは行方不明

          (500)日のサマー

          サマーの突き抜けた魅力が映像からもバッスンバッスン伝わってきた。つかみどころもなくエキセントリックで飛んでるけどなんか気になる感じ。 こんな愛らしいジャケットでここまでビターなストーリーだとは思ってなかったので、恋愛のシビアな部分が不意打ちでグサグサきてメンタルがキツい。 後半で理想と現実がマルチスクリーンで流れる場面、誰しも共感してしまうんじゃないかと思う。 好きならあのくらいの期待はしてしまうけれど、相手は自分とは全くちがう思考回路で生きてるわけだから、そりゃあ思い通りに

          (500)日のサマー

          ルビースパークス

          好きな人ほどままならない。 恋人がなにを考えているのかわからない。 そんな不安やわがままをテーマにしているこの映画。 これは、ルビーがとにかくかわいい。 真っ赤な髪にカラータイツ、奇抜なファッションに情緒不安定な性格(っていうかメンヘラ)、これはめんどくさくも一度付き合ってしまったら強烈に後を引きそう。 それにしても、こんなルビーを妄想により生み出したカルヴィン、めちゃくちゃマニアックだけどハイセンスだなぁ好感もてるな〜〜 と他人事のように思ってしまった。 そして彼

          ルビースパークス

          害虫

          最近よく聞く「メンヘラ」というワード。気軽につかってはならない言葉だとは思うが、実際のところかなりカジュアルにつかわれている。 そして周りにちょっと「メンヘラ」風味の女がいると、人は「悲劇のヒロイン気取りで」なんて言ったりする。 よくよく考えてみたら、「悲劇のヒーロー」とはあまり言わない。 というわけで、世の中は「不幸な少女」がなにぶん好きなのだろう。 かくいうわたしも、華奢で色白の女の子が報われない日々をひたすら努力で乗り越えるような映画を観たら、思わず感情移入してしま

          アデル、ブルーは熱い色

          わたしが学生のときに折しも話題になっていた映画。 当時はLGBTというワードがまだ耳新しかった頃で、「女性同士のセックスを撮った」などとセンセーショナルな謳い文句で世に出ていた気がするが、とにかく斬新な映画として認識されていたと思う。 何せ出てくる人物たちはみな本能の赴くままにむさぼるように生きている感じがして、思わず見入ってしまう。ほんのちょっとした生活シーンでも欲求そのものをよく捉えている。 無心にぐちゃぐちゃとボロネーゼを食べ、口開けっぱなしで無防備に眠り、動物みた

          アデル、ブルーは熱い色

          愛がなんだ

          子リスみたいにかわいい岸井ゆきのちゃんとクズイケメン成田凌のコンボ。「女子ならみんな共感!!」みたいな売り文句で話題をさらってましたね。 「愛がなんだ」いやしらんし。 半スイーツ半サブカルのお食事クレープみたいな女子御用達の雰囲気映画でしょ、ハイハイ…と斜に構えていたらちがいました。 すみませんでした…。 まず、若葉竜也がアツすぎる脇役だっけ?と思う存在感。この映画の一番の見どころだと思う。 諦めると宣言しながら、葉子さんのこと本当に好きなんすよ、と震えながら言うところな

          女の時代、なんていらない?

          新年早々、ネットで沸いていた広告がある。 西武百貨店の「わたしは、私。」という広告。 https://www.sogo-seibu.jp/watashiwa-watashi/ 一女性として、私はこの広告に共感をおぼえたのだが、数多くの意見に目を通すとどうやら批判が多く、炎上しているようだ。 だからわたしはここで、この広告についてポジティブに記したい。 わたしはこの広告をひと目見て思った。 パイを投げられている姿は私そのものだ。 わたしは新卒で入った会社で、多忙と

          女の時代、なんていらない?

          演じるということ

          わたしは女優ではない。 現在しがないOLで、学生時代もしがない喫茶店でバイトをしていた。 けれどいつも感じているのは、自分が「演じている」という事実だった。 おそらく多くの人が無意識にやっているであろうことだと思うのだが、ある時ふと自覚的になってしまっただけだ。 そもそもそんなこと、何年も前に東京事変が歌っているよ、と言われたらお終いなのだが、ひとまずそれとこれとは別に考えて読んで欲しい。 女子校から出た瞬間、私は女であるという事実を改めて知ることになった。 サークルに

          演じるということ