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【映画】宗方姉妹(1950年 日本)  もりたからす

監督:小津安二郎 脚本:小津安二郎、野田高梧 原作:大佛次郎
出演:田中絹代、高峰秀子、高杉早苗、上原謙、山村聰、笠智衆

題は「むねかたきょうだい」と読む。「小早川家の秋」と並ぶ、小津の難読作品。

「晩春」と「麦秋」に挟まれた制作年だが、松竹でなく新東宝作品なので、手元の「小津安二郎 DVD BOX第2集」には収録されていない。

今年になって4KリマスターBlu-rayが出たのでようやく観ることができた。
以下、雑感をアトランダムに記す。

・高峰秀子が素晴らしい。小津のヒロインで最も自由に見える。以降の小津映画には「高峰秀子を目指したが、そこに達していない演技」の女優が散見される気がしないでもない。

・しかし小津作品を愛好するとは即ち、原節子と笠智衆を受容することなので、「良質な映画に演技力は必要なのか」という命題は残る。

・戦後数年の銀座、とりわけ教文館のショットが残っているのは大変嬉しい。

・山村聰はどこで観ても良い。退廃も鬱屈も爽やか。

・原作に比べ、節子の造形には疑問がある。心情の明言が増えたことでひどく身勝手な人物に映る。

・そもそも田中絹代が好みに合わない。「彼岸花」も田中絹代だけが嫌だったぞ私は。

・原作の結末をそのまま採っているので、ストーリーは無理がある。本編112分かけて主要人物の関係性をスタート地点に戻すだけなのでどうしようもない。

・最も軽薄なはずの満里子が、倫理的にはむしろ唯一真っ当である点が虚しい。

・私は「東京物語」もさほど評価していない。着地点として「死」を用いるやり方は小津には合わないのではないか。

・などと言いながら、有馬稲子の顔が好きなので「東京暮色」は傑作だと思っている。

・序盤、机に向かう笠智衆が「晩春」と区別が付かなくて笑ってしまった。

こんなところかしら。
原作と異なる点として「平岩」の割愛がある。彼の悪意と「前島」の無邪気さは原作のページを進める一助にはなったが、確かに蛇足か。

「宗方姉妹」
小津映画は好きなので、今後繰り返し観ることになるだろう。
しかし「好きな小津映画」ではない。

原節子の風情はやはり重要なのかね。



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