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スーラ描く「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を夢見て

4年前にお世話になったエッセイ教室に、今年からまた通うことになりました。隔週で1本約1200字。こちらでもボートのことを書いています。

前回のエッセイ【さらなる文章修行】

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令和2年12月10日付けの神戸市のホームページに掲載された「アートと海を感じる街づくりをめざす」計画のヘッドコピーを読んだ時、求めているキャッチコピーはこれだと深く感動しました。

神戸市HPキャプション
神戸市HP「HAT神戸をさらに洗練されたまちに~アートと海を感じるまちづくり~ 」


HAT神戸の西ブロックのなぎさ公園から東の美術館一帯の整備開発のキャッチコピーとして発表されていました。HAT (Happy Active Town)神戸は平成七年の阪神淡路大震災後の復興の象徴として、平成8年着工、10年使用開始された親水公園を含む人工副都市構想でした。

我々はこの海に面した人工都市を「ボートで元気に」の想いで、平成25年に実行委員会を立上げ、ボート体験教室そしてHAT神戸レガッタを開催し、今年で10年目になりました。

神戸市HP掲載イラスト
神戸市HP掲載イラスト「レガッタ等のための乗降施設:ハーバーウォーク西端」

ある時の打合せで担当課の方に「このキャッチコピーはどなたが発案されたのですか?」と尋ねますと、担当者が「私です、いいでしょう?」と自信ありげな返答。私は「すばらしいと思います、感動しました。”海を感じる”は我々ボートに任せてください」とお伝えした時のことを今でも思い出します。

コピー最初の「アートを感じる」に関しては、美の殿堂の県立美術館から北へ、JR灘駅を越えて原田の森美術館までをミュージアムロードの呼称のもと、ポップアートのオブジェや私設美術館が併設され景観が整っています。またHAT内の大型建築物もそれぞれに個性があり、現代建築の美しさを感じることができます。

ミュージアムロードmapキャプション
兵庫県「ミュージアムロード魅力発信事業の展開」より「ミュージアムロードマップ」

一方「海を感じる」の方は季節ごとに海の鼓動は感じられるものの、柵で覆われ人間の入れない海であることには変わりがありませんでした。

古くは白砂青松の敏馬の浜として和歌にも多く詠われ、明治から昭和の初めまでは居留外人達や学生達のボート競技のメッカとして数々のレガッタが開催されてきました。その後は悲しいかな阪神間にあるという好立地のため大阪、神戸の工業地帯として、敗戦そして戦後復興まで日本を支える重厚長大産業の基地としての役割を余儀なくされました。

しかし時代は必ず変遷していくものです。最近の産業構造の変化により港湾業務は沖合の人工島へ移動、また工場群も分散配置され、ど真ん中の海の水、空気は徐々に清浄化が進み、六甲山を背にした海の自然が復活してきたのです。

サムネ3
朝のHAT神戸

スポーツを通して海を感じることができる条件が整ってきたのです。環境面でも安藤忠雄氏デザインの海を目の前にした、階段状防潮構造物、海と空を見つめ、未来感のあるオブジェ「なぎさチャン」など、海を分かりやすく感じさせてくれるオブジェが出現してきました。

しかし海を体感するための基本的スポーツ設備はまだまだこれからと言わざるを得ません。地元の皆さんとのチームワークが必要ですし、次の世代までかかるかもしれません。

ボート教室の様子。HATの海を西側から臨む

しかしこの先の未来のイメージは私にははっきり見えています

1886(明治19)年、フランス後期印象派の点描画家ジョルジュ・ピエール・スーラが描いた「グランド・ジャット島の日曜日の午後」の絵の世界と重なっているのです。そこには着飾った紳士淑女の背景の川に、白いパラソルの女性コックスのクルーが静かに漕ぎ出していくのが描かれています。日曜日の午後、ゆとりある市民達が集い、その中でボートを楽しむ姿が描かれているのです。

HAT神戸レガッタ
「HAT神戸レガッタ」の様子

HATの未来の休日の夢がこの名画に重なって見えるのです。十年の活動の中で、いつかこの日曜日の午後がきっとくると信じるようになりました。その未来に向かって心ある人達と前進していければと強く思っております。

2022/02/17
アストロケン

前回【さらなる文章修行】     次回【自称「漕艇学部」卒業です】

この絵については過去の感動エッセイでも書いています。



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