【#51】材料力学の強化書 〜降伏条件と降伏曲面について(1)〜
今回のトップ画像は最近新たにできた「高輪ゲートウェイ」の外観です。実際に降りたことは無いのですが、通過中に眺めていると、他の山手線の駅に比べて近代的な様相をしていることが分かります。
都市としての発展過程を垣間見ることができます。新しいものが好きな人にとっては、眺めるだけで楽しめる要素になるかもしれません。
さて、材料力学の話に戻りましょう。
前回は単軸引張荷重を受ける棒や、曲げモーメントを受けるはりにおいて、弾性変形から塑性変形に移るとどうなるかを確認しました。
今回から多軸応力状態における、降伏条件と降伏曲面について見ていきます。まずは降伏条件について、代表的なものに「トレスカの降伏条件」と「ミーゼスの降伏条件」があります。それぞれの特徴について理解していきましょう。
主応力について 〜復習〜
応力成分は垂直応力とせん断応力の9成分で構成されます(せん断応力の共益性から実質は6種類です)。
応力成分の値ですが、座標軸の取り方で変わります。つまり、座標軸の取り方次第ではせん断応力成分がゼロになる場合があります(垂直応力成分だけの状態になることを言います)。この時の垂直応力成分を「主応力」と言います。
この考え方は降伏条件を説明する上で必須なので、必ず頭の中に入れておいてください。
トレスカの降伏条件
トレスカの降伏条件は求め方が簡単なので、設計現場でもよく用いられます。まずはこちらから説明します。
一般的に引張荷重を受ける平板が降伏点に達すると、荷重方向に対して45°の方向にすべり面を生じます。一方で、主応力に対応する座標軸の方向と最大すべり面(最大せん断応力を生じる面)のなす角度も45°です。
つまり、最大すべり面ですべりが発生する現象と降伏の現象は対応関係にあるということです。トレスカの降伏条件はこうした実験事実に基づいて提案されたものであり、最大せん断応力説とも呼ばれています。
ここで、すべりが生じる時のせん断応力(臨界せん断応力:k)としたとき、最大主応力の最小主応力の差が次の式を満たしたら降伏するということが、トレスカの降伏条件になります。
$${\sigma_{max}-\sigma_{min}=2k}$$
2次元の場合は単純に2つの主応力差を考えますが、3次元の場合は最大・中間・最小の3つの主応力が求まるので、そこだけ注意が必要です。
ミーゼスの降伏条件
トレスカの降伏条件は3つの主応力のうち、最大値と最小値だけで評価していました(中間主応力は考慮されていませんでした)。
ミーゼスの降伏条件は、3次元における3つの主応力の全てを考慮した降伏条件です。せん断ひずみエネルギーがある値に達すると降伏するという条件を、ミーゼスの降伏条件と言います(せん断ひずみエネルギー説とも呼ばれています)。
少し導出が長いので、ノートでまとめてみました。多軸応力状態におかれているときに、上記の赤字の式に応力値を代入することで、それと等価な単軸応力状態の値が得られます。これが相当応力(ミーゼス応力)の重要性が高い理由です。
相当応力は一般の応力成分でも表すことができます。
$${\={\sigma}=\sqrt{\frac{1}{2}[(\sigma_{xx}-\sigma_{yy})^2+(\sigma_{yy}-\sigma_{zz})^2+(\sigma_{zz}-\sigma_{xx})^2+6(\tau_{xy}^2+\tau_{yz}^2+\tau_{zx}^2)]}}$$
3次元応力状態では、相当応力から降伏条件と比べて降伏を判断します。単軸引張では「σ1=σ、σ2=σ3=0」なので、相当応力は単軸の応力成分に帰着することが分かります。
おわりに
今回は塑性変形の特徴である降伏に関する2つの条件を見ていきました。
ミーゼスの降伏条件は実験的にも正しいことが確認されており、実際の変形解析(ソフトウェア)の中に組み込まれています。また、相当応力(ミーゼス応力)は、多軸応力状態の応力成分を単軸応力状態に置き換えることができるので非常に便利です。
次回は降伏条件の次の話として、降伏曲面について見ていきたいと思います。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。
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