製品設計と物理科学シミュレーションの背景知識である連続体力学の書籍紹介
自分は物理現象のシミュレーション(数値解析)を生業としています。製品設計などの過程で発生する物理的問題を分析して対策を講じるには、数値解析の技術が必要不可欠と言われています。
製品(物体)の捉え方のひとつに「連続体」という概念があります。連続体は物体の形状・質量・変形の3種類の情報を扱います。そして、連続体の力学問題を数学的に扱う学問として「連続体力学」があります。
学生時代に勉強として書籍を購入しましたが、当時は殆ど理解できず、挫折しましたが、改めて現在読み進めています。
今回は連続体力学の勉強に利用した上記の書籍の紹介と、連続体力学の意義や面白さをお伝えしたいと思います。
◾️参加企画(趣旨)
サークル(note大学)のstudy部と子育て教育部の共催企画にて、イチオシの本を紹介することになりました(アヤ先生曰くマニアックな内容が喜ばれそうでしたので、この書籍を選択しました)。
連続体力学を勉強する意味
結論から書きますが、連続体力学を学ぶことで、目前の物理的事象に対して本質的な分析を行う術を修得できます。モノづくりに関わる全ての業務に通じる、極めて実践的な学問なのです。
例えば、連続体力学を活用した数値解析の代表的手法として「有限要素法」があります。何か製品設計を行うにあたり、耐久性能など製品特性を現実にある試験を通じて確認します。ただし、試験では往々にして目視できる範囲で発生した問題を確認することに留まりがちです。
そこで、有限要素法(ソフトウェア)を取り入れることで、物体内部まで問題に対する確認範囲を拡げられます。
ただし、シミュレーションを通じて物理現象を分析するのは、設計者(解析者)の仕事です。様々な視点から問題の是非を議論するためには、連続体力学の知識が必須です。
例えば、物体内部に掛かる力(応力)を確認する場合においても、連続体力学の観点から見て、主に次の3種類があります。
応力成分:座標軸(方向)に対する応力値
ミーゼス応力:応力成分を総合的に見た応力値
主応力:変形が卓越した方向における応力値
このように、数値解析法と連続体力学を合わせることで、物理的事象に対して適切な見方から現実性のある分析が可能になるのです。
連続体力学と材料力学
往々にして、連続体力学は大学(理工学部)で学習する「材料力学」に近い学問と言われています。
連続体力学は変形という事象に対して「構成式」と呼ばれる関係を定義することに重きをお置いていますが、材料力学は複数の変形(形態)を分類し、特徴を抽出することに重きを置いています。
構成式とは、力(応力)と変形(ひずみ)の関係を表した方程式です。代表的は「フックの法則」と呼ばれる、弾性変形を表したものです。フックの法則は一般的に金属において成立します。ゴムなどの非金属の場合はより複雑な構成式が存在します。
連続体力学と流体力学
連続体力学は流体力学にも通じるところが多い学問です。両者で使われる数式は似ているものの、物理現象の捉え方に違いがあります。
連続体力学は本来は金属などの固体を対象としますので、変形の観測は空間に固定された点から見る形で扱います。この観測方法を「オイラー法」と呼びます。
一方で、流体力学は移動する分子や粒子の集合体が変形を起こすと考えます。つまり、変形は基本的に移動する点から見た観測になります。この観測方法を「ラグランジュ法」と呼びます。
連続体力学を学ぶことで、同時に流体力学に関する知識にも転用できます。内容に対して難易度こそ高いですが、少なくとも物理学の理論を背景とする数値解析を進めるには、是非とも勉強しておきたい分野だと思います。
おわりに
今回はサークルの企画参加ということで、書籍「例題で学ぶ連続体力学」を紹介しました。
書籍を理解する上で難易度を具体化しますと、冒頭から「テンソル」という概念が登場します。これは数学で言うところの「行列論」に近いものです。これに加えて、微分積分(偏微分と重積分)も多く登場します。
そのため、大学生(理工学部)を無事に卒業できる程度の力量は欲しいところです。ただ、モノづくり系統の産業分野では時として重宝する基礎知識ですので、読んで損はないかと思います。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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