【#45】材料力学の強化書 〜長柱の座屈現象(3)〜
今回のトップ画像はスペインのバルセロナにある、サクラダファミリアです。スペインを代表する建築家のアントニ・ガウディの未完作品(キリスト大聖堂)なのだそうです。
ガウディは曲線を使ったユニークな建物を設計することで知られています。その技術は現代にも応用されているので、いかに彼が天才的でセンスのある考え方をしていたかが分かります。
さて、材料力学の話に戻りましょうか。
前回は一端固定支持についての座屈発生の条件について見ていきました。両端回転支持の時に比べて微分方程式が難しくなりましたので、数式を追える方は数学の練習だと思いながら解き進めてみてください。
今回は両端固定支持の場合についての座屈現象を確認します。座屈の条件については境界条件の違いにも左右されるので、難しい方は「オイラーの座屈荷重」の部分だけでも見比べてみてください。
座屈について 〜再掲〜
長い柱に軸圧縮荷重を加えると、軸線に垂直な方向に変形する(たわみが生じる)ような現象が生じます。これを「座屈」と呼んでいます。また、座屈の生じるときの荷重を「座屈荷重」と呼びます。
座屈荷重は主に柱の長さ、横断面の形状、材料のヤング率に依存しますが、柱の支持条件にも左右されます。今回は両端固定支持の場合について追います。
一般的に座屈応力は降伏応力よりも小さいことが知られているため、長柱を設計で用いる場合は座屈応力を基準に行うことが多いようです。
基本的な例題(両端固定支持)
実際に両端固定支持の条件での長柱の座屈について、数式を用いて追いかけてみます。たわみの基礎方程式を利用して、実際に微分方程式を解く作業になります。微分方程式の具体的な解き方は参考書などを当たって頂ければと思います。
今回は2ページに渡りました。今回の微分方程式も「非斉次」であり、一端固定支持の場合のように、右辺がゼロのときの微分方程式の一般解に加えて、今回の微分方程式の解をひとつ決めて足し合わせます。
実際に求めた解から先の手順は前回と同様です。境界条件が多いので、それらの処理はひとつずつ順を追いながら解き進めます。今回は境界条件からふたつの式が導かれます(1ページ目の下方にあるふたつの関係式)。
それぞれについて検証します。結論から言うと、前者の関係式から座屈荷重が求まります。ふたつの式から座屈荷重を仮にそれぞれで求めたときに、前者の方が座屈荷重が小さいことが理由です。
$${P_c=\frac{4\pi^2EI_z}{l^2}}$$
この式から求められる荷重のことを「オイラーの座屈荷重」と言います。
座屈荷重が曲げ剛性($${EI_z}$$)に比例することも前回と同様です。
座屈応力は単純に座屈荷重を断面積で除することで求まります。この値は通常の降伏応力を下回ることが一般的なので、柱を使う際には座屈応力を基準に設計することもあります。
おわりに
今回は座屈現象についての説明と、両端固定支持の場合についての座屈発生の条件について見ていきました。
既に書いている通り、長柱の場合は通常の降伏応力の他に、座屈荷重による応力を考慮する必要がある、ということを定性的に理解することがだいじです。
また、今回はふたつの式を比較しましたが、この時も座屈荷重は値として小さい方を採用しています。小さい荷重で大変形が起こることに着目することに重点を置いています。
次回は偏心荷重を受ける長柱の座屈現象について、説明することにします。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。
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