見出し画像

卒業論文をやり直す会⑤|2022年6月

第5回オンラインミーティング(飲み会)では、各メンバーとも調査が進んだり章立てを組んだりと、動きがありました。いつも20時くらいから始めるのですが、今回は21時から。みんな、お仕事おつかれさまです!

目次

  1. 進捗発表

  2. あさの|ルネ・ラリック つむじ風

  3. TTR|グスタフ・クリムト メーダ・プリマヴェージの肖像

  4. Kちゃん|アモルとプシュケの図像

  5. M氏|鴨居玲にみるゴヤの影響

  6. 総括

進捗発表

あさの|ルネ・ラリック つむじ風

ルネ・ラリック《つむじ風》1926 大一美術館蔵ほか

手元にある文献を注意深く読み直しました。まだ新しい発見がある、節穴すぎる。
ラリックはロンドンのシデナム・カレッジに学んだとありましたが、火事のために当時の資料は残っておらず。また、書簡や日記のような一次資料が少なく、スケッチや注文表などに当たるのが難しいと判断しました。

今回は、素材と技法、シダのモチーフについて、元のデザインを担当した娘シュザンヌについて発表しました。
ドゥミ・クリスタルは、鉛の含有量が通常より少ない素材で、明るく透明度が高く、柔らかいためプレス成形に適した素材でした。18世紀末〜19世紀のアール・ヌーヴォー期ではガレやドームのように、素地に色層をつくったりエナメルでモチーフを描きこむものが主流でしたが、1945以降は透明クリスタルブームが起こったそう。
シダのモチーフについては、キリスト教との関係、ヴィクトリア期の博物学的関心、かつてガラスの原料にシダの灰を用いたことから、ガラスとも深い関わりがあったことがわかりました。
以上の点については、今後ガラスの歴史を調べて確証を得ていきたいです。

娘シュザンヌは1910年ごろから父の事業にデザイン担当として参画していました。
彼女はリモージュ磁器の有名メーカー「アビランド」の一族に嫁いでおり、磁器のデザイン、装飾屏風や絵画、舞台美術などで才能を発揮していました。写真家の夫、キュビスム画家の義理の兄から影響もあり、モダンで軽やかなデザインを特徴としています。
本作の力強く抽象的なデザインも、彼女のデザインをアレンジしたものです。

TTR|グスタフ・クリムト メーダ・プリマヴェージの肖像

グスタフ・クリムト《メーダ・プリマヴェージの肖像》1912–13 Gift of André and Clara Mertens, in memory of her mother, Jenny Pulitzer Steiner, 1964

単体・複数問わず、子どもを描いた作品を集めてじっくり観てきました。

クリムトは、自分とモデルとの間に子どもができたと判明したとき、鬱になったのだとか。いや、やることやっといて、そりゃないだろうよ。
しかし、息子オットーの死をきっかけに「生命の円環」をより意識。色彩に囲まれた人物=生、黒を纏った人物や老人、骸骨=死を対比的に描くようになります。
特に赤ん坊をカラフルなピラミッドの頂点に据えた作品《赤子(ゆりかご)》(1918)は、生命の尊さの頂点を表しているかのようです。

また、クリムトの人物表現の傾向として、顔はくっきりと詳細に描写するものの、服は背景と一体化させる描き方があります。つまり、顔ハメ感です。
それも黄金時代と呼ばれる1900年代と1910年以降で、微妙に表現が異なります。
記号や柄で埋め尽くされて背景と地続きになった身体から、やわらかい筆致によって背景に溶け込んだ身体へ、変化していくのです。

今後は、本作のモチーフを「少女=子ども時代の終わり」と位置付け、成熟した女性との描き方の違いをみていきます。

Kちゃん|アモルとプシュケの図像

ウィリアム・アドルフ・ブグロー《アムールとプシュケー、子供たち》1890、個人蔵

アモルとプシュケ年表が初公開されました!
アモルとプシュケは先生受けのいい無難な主題だったようで、さまざまな時代の作家によってあらゆるシーンが描かれています。2世紀のアプレイウス『変身物語』(通称『黄金の驢馬』)を原典としてシーン分けをすると、全シーンが集まるそう。すごい!

・全シーンの作品を、通しでディスクリプション(言葉で詳細に説明)する
・どのシーンが多いか分布を調べる
・時代別に、歴史と絵画の関わりについて調べる
・同じシーンを描いた複数の作家の作品を比較する
など、いくつか切り口が考えられますが、興味の沸いた方向で進めていくことにしました。

M氏|鴨居玲にみるゴヤの影響

鴨居玲《1982年 私》1982 石川県立美術館蔵

進捗としては、章立てを組んでいき、序論を書き進めたとのこと。早い!

序論 問題提起
第1章 ゴヤ その生涯、スペインの美術教育への影響、黒い絵について
第2章 鴨居玲 その生涯、暗い絵について、現代の若年層からの支持・影響
第3章 比較 ゴヤと鴨居玲との関連を論じた先行研究を紹介
第4章 両者の作品比較

ゴヤは新しい美術学校を設立する際に、ディレクターを務めました。以降のスペイン絵画にはゴヤの思想が反映され、名画の模写や写実を重要視するものになっていきます。
そうしたゴヤ的な表現が時代や国境を超えて、鴨居に伝播したのではないか。
そうした方向に持って行けたらと考えています。

総括

調査も進み、方向性や考えもまとまってきたので、そろそろ章立てを決めて、書けるところから書いていくといいのでは。締め切りから逆算すると、9〜10月くらいには本格的に執筆を始めたいところです。

それと個人的にですが、オンラインミーティングでフィードバックをもらい、やる気や元気が出てきました。noteとか書いて何か意味があるのかな、と思ってしまう時もあるのですが、楽しみながら続けていきたいです。
いやぁ、家族以外と言葉を交わすの大事ですね!

この記事が参加している募集

よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートでミュージアムに行きまくります!