【北イタリアひとり旅：序章】Ep.02『言葉の曖昧さ』

【旅（たび）】住んでいる所を離れて、よその土地を訪ねること。

　「旅」という言葉の曖昧さについて、わたしは常々、振り回されています。たとえばそう、わたしがこれからしようとしていることは果たして旅と呼ぶべきなのかどうか、悩んだときに。客観的な意味を求めて「旅」の意味を辞書で調べてはみるのですが、書いてあることはおよそふわふわしていて、あるいはほとんど意味を持っていないのではないか、そう思えることばかり。

　しかしどうでしょう。実際に旅に出てみると、その曖昧さが、むしろわたしの旅を支えているのではないかと、そう感じることもあります。どの辞書だったかは忘れてしまいましたが、「旅」の意味が載っているページの隅に見つけた少しの空白を、都合よく捉えてしまった時と同じです。つまり、その曖昧さは、実際に旅をしてわたし自身が具体的にしていくものなのではないのかと、辞書のそのページの空白は、わたしが自ら旅をして、「旅」の意味を付け足していくためにあるのではないかと、そんなことを思ってしまうのです。

in Venezia, Italy Jul.2024