広報・PRを外注するときのポイント<企業がビジネス相性を見極める質問集つき> VOL.3
プレスリリースのライティングを外注している企業の中には、価格の幅が広く、誰に依頼すれば良いか迷う企業もいらっしゃるかと思います。その一方AIにだって書けるものだから社内の誰かが書いてもいい、という認識を持つ企業もあるかと思います。
またここ数年、プレスリリースの役割も変わってきました。
以前は記者や編集者など、メディアに渡すための資料でしたが、今はオウンドメディアコンテンツを目的にしている企業もあるのではないでしょうか。
ちょっと裏の話をします。
私は以前、世界に支社を持つPR会社で働いていた経験があり、クライアント企業も外資系、日系問わず、中〜大企業が中心でした。そしてクライアント企業の広報部に所属するのは、大抵が広報PRで長年ご経験のある方々でした。
そんなクライアントを相手に、「プレスリリースを書くことができます」と自信を持って手を挙げられる社員は、PR会社なのに10%程度しかいませんでした。それが世間ではどうでしょう。「プレスリリース書けます、得意です」と言う人が山ほどいます。見よう見まねで書いている人、発注元企業が素人だから、それでまかり通せる事例が多く発生しているように見受けられます。
書き物のクオリティは証明するのが難しいものでもありますが、企業の納得感を基準にするのか、そうでないのかは、事前に考える必要があります。
3.プレスリリースを発注したい
まずはこのプレスリリースに何を求めるのかを考えましょう。メディアからの注目を得て、取材等を獲得することですか?それともオウンドメディアコンテンツの拡充ですか?
ただ心に留めておいた方が良いのは、どのような目的にせよ企業の「格」を表す文章であり、資産でもあります。いかなる目的であっても、最初の質問は同じです。
これまで書いてきたプレスリリースの実績と、いくらくらいで発注できるのかを教えてください。また独自記事に結びついた事例があれば教えてください
これはごく普通の質問に見えますが、できればどの企業のどのプレスリリースを書いたのかまで聞き出した方が良いでしょう。
理由は二つあって、そのプレスリリースがどのくらい独自記事になっているのかをネット上で簡易的に調べ、裏付けを取れるということ、また複数のライターやフリーランス広報PRに依頼している企業もあるので、どのプレスリリースを書いたのか明確に示してもらい、「どんな文章を書くのか全くわからない」という状態にならないためです。
PRワイヤーを使って配信をすると、自動的に記事が上がってくる「転載」は、書いた人の力量にあまり関係ないことが多く、そのため独自記事まで結びつけることが、大きな山場です。厳しいようですが、「独自記事になったのか覚えていない」と言われたら、あまり考えずにただ書いていると、私なら認識します。ただし、独自記事になるのは容易ではないので、「まだありません」と言われたら、それを重く受け止める必要はないし、オウンドメディア目的で、自分はそこに強みがあると説明されたら、ニーズがマッチするかを考えれば良いでしょう。
また価格帯が全く合わないこともあるかと思います。最初から発注できる価格が決まっているのであれば、質問をする前に共有した方が良いでしょう。フリーランス広報PR側も、言い値で請け負う人、自分の価格帯がある人などさまざまですが、全く価格帯が合わないのであればご縁がないのかと思います。多少想定より高くても、話を聞いてみたいのであれば、その旨を率直に伝えてみても良いでしょう。
3-1.メディアリレーションを目的とする場合
メディアリレーションを発注側企業が行うのか、それともフリーランス広報PRの人に依頼するのか、いずれの場合にせよメディアの対象読者・視聴者が興味を持ちそうな点を理解していること、業界に精通していることも重要です。
その分野の記者、編集者とやり取り、情報交換等を直近で行なっていて、フレッシュな情報を仕入れられる状況なのかがわかれば一番良いのですが、フリーランス広報PRではなくフリーランスライターに依頼を検討する場合もあるかと思います。また、より多くの実績を求めると、コストがどんどん上がっていくことも考えられるので、次の質問を追加するくらいに止めるのが良いでしょう。
最近のXX関連のニュースで、何か印象に残ったものはありますか?
これは単純に、その分野に興味があるかないかを尋ねると、「興味があります」と答えてくると思うので、具体的に聞き出してみてください。興味がなくても、経験になる、お金になるといったことで仕事を引き受けたい人もいます。それをスクリーニングするのか否かの判断も含め、決定するのは発注側企業の役割なのです。
余談ですが、私はESGやSDGs、サステナビリティ関連を中心に仕事をしていますが、最近一番驚いた他人の記述ミスは、「アニマルフェア」と書かれた「アニマルウェルフェア(動物福祉)」案件です。書いた方が「アニマルウェルフェア」に馴染みがないことが即座にわかり、企業側が校正もしていないようで、企業のレベルが低いことを自らプレゼンテーションをしているようなものだな、と思いました。
3-2. オウンドメディアコンテンツの拡充を目的とする場合
メディアリレーションを目的とする場合と、オウンドメディアを目的とする場合では、興味をひきたい対象のオーディエンスが異なります。
全ての人の心に刺さるタイトルをつけることができる、と言えば聞こえが良いですが、優先順位は絶対に必要でしょう。とは言え、言われてみると納得だけど、対象オーディエンスの違いは言われて気がついた、という方もいるかもしれません。そこが基本的なポイントだと思います。
オウンドメディアとしての活用を中心に考えているのですが、メディアリレーションを目的とする場合のプレスリリースと何か違いはあるのですか?
と聞いてみてください。
ターゲットオーディエンスが設定されている文章なので、その説明を理解しやすいようにしてもらえるか、試してみて欲しいのです。
私は、メディアリレーション向けのプレスリリースを長年、そして数多く書いてきましたが、オウンドメディア向けの文章なのか、単にスキルの問題なのか、違和感を強く感じるプレスリリースに数多く出会います。
もう少し明確に書くと、ニュースバリューを上げるために、どのように書けば「世の中にまだ存在しないものを発表するというニュースを作れるのか」を一番に考え、次にそのプレスリリースがどこかで独自記事になったときのタイトルをいくつか想定し、と構造的に考えていくのですが、最近は日本語がおかしいプレスリリースもあれば、やたらと"!”や”!?”を使って、煽っているように見えるプレスリリースも多く、明かにメディアにニュースを届ける意図ではないなと見てわかります。
熟練具合というだけでなく、物を考えて書く人なのかどうかを見分けられることが、ちょっとの工夫でわかることもあるので、是非試してみてくださいね。
また、プレスリリースは時間にルーズな人に発注をするのは避けるべきです。配信時間が遅れることが、あまり影響がない企業もあるかもしれませんが、連名のプレスリリースの場合は複数企業のチェックが必要となり、さらに大企業になると配信前に省庁に48時間前に提出しなければならないなど、締め切りは厳守しなければならなくなります。時間通りに進めることを、初期段階から意識する習慣を持つのは重要だと思います。
VOL.3 所感
私自身は、プレスリリースをきっかけにしたメディアリレーションというのは広義で、かつ長い目で見ています。言い換えるとプレスリリースを送りました、転載XX件、独自記事XX件という1アクテビティに対して得られた量的な結果が全て、という見方はしていません。
わかりやすい具体例をあげるとすれば、「XX社はX月X日、XXという新サービスを発表した」という内容のものであれば、この新サービスをメディアに取り上げてもらうことだけを目的にしないという意味です。
もちろん、取り上げてもらえるのであればそれは嬉しいことです。ただ上記のメッセージには、「このような新サービスを発表できるのは、同社には優れた経営陣がいて、業界のソートリーダー」という言葉を直接的に書かずに意味を含ませます。もちろん、実態が伴っていることを理解していることは必要不可欠です。これは経営戦略及びブランディグ戦略にも関わるところなので、プレスリリース一回ごとの発注ではなく、長いお付き合いをするメリットはそういうところにあるのだと思います。
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