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チョコレートには包まれていない小説

『アーモンド』ソン・ウォンピョン (著), 矢島暁子 (翻訳)( 単行本 – 2019)

2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位!
韓国で40万部突破!13ヵ国で翻訳!
「涙を流さずにはいられない」――全世代の心を打つ、感動と希望の成長物語。

“感情"がわからない少年・ユンジェ。
ばあちゃんは、僕を「かわいい怪物」と呼んだ――

「ばあちゃん、どうしてみんな僕のこと変だって言うの」
「人っていうのは、自分と違う人間が許せないもんなんだよ」
扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ。
そんな彼は、十五歳の誕生日に、目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、ただ無表情でその光景を見つめているだけだった。
母は、感情がわからない息子に「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」「欲」を丸暗記させることで、なんとか“普通の子"に見えるようにと訓練してきた。
だが、母は事件によって植物状態になり、ユンジェはひとりぼっちになってしまう。
そんなとき現れたのが、もう一人の“怪物"、ゴニだった。
激しい感情を持つその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていく――。
「わが子が期待とは全く違う姿に成長したとしても、変わることなく愛情を注げるか」
―― 出産時に芽生えた著者自身の問いをもとに誕生した、喪失と再生、そして成長の物語。

人の感情を司る脳にある2つの赤い扁桃体をアーモンドというらしい。生まれつき扁桃体が小さく感情がない少年の成長していく姿を描いたちょっと変わった青春小説か。韓国小説だからかいきなり少年の母親と祖母が通り魔殺人に出会う。母は植物人間状態で祖母は惨殺。祖母は少年を助けるために惨殺されたのだけれどそれにも感情を出せなかった少年。そんな少年は怪物(最初は祖母が可愛い怪物と呼んだ)と呼ばれる。感情がないからAI人間のようなストーリーになるのかと思ったら違った(冷酷な殺人者になるかと)。

対称的な感情を抑えきれないゴニという暴力的な少年と出会うことで成長していく。シングルマザーである母親は本屋で生計を立てその大家である元心臓外科医のパン屋の主人が後見人としてユンジュの面倒を見る。何でも話せるカウンセラーのような存在でユジュの支えになってくれる。不良少年になっていくゴニと友達になっていく。それも力が全てだとゴニは悪行の道に進んでいく。そんなときにユンジュはクラスメートの陸上部の女の子と友達になり、それが恋に発展していく。その心の揺れを感じることによって扁桃体も育っていったというストーリー。

ラストはゴニとの最悪な対峙となるのだけれども、その事件さえも乗り越えて手記を書いているという小説だった。読みやすく青春小説的な読後感がいい。ベストセラー小説だけど、軽くはない。(2020/06/10)


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