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クジラの竜田揚げと先割れスプーンの思い出

『給食の歴史 』藤原辰史(岩波新書)

小中学校で毎日のように口にしてきた給食.楽しかったという人も,苦痛の時間だったという人もいるはず.子どもの味覚に対する権力行使の側面と,未来へ命をつなぎ新しい教育を模索する側面.給食は,明暗二面が交錯する「舞台」である.貧困,災害,運動,教育,世界という五つの視角から知られざる歴史に迫り,今後の可能性を探る.
目次
まえがき――給食という舞台
第1章 舞台の構図
 1 給食再訪
 2 給食史研究の前提
 3 世界の給食史概観
 4 世界給食史への視線
第2章 禍転じて福へ――萌芽期
 1 給食のあけぼの
 2 火災と飢餓のなかで
 3 戦時下の給食
 4 禍と実験――萌芽期のまとめ
第3章 黒船再来――占領期
 1 子どもたちの戦争は終わらない
 2 戦後給食制度の胎動
 3 脱脂粉乳
 4 占領期の給食の思想
 5 飢えと理念――占領期のまとめ
第4章 置土産の意味――発展期
 1 存続の危機
 2 学校給食法の制定
 3 給食が変えた食生活
 4 給食の思い出
 5 すずらん給食――隔絶された村で
 6 包摂と排除――発展期のまとめ
第5章 新自由主義と現場の抗争――行革期
 1 センター反対運動ののろし
 2 先割れスプーン論争
 3 続出する問題,叢生する運動
 4 給食の危険性
 5 調理現場からの運動
 6 新自由主義のターゲット
 7 合理化と抵抗――行革期のまとめ
第6章 見果てぬ舞台
 1 クライマックスの予兆
 2 給食で飢えをしのぐ
 3 給食の来し方行く末
あとがき
主要参考文献/日本の給食史年表/索引

出版社情報・目次

藤原辰史の名前を最初に知ったのはコロナ禍のパンデミックの初期の段階で提言を出していた文章に感銘を受けたからだ。これは無料でオンラインで読めるので、ぜひ読んで見て欲しい。

学校給食の想い出といえば世代間のある人と飲みながら脱脂粉乳の思い出話になってそれを知らない世代は幸福だと言われたことかな。例えば自分たちの世代だとクジラの竜田揚げが結構ハードな食べ物だった(好きだったけど、今はなかなか食べられないだろう)。

そんなある世代に共通の話題があるのが学校給食ということになる。牛乳に入れた粉末コーヒーの美味しさとか、今ではなんでもないものだと思うが。

そもそも給食が始まったのは軍隊であまりにも貧弱な身体では戦えないということからだという。日本の学校給食はすでに戦前にはあったそうで、そのノウハウがあったから戦後の食糧難の時代にアメリカの余剰生産であった小麦や牛乳(これは脱脂粉乳)を緊急援助ということで活用できたという。

もっともアメリカ側では日本の食生活を変える(米食から小麦食へ)目的もあったが(阿部和重『シンセミア』で米食からパン食にするためのアメリカの陰謀論とか書かれていた)、思ったようには進まず小麦粉もパンよりも麺類に活用されたとか。だが子供たちが給食により舌が日本食から西洋食(日本流にアレンジしたのだろうけど)になっていったのだという。そういえばハンバーグとかいつの間にか食卓に並ぶようになっていたのは給食とかの影響なのか?レトルト食品の進歩もあるだろうけど。

小学校で転校したとき、前の学校では給食室があって、献立をおばさんたちが作っていたのだが転校先では給食センターから運ばれてきたものだった。その頃の給食はあまり思い出がなかった。中学になると給食はなく、弁当持参で母がいつも文句を言っていたような。食べたいものが違っていた。だから高学年になるとパン屋で買って食べていた記憶があった。

今はどうなのか、貧困家庭で満足に食べられない子供がいるとか。そんなときに給食はやはり有り難いだろう。子供も気兼ねなく食べられたなら、その方がいいと思うが、今は違った問題(添加物や安全性)で弁当持参のほうがいいという親もいるという。

都市と地方ではその家庭状況も違うし、給食によって貧困家庭が救われるのは事実としてあるのだから無くさないで欲しいと思う。細かいところでは問題もあるがそれは個々で解決策を探っていくようにするのがいいと思う。日本が豊かになると給食は社会主義の思想だというので反対するという意見もあったそうだ。でも緊急時に給食のノウハウが生かされて救済者に配られたこともあるのだから無くす方向はどうかと思う。

それに子供たちは不味いと言いながらも給食の思い出は楽しい日々だったのだと思う。それは経験上感じる。クリームシチューが美味しかったとか特別な日に特別なものが出たり。ケーキはなかったと思ったけど。今はどんな給食を食べているのだろうか?地方によってそれぞれ違うみたいだ。福岡だったらフグが出るとか。

ユリ・ゲラーの超能力ブームで先割れスプーンが数多く曲げられていたとか笑ってしまった。そういうことをやったかもしれないな。


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