ひみつの国
その子は
誰からも相手にされず
いつも
ひとりで遊んでいた
そうしているうちに
その子は
ぼくたちには見えない世界が
見えるようになって
鳥や花や虫たちと
話ができるようになった
空気中にただよう
微生物の姿さえ
見えるようになり
それどころか
すべてのものに
感情があることを発見し
そうなると
いつどこにいても
毎日楽しくて
しかたがなくなり
その子はもう
ひとりでいても
さびしくなくなって
いつもうれしそうに
笑ってばかりいた
けれど誰もその子に
どうしてそんなに
いつも楽しいのか
そのわけを
聞こうとはしなかった
みんなその子のことを
ただのへんな子だと
思っていたから
そしてその子はその子で
「また変なこと言ってる」と
言われるのがこわくて
誰にも内緒にしていたから
そうやって
ずっと今まで
ぼくたちのすぐ近くにある
大切なひみつの国は
守られてきたのです
お金にしか
興味のない人たちには
とても
信じてもらえないけれど
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