(詩)明日夜明け前に
明日夜明け前に
ふと目を覚ました
おまえの枕もとに
しずかな風が吹いていたら
それはついさっきまで
そこにぼくがいて
じっと黙ってしばらく
いとしいおまえの寝顔をながめ
それから
目を覚まそうとする
おまえに気付いて
あわてて立ち去った
ぼくの残した
余韻のかけらだと思ってくれ
今日もぼくは軍に抵抗を続ける
少数民族の村にゆき
彼らの家に火を放ち
泣き叫ぶ子供たち
逃げ遅れた老人たちの姿を見た
或る家のすみに
それまで子供を抱いて
幸福そうに眠っていた
若い母親を見た
一瞬その姿が
おまえの顔と重なった
ぼくに気付いた、その女は
そのきれいなふたつの目が
ぼくに問いかけていた
どうしてこんなことをするの、
その目はそう叫んでいた
どうして、だって
なぜなら
おれだって
こうしなきゃ
おれが同じ目に
遭うからなんだ、と
答えるより先に
仲間がその家に火を放った
明日夜明け前に
ふと目を覚ました
おまえの枕もとに
しずかな風が吹いていたら
明日夜明け前に
ぼくは軍から
脱走することにしたよ
地雷の原野を越えて
ゆけるとこまでいってみるから
たぶん、これで
生きて
村に帰ることもないだろう
だから
明日、夜明け前に
ふと目を覚ました
おまえの枕もとに
しずかな風が
吹いていたら
それは
ぼくからの
さようなら、だと
思ってくれ