(詩)見えないシート
ぼくの窓から銀河が見える
きみの窓からも
あの銀河が見えるかな
それなら
こんなに遠く離れた
きみの窓とぼくの窓も
銀河から見れば
同じ夜行列車の
隣り合うふたつの窓に
見えるだろう
だから
遠い昔からぼくたちは
永い永い銀河の旅をしてきた
いつでもぼくは目の前に
見えないとうめいな
きみのシートを感じながら
いつもひとりぼっち
夜行列車の窓を流れ去る
銀河をながめていた
ためいき、つきながら
駅に停車した
列車のドアが開いては
また閉じて
乗ってくる人波の中に
きみをさがしてはまた
あきらめ
目には見えない
そのシートを何度も
最初から存在しないものだと
言いきかせながら
それでもまた
夜行列車が
夜の銀河駅に停車する時
まだ見たこともない
きみの姿を
いくせんの少女の中に
さがし求めた
ぼくの窓から銀河が見えた
きみの窓からきみも
あの銀河を今
見ていたらいいな
そしたら
どんなに遠く離れていても
銀河だけは知っている
今もきみが
ぼくの目の前にちゃんと
すわっていると
ただぼくの目には
それが見えないだけ
だからいつでも
ぼくの目の前の席は
空いているんだ
だって、いつきみが
やって来てもいいように
そしてその席は
きみ以外
誰にも見えないんだ
だってまちがって
他の子に座られたら困るだろ
だから
いつでもぼくは
目の前に
見えないとうめいな
きみを感じられる
銀河の旅が
きみを探し出す旅ならば
きみを探し出すことが
ぼくの旅ならば