情報化が先鋭化し、効率的な過ごし方をみんなが共有する時代になっても、自分の気持ちだけは誰とも共有できない。密集とコミュニケーション種類の多岐化・複雑化・深化は引力が強いがゆえに心…
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#小説
『令月のピアニスト』9/13 見せかけだったあんぽんたん
「ですから言っているじゃないですか」
横やりが、楽譜の物色という当初の目論見をみごとにはがしてしまった。代わりにぼくは粕賀と深夜の喫茶店にいる。ぼくはアイス・コーヒー、彼女は冷たい抹茶ラテで間を保っている。
窓の外をカップルやら同僚との飲み会のグループやらが不定期に通り過ぎていった。話をしていることがガラス越しにわかる。だが、何を話しているのかはガラスの厚みが邪魔をしてわからない。高架の上を電