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一言感想メモ (ドラマ・映画)

ドラマ編

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

 父の死、そしてダウン症の弟、不治の病の母を持つ岸本家を描いたドラマ。第1話の最後で「悲劇などとは言わせませんよ」という宣言のようなセリフがある通り、7割くらいはコミカルな作品。シリアスなシーンもあり、コミカルとシリアスのジェットコースターのよう。ただ、作り手側が安全装置をしっかり真摯に考え作ってくれたジェットコースターだと感じたので、頭がクラクラせず楽しめた。弟役はダウン症の俳優が演じていたり、車椅子ユーザーの役を実際の車椅子ユーザーが演じていたりと、行き届いていると感じた。他にも、第2話で主人公の七実と親友が英語のコミュニケーションをしているとき、「父性」にダブルクォーテーションのジェスチャーを入れる。/その後の英語教師のセリフ。/5話で、家族を「悲劇」と書かれた記事を目にした瞬間の反応など、シリアスに扱われがちだったテーマに関してコミカルを多分に含む作品として描くこと、それを安心して観られる工夫が各所に散りばめられていたような気がする。フィクションの中だけではなく、実際に私たちが住む世界でも稼働してくれる安全装置を作った上での誠実でコミカル作品なので、とても楽しめたのかな、という感想。登場人物も魅力的で面白かったです。


映画編

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

 原作も好きだった作品の映画版。ずっと観たかったけど、映画館で観ることがなかなかできず、配信で観ました。「ぬいぐるみ視点のシーンもある」ということは知っていたけど、「おお、こういう感じか……!」と思うような優しい映像だった。「加害性」ということがテーマのひとつである作品だと思う。そして、そういうことに敏感で気付けることができるほど、世の中の「被害」の数や大きさ、自分も「加害性」を持っているということに苦しんでしまう。「だから、話そうよ。聞くよ。僕も話すから。無理だったら、ぬいぐるみが聞いてくれるから」という作品だと思う。原作を読んだ時も、「……!」となった最後のセリフは、映画でも一番最後のセリフとなっている。僕自身は「やさしすぎる」という言葉にはちょっとモヤッとしてしまう人間なのだけど、この作品の例のセリフに関しては、モヤッとするというよりも、いい意味でびりびりした。このセリフに関して、まだ自分なりに納得できる解釈というものはできてないのだけど、それでもとても重要で必要不可欠で大好きなセリフです。映画になって、それを観ることができて、本当に良かった。