最近、読んだ本&観た映画 (2023/01)
最近読んだ本や観た映画の中から2作ずつ選んで、感想を書いておこうと思います。
くるまの娘 / 宇佐見りん
著者のデビュー作『かか』が良かったので、こちらの作品も。不安定な家族に対して同情や怒りがあり、何かに巻き込まれたと思えば少し引いた目線でみていたりと、揺れ動く感情を丁寧に描いているなと思いました。切実なものをできるだけ切実に描こうとしている事がもう既に切実なのかな、というか……。『かか』を読んだ時にも感じたけれど、「その感情をこういう風に表現するんだ……!」という言葉の使い方も作品を読む面白さのひとつになっているのかなと思います。ちなみに『推し、燃ゆ』も読んだのですが、どちらかと言えば、本作『くるまの娘』の方が個人的に好みでした。
フェルマーの最終定理 / サイモン・シン
数学の問題を解くことは苦手だけれど、数学に纏わるエピソードを知るのは昔から好きなので、ずっと気になっていた一冊。数学の証明問題の難問「フェルマーの最終定理」に纏わる話です。数学の歴史を追いながら、数学の基礎を作った人物や、証明にチャレンジしてきた人たちの人生や考え方に触れられるのが本書の魅力だと思います。ひとつの綻びも許されない厳格さと、目を疑いたくなるような驚きの世界や美しさを併せ持つのが数学なのかなと感じました。
あのこは貴族
「シスターフッド」という言葉を知ったのがキッカケだったかな……。あらすじは他のサイトなどに任せるとして……。華子と美紀はまったく違う環境で生きてきた/生きていることが描かれているのですが、美紀の「そっちの世界とうちの地元ってなんか似てるね」という台詞にハッとさせられました。「私たち、出会うべくして出会いましたね」と心の中で握手できるような結束の関係と言ったらいいのかな……。終盤に差し掛かったところで華子が「疲れた……けど、楽しかった」という言葉を口にするのですが、心の底からその言葉が出たのは、あのタイミングが初めてだったんじゃないかなと思うとちょっと涙が出ました (ちょっとホッとするような涙)……。原作も買っちゃった。
ドライブ・マイ・カー
観たのが数日前ということもあって感想を書くのが難しいですが、とてもいい映画でした。死者とは交信も意思の疎通もできない。ただ、苦しみながらでも生きていきましょうという強いメッセージを感じました。舞台の上で「こうだったかもしれない」を演じている家福の苦しみと、見守るみさきが印象的です。最後のみさきのその後を描いたシーンで、車と犬に思わずフフッとなりました。