見出し画像

January

 

1月。

例年より暖かい冬を迎えたおかげで
去年は幅が狭く、ガタついていた通学路が
すっきりと歩きやすい道になっている。

委員会の居残りで遅くなり、
普段乗っているバスに目の前で置いて行かれた。

「あと30分か…」

待ちぼうけを食らうことになってしまった。

友達と一緒に待っていれば
30分なんてあっという間だけど…

あいにく『今日は』お一人様だ。
(いつも1人な訳じゃないのよ?)

憂鬱な仕事を押し付けられた事もあり、
すぐに家に帰り疲れを癒したい私には
この30分が永遠に感じる。

ふと向かいのバス停を見ると、あの人が居た。

『あの人』は同じクラスの男子

優しくてカッコよくて
勉強もスポーツもなんでも出来る人気者。

たまにぬけてる所もあって
それがまたギャップで……

いつも面倒事を任される私は
あの人に何度も助けて貰っている。

じいっと見つめていると 目が合った
こちらに気付き、手を振ってくれている。

私も手を振りかえす。
何気ないやりとりに、胸の鼓動が高まる。
(委員長、仕事押し付けてくれてありがとう…)

浮ついた気持ちで眺めていると
あの人はポケットから携帯を取り出した

画面を見るなりフニャッとした笑顔で
スマホを耳に当てる。

ソワソワした仕草と、
いつも乗るバスと逆のバス停

反対側のバス停に居るのを見て
実はそんな気はしていたけど、
私の疑念はほぼ確信に変わった。

微笑みながら誰かと話すあの人は
きっとこれからデートなのだろう…

あの人がスマホを耳に当てた時
私のポケットが震えた

まさか…なんて淡い期待をしたけど、
電話の主はお母さん。

失恋の感傷に浸る暇も与えず
ずっと鳴り続ける私のスマホ

さっきまで一瞬に感じた30分は
また永遠に逆戻り。

消えない『母』の表示に呆れながら
私もスマホを耳に当てた

『もしもし。うん、今バスを待ってるよ。』

 


▼カレンダーあり


▼カレンダーなし

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?