- 運営しているクリエイター
記事一覧
いつか、きみと・1-1
わたしのおばあちゃんのお母さんが、わたしと同じくらいの歳のときに、世界が大きく変化するような出来事があったらしい。
それまでの時代は、個人でそれぞれが【家】や【車】を保有することが、ステイタスだったみたい。
今は、国が管理している建物に多くの人が住んでいて、最低限の生活は保障されているからとても安心して生活ができている。
~♪
部屋にアラームのメロディが響く。
部屋は、単身者は1LDK、家
いつか、きみと・1-8
「もう。
謝らない、っていったでしょ?」
「うん、ごめん…」
「あー、もう。また!」
彼がやさしく微笑みながら、左手でやさしくわたしの頭をなでてくれた。
心地よくて、ずっとなでていて欲しいと思う。
「あのとき、探していたおうちは、みつけられたの?」
ふと、思い出して問いかける。
「ううん、結局みつからなかったんだ」
「…そうなんだ」
彼は配達先のおうちを探していたらしい。
だけど、
いつか、きみと・1-7
いつもこのくり返し。
だから、わたしたちが会うのはいつもこの公園。
ちょっぴり困らせることはできるけれど、それ以上ふみこめないのは、【嫌われたくない】とか【こわい】からかもしれない。
なんの接点もなさそうなわたしたちが出会ったのも、ただの【偶然】
「あの日も、こんな風に天気がよくて少し寒い日だったよね」
「…そうだね」
彼が目を細めて笑う。
わたしの右手をぎゅっとにぎりしめると、わたしの
いつか、きみと・1-6
そのおかげで、温暖化が進むことはなかったけれど、太陽が少しずつ離れていくことで、少しずつ冬が長くなっているらしい。
ただ、地球が毎日冬になる頃には、わたしの子どもの子どもの子どもくらいの時代になるのだろうか…?
「次のお休みには、また会える?」
「会いたいけど、まだわからないかも」
「…そっか」
「連絡するよ」
「うん」
下に向けた視線が、そのまま手袋を通過して、つま先にたどり着く。
いつか、きみと・1-5
「よかったらあげるよ」
「ありがとう!」
わたしはそっと、その【写真】をポケットにしまった。
部屋には大きな窓があるし、緑も見えるしお日様の光も入るけれど、外も気持ちいいな。
「今日も帰ったら勉強するの?」
「うん、そのつもりだよ」
「がんばってるね」
「早くお仕事受けられるようになりたいから」
「そっか」
仕事はみんなそれぞれ自分の部屋で作業をしている人ばかりだけど、彼は今の時
いつか、きみと・1-4
仕事も、自分でスケジュールを組むから、家族や友だちと予定を合わせて休める。
【学校】っていうのも無くすときには、賛成派と反対派が大きく分かれたらしい。
反対派は【出会いが減る】とか【人との結びつき】を主張したようだけれど、人それぞれ自分のペースで学習ができることや、ただ同じ年に生まれたってだけで同じことを要求したり、結びつけられたりするほうが、デメリットが大きいって判断されたらしい。
…実際に
いつか、きみと・1-3
基本のカリキュラムをクリアするまでは、親と一緒の部屋で暮らさなければならないけれど、クリアしたあとはそのまま暮らしてもいいし、1人部屋を借りてもいい。
わたしはせっかくいいタイミングだから、1人部屋を借りた。
両親と弟は、1つ先の駅の3人部屋にうつったけれど、よく一緒にご飯を食べているから今までとそれほど変わった気はしない。
「お仕事大変?」
「うーん、相変わらずだよ」
彼は、今でも【個人
いつか、きみと・1-2
「もう、だいぶ昼だけど」
彼はそういってはにかんだような笑顔を向ける。
わたしは、この笑顔がだいすき。
「これ、」
さっき届いたばかりの【手袋】を彼に差し出す。
「手袋?くれるの?」
「うん。」
「ありがとう。うれしい。」
「うん。」
彼の笑顔をもっと見ていたいけれど、照れくさくて目をそらして隣に座る。
「暖かい。ありがと。」
彼はニコニコしながら、左手の手袋をはずして、わたし