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あおいゆの
2018年3月22日 12:39
だいたい、なんで新幹線なんか乗らなきゃいけないわけ?重たいキャリーバッグを引きずりながら、座席を探す。わたしの地元は田舎だから空港なんてない。飛行機に乗ったところで、帰れない。だいたい、帰りたいわけじゃないし。同窓会のハガキは、だいぶ前に実家に届いていたという。だけど、わたしの元にそのハガキが届いたのは3日前。偶然仕事が休みだったから。別に、参加したいわけじゃないけど。
2018年3月26日 14:00
図書室で遭遇した彼は、不意につぶやくような声を発した。「それ…。」初めて聞いた彼の声、いや、初めてわたしに向けられた彼の声は穏やかで、なんとなく緊張した。でも、緊張している自分が恥ずかしくて、なんともないようなフリをする。「なあに?」ぶっきらぼうに聞こえなかっただろうか。声がうまくでないような気持ちになる。「ぼくが今読んでいる本の続編なんだ。」本の背表紙に指を伸ばしなが
2018年3月27日 10:42
彼女に本を貸した。数日後には読み終えたと言われた。続きが気になると言われたけれど、もう夏休みになってしまう。きっと彼女は、ぼくと話しをしていることも、他の人には知られたくないのだと思う。だから、提案をしたんだ。橋を渡った川の向こうの神社で待ち合わせをするのはどうか、って。3時に待ち合わせをした。川の向こうに神社があることは、なんとなく知っていたけれど、どんなところなのかわからな
2018年3月29日 20:20
やっときた車内販売で、ホットコーヒーを買った。通路側の席に座る、隣の人の前に何度も腕を伸ばすのは申し訳なくて謝ると、目が合った。心臓が止まりそうだった。…彼だ。彼はわたしに気づいているのだろうか。わたしを恨んでいるのだろうか。ホットコーヒーのカップは熱いはずなのに、わたしの指先は熱さを感じないほどに冷えていた。わたしは、彼を傷つけた。夏休みに彼と神社で会った。わたしが
2018年4月1日 15:47
今なら自信を持って彼女にいうだろう。「なんてバカなんだ」って。あの夏休みがきっかけで、ぼくは散々からかわれたけれど、彼女の方がずっとずっと嫌な思いをしただろう。ぼくは噂には慣れていたし、そのままにしておいたってそれほど困ることはなかったんだ。なのに。きっと彼女はぼくをかばってくれたのだろう。彼女は「自分がぼくを誘った」といったという。この地域が窮屈で、噂がどれほどの脅威か知りすぎ