小説 平穏の陰 第三部(3)
家に帰ると、ドアには鍵がかかっていた。
父さんが出掛けている――これは非常に珍しい事だった。
自分の鍵で家に入り、ダイニングテーブルに書置きがあるのを見つける。「急な仕事が入り出掛ける。帰宅は深夜か明朝になると思うから夕食は要らない」という内容だった。
何があったのだろう、と心配したが、すぐさまこれは絶好の機会かもしれないという思考に切り替わった。父さんからどう話を引き出すか全然決まっていなかったが、地下の研究室を覗くことができれば早いかもしれないと思ったのだ。
この家に住ん