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マティスのきらめく光と色彩の魔法。原田マハ 『ジヴェルニーの食卓』

原田マハさんと言えば、絵画にまつわる小説。

マハさんの本を読むと、どこか遠い人だと思っていた画家たちとの距離がぐっと縮まる感覚があります。


今回の『ジヴェルニーの食卓』は4つの短編小説からなる作品で、モネ、マティス、ドガ、セザンヌたちが描かれている。

その中の最初の物語、『うつくしい墓』をマティスの作品とともに紹介します。

原田マハ『ジヴェルニーの食卓』-うつくしい墓

本作は印象派の画家、アンリ・マティスのお話。彼が晩年を過ごした、ニースのアトリエに、若くして仕えることになった家政婦のマリアの視点を通して、マティスが描かれている。

1.マティスとの出会い

マグノリアの花束を届けに、マリアがマティスを訪ねるところから物語は始まる。

アンリ・マティス《マグノリアのある静物》


マティスの部屋を訪れたマリアの目に最初に飛び込んできた光景とは、

そう、光―でした。部屋いっぱいに満ちあふれる光。

『ジヴェルニーの食卓』p23 うつくしい墓より


この光の正体は、床一面に散らばる色とりどりの色紙

マティスは晩年に大病を患って以降、絵の具を塗った紙から形を切り抜いて作るという、切り紙絵に没頭していた。

アンリ・マティス《花と果実》


実際、マティスのこんな制作風景も残っている。

床のあちこちに色紙が散らばっているけど、ゴミが散らかっているようには見えない。
もはや眩しくて美しい。

制作中のマティス 1952年頃 © photo Archives Matisse / D. R. Photo: Lydia Delectorskaya


2.マティスが描くもの

マティスのそばで働きながら、どんどんマティスが描く絵にのめり込んでいく。描かれる作品について、マリアはこのように感じていた。

悲しみは描かない。苦しみも、恐れも。重苦しい人間関係も、きな臭い戦争も、ただれた社会も。そんなものは何一つだって。ただ、生きる喜びだけを描きたい。

『ジヴェルニーの食卓』p39 うつくしい墓より
アンリ・マティス《生きる喜び》


3.ロザリオ礼拝堂

マティスが芸術人生の集大成として、建築と室内装飾のデザインを行った礼拝堂。

画家が作る礼拝堂とはどんなものだろう?

だってあなた、礼拝堂の聖画っていったら、辛気臭くて逃げだしたくなるようなものばかりでしょ?
見る者すべてが天国の光に包まれるような、そんな現代的な聖画こそ、南仏の風土にふさわしいじゃないの。

『ジヴェルニーの食卓』p54 うつくしい墓より
マティス自由なフォルム展より © Succession H. Matisse

生命の木をモチーフとしたステンドグラスには明るい光が柔らかく差し込む。

そして、白い陶板に黒のインクで描かれた全く新しい様相の宗教画からは、厳かさよりも自由を感じる。

いつか実際に訪れてみたい場所です。


小説では、他にもマティスと友人・ピカソの交流についても描かれており、こんなやり取りがあったのかもしれない、と空想をふくらませて楽しむことができた。

2023年マティス展より

昨年、マティスの大きな回顧展が東京で開催された。私はそこでマティスが描く光と色と線の世界のとりこになってしまいました。

いくつかお気に入りの作品を載せておきます。

ポスターにもなった《金魚鉢のある室内》がとっても好きです。

アンリ・マティス《座るバラ色の裸婦》
アンリ・マティス《赤の大きな室内》
アンリ・マティス《夢》


『ジヴェルニーの食卓』に出てくる、モネ、ドガ、セザンヌたちについても、原田マハさんの文章と共に今後紹介できたらと思います。

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