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企画が通らない!(お金の話と三顧の礼)
オリジナルゲームを作りたいという方はたくさんいます。
せっかくゲーム業界に入るのだから、いつかマリオやドラクエのようなゲームを自らの手で作り上げたい。
でも、いざ企画を出しても全然通らない、なんてことがあるあるで起こります。
なぜ企画が通らないのか。
一言でいうならば、売れそうにないからです。
会社で作る以上、投資した開発費を回収し、それ以上の利益を見込めなければ進められません。
一部プロデューサーの領域にもなるのですが、オリジナルゲームを作りたいと考えている企画者は、会社を説得するために儲かるかどうかを説明する義務があります。
今回はざっくりどれくらいお金かかるのかという話を書いてみます。
ゴールは
売上 > かかる費用
となることです。
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まず、売上をざっくりと考えてみます。
家庭用ゲームの値段はファミコンの時からあまり変わっていません。
5,000円とした場合、1万本売れれば5千万円です。
10万本なら5億円、100万本なら50億円です。
オンラインゲームや携帯ゲームは基本無料ですが、一部の課金者が支えてくれています。
仮に月の利用者が10万人で、
課金率が10%で、
一人あたり5,000円使ってくれれば、
↑を全部掛け算して月の売上は5千万円です。
上記はいくらでも数値遊びができてしまうので、相対の指標を作ります。
家庭用ゲームを例に、2018年のソフトの総販売数はどれくらいか。
検索していただくとすぐ出てくるのですが、10万本以上売れているゲームなんて50本もありません。
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次にかかる費用をざっくりと考えてみます。
ゲーム作りはほぼ人件費と広告宣伝費です。
細かい部分は端折りますが、電子データなので原材料などはほぼ発生しません。
絵素材やBGMなどのアセットも結局は人が作るので工数から算出されます。
人数×人月単価×期間(月)で開発費の総額目安を作れます。
人月単価は100万と置いてみてください。
(※そんなもらってねえよと現場の方は思うでしょうが、だいたい外注相場は80~120万/月くらいです)
つまり、平均10人で1年開発した場合、かかる人件費は1.2億円です。
2年かかってしまったら2倍の2.4億円です。
人数を平均20人にしてしまったらさらに2倍の4.8億円です。
ちなみに開発時平均人数20人はけっこう少ない規模ですし、開発期間2年というのも決して長い期間ではありません。
広告宣伝費も、ある程度認知されるためにはリリース時に最低でも5,000万はほしいところです。
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もうこの時点で、5,000円のゲームを10万本(2018年の国内販売本数ベスト50に入る状態)売っても採算とれないことになります。
例えば、自分が社長だったとして、実績のない社員が
「10万本(売って5億の売上を)目指すので、2年間平均20人貸してくれ(=人件費4.8+広告宣伝費0.5=5.3億使わせてくれ)」
と言ってきたら承認しないと思います。
かといって、
「100万本目指します!」
と言われても、2018年に100万本売ったのスマブラとモンハンとポケモンとスプラだけですけど、となります。
また、
「1万本(5000万の売上)だけど5人で半年(3000万)で作ります!」
と言われても、それってそもそもやる意味ある? となります。
その5人の半年を他に投資した方がより大きな利益を生めるのではないか、と考えられてしまう訳です。
困りました。
とはいえ、上記はどこまでいっても数値遊びです。
いくら使っていくら儲かるのかを全く考えていない企画は論外ですが、完璧な投資回収計画書を出せば企画が通るというわけでもありません。
結局、お客様が想定通りに動いてくれるかどうかはわからないよね
という現実があるからです。
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では企画を通すにはどうすればいいか、という観点に立ち返ってみます。
結論からいうと、三顧の礼作戦です。
バンダイナムコホールディングスの会長を務めた、石川祝男さんのワニワニパニックのエピソードが有名です。
(※詳細は『大ヒット連発のバンダイナムコが大切にしているたった1つの考え方』という本に書かれております)
この本は業界内ですごく流行ったので、ある日から突然企画書の提出が増えたそうです。
でもやはりみんな一回の提案で心が折れてしまいがちです。
そもそも突然提出しても読んでもらえない、なんてこともざらです。
とても辛いのが、三顧の礼というのは必ずしも三回で確実に叶う訳ではないのです。
しかも本来は目上の人が格下の者に行うからこそ意味がある行為です。
重要なことは提出回数や提出本数ではありません。
当人の熱意、意思です。
なぜ企画が通らないのか、から、さらに原点に立ち返ってみます。
なぜ自分はその企画を実現したいのか。
極端な物言いをしますが
それは自分にとって本当に大事なものであり、
どうしても実現したいことである。
そのためには自分はどんな労力だって惜しまない。
というのが作り手のあるべき状態だと思います。
多くの場合、最終的な意思決定者は経営者になります。
経営者は百戦錬磨のプロですし、お金の使い方には非常にシビアです。
生兵法で挑んでもだいたい返り討ちにあいます。
ただ、同時に経営者は新しい投資先を探しています。
社員から新しい金の卵が生まれてくることを常に望んでいます。
この経営者の財布が一瞬だけ緩むときがあります。
それが熱意です。
こいつになら任せてもいいか。
ひょっとしたらひょっとするかも。
そう思わせることがゴールなんです。
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最後に、これは通した後の話なのですが、
企画の根幹を第三者に委ねてしまうのはNGです。
せっかく企画を通したのに、その後、色々な意見が入ってしっちゃかめっちゃかになってしまうなんて話がよくあります。
これは自分の軸がブレてしまっているからです。
周囲の意見を聞くことはとても大切ですが、企画者としてプロジェクトを立ち上げたからには、意思決定と取捨選択と結果に伴う責任は放棄してはいけません。
繰り返しになりますが
それは自分にとって本当に大事なものであり、
どうしても実現したいことである。
そのためには自分はどんな労力だって惜しまない。
というのが作り手のあるべき状態だと思います。
言うは易く行うは難しですね。
私も頑張ります!
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!
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